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Act.xxx 所有権の主張

感想、評価、ブクマありがとうございます。



とても励みになっております。

 



 ルシル=フォン=ローズシェット。

 ローズシェット公爵家の長女で、兄が一人。

 現在は王都に存在する叔母の家に兄と住んでいて、叔母の次回帰宅予定は三ヶ月後。

 父は王都の北方、ローズシェット領にて領主を務めていて、母は元侯爵家の娘。

 本人は膨大な魔力量を誇り、幼少時より人に害を成す魔法を王家より禁じられている為、一番適性がある闇の攻撃魔法は教わっていない。防御魔法のみ。

 兄妹仲は元々悪かったが、最近改善された。

 ロンガート辺境伯、リングライト侯爵家の娘とは友好関係を築いており、以外の交友関係は無し…と。



「情報だけ集めても、わかんねえもんだな…。」



 この所公爵家に張り付いて命からがら集めた情報なんだがなあ…危うく死にかけたし。王城より警備が凄い公爵家ってなんだよそりゃ。

 まあ王城の場合はあの我儘王子サマに忠言をした奴を片っ端からクビにしたってんだから、ザル警備なのもわかってたがな…まさか近衛兵が寝室の中まで見回りに来るとか思わねえだろ。どんだけ過保護なんだ、問題の王妃とやらは。


 それにしても…。



「集めれば集めるほどあの頭空っぽ王子は気に食わねえな。」



 ルーシーとの不仲は有名で、それでも婚約破棄をしないって事は、世間で流れてる公爵家が王家に必死に縋ってるって噂もおかしい。

 ローズシェット公爵家は規模も大きく、王家の次に権力があるとされてるが、調べてみりゃ白過ぎるほどだ。領民からの信頼も厚く、まさに理想の貴族だろう。

 そして奴らは最低限の私兵しか持ってない。て事は、王家に反旗を翻す意思無しと宣言してる訳だ。

 そんな家の人間が、わざわざ王家の縁をそこまで求める理由はなんだ?


 そんなもんより、王家の方がルーシーを欲しがってるって説のがしっくり来る。ルーシーはこの国では一番の魔力量。そんな娘を王家が易々と他国へ嫁がせるか?いや、ないだろうな。


 て事はだ。


 あのバカ王子、自分達が望んだ婚約者をあんな扱いしてるって事か。ルーシーの性格上、家に迷惑を掛けまいと耐え忍ぶ方を取るだろう事は容易に想像出来るし、恐らく、その線で間違いない。



「まさに道化師…ルーシーの我慢が限度を越えればこの国は終わりだな。」



 わざわざ殺すまでもない、ルーシーは俺のもんだ。あのバカ王子にはやらない。

 そうなれば、この国は勝手に自滅する。



「殺す価値無し、と…ほら、皇帝サマに届けて来い。」



 …あの鳥、密書のやり取りが出来るのはいいが、この国にはいない種なんだよな…変に目立たねえといいが。



「この辺か?!」

「ああ、この辺りに隠れろって…。」

「しっかし殿下も中々えげつない事考えるよなー。」



 ん?なんか下が騒がしいが…殿下とか言ったか?

 数は……十一か。全員顔がわからねえように布を巻いてやがるが…木剣も持ってんのか。まあ、所詮は素人だな。どいつもこいつも隙だらけだ。



「ルシル様を殴るなんて、殿下の許可がねえと出来る事じゃねえし、有難くやらせてもらうさ。」

「アイツ、自分が公爵家の娘だからって取り澄ましやがって。この俺が挨拶してやったのに、無視しやがった。」

「俺も無視されたよ。そのクセ田舎者には愛称で呼ばせてやがる。俺ら高位貴族をバカにしてやがんだ。」



 ルーシー…?ほう、殴るとは物騒なもんだな。

 さすがのルーシーもこの人数の男相手に殴られればひとたまりもないだろうなあ…愉しそうな現場に居合わせたもんだ。俺はこの木の上から高みの見物でもさせてもらうか。



「殿下は参加しないんだよな?」

「直接手を下さないのがあのバカ王子だろ、当たり前だ。なのに木剣で殴るだけだなんてケチくせえこと言いやがって。」

「俺らにもちょっとはおいしい思いさせてくれよなー。」

「………ヤっちゃう?」

「えっ?!」



 あ?…あのクソガキ何言ってやがんだ?



「どうせ殿下は帰るし、辱められたなんて殿下に言えば一発で婚約破棄だ。公爵家が必死に縋って婚約者に留めてるのに、そんな事誰にも言えないだろ?」

「そ、それは……確かに…。」

「とりあえず反抗出来ない位まで殴って、その後好きなだけ俺らで楽しめばよくね?」

「…うん、乗った。」

「いいな、俺、あのルシル嬢を屈服させてみたかったんだよなー!」

「それにこんだけの証人がいるんだ、今日限りで終わらなくていいと思うぜ?」

「お、おお…これから毎日だってあの身体を好きに出来るのか…!」

「おお、全然やる気出なかったけど、俄然出て来たわ!」



 ………このクズ共が。

 巫山戯てんじゃねえぞ。


 あいつに、ルーシーに一生消えねえ傷を残すのは俺だ、俺だけだ。

 殴る程度なら面白いだけで済んだが、そうじゃないなら話は別だ。こいつらさっさと殺して…ん?あれは…ルーシー?と、バカ王子か…チッ、もう来やがった。



「隠れろ!」



 …ルーシー以外の全員を殺してルーシーを連れて帰るか?いや、そうなったら後が面倒か…特にあの王子に至っては殺すなら自然死に見えるようにって注文があったからな…。

 周りで十一人他殺体で見つかれば、自然死もクソもないよな。


 仕方ない、コクヨウとして入るか…。

 クソ面倒だが、仕事はきっちりやらないとあのクソ皇帝うるせえからな。


 さて、バレないように移動するか。



「あれ?こんな所で何をやっているんですか?」



 移動してる間にルーシーが殴られたか。まあそれはいい。殴られる程度は問題じゃないからな。

 ルーシーは痛みに耐えた顔でもして…………なんだ、あの顔は。やたらと熱い視線を向けられてる気がするが…それにやたらと鼻息が荒い気もするが…まあ、それも一旦置いておくか。


 嗚呼、それにしてもこいつら本当に箱入りだな。ちょっと敵意を向けただけですぐ怖気付いてやがる。

 バカ王子に関しては威勢だけは認めてやるが、虚勢にしかなってねえな。


 それにしても、やっぱり俺が見込んだ通り。ルーシーには血が似合う。ルーシーを飾るのに何よりも一番いいものだ。ルーシーを飾るのに、ドレスも宝石も花もなにも必要ない、ただこの赤黒い液体があればそれで…。



「それは俺のモノだ!!」



 ………あ?

 このゴミ、今なんつった?


 誰が、お前のモノだと?


 ルーシーは俺のモノだ。俺のモノを、勝手に自分のモノにしてんじゃねえぞ。

 もうあのクソ皇帝の注文とかどうでもいいか、こいつさっさと殺してルーシーを連れて帰ればいいだけだ。


 その後は、飽きるまでルーシーで遊べばいいだけ。



 そう、思っていたのに。



 なんでルーシーはこのゴミを庇いだてする?わからねえな。あいつを庇う義理も何も、ルーシーにはないはず。

 なのに、あのゴミを庇うのか。お前もやっぱり、王家の威光とやらには逆らえない、ただの貴族令嬢ってことか?

 そんなつまらないもんなら、もう興味はない、あのリナリーとか言う聖属性使いと共にとっとと殺してしまうか…。



「ありがとうございます。」



 ……。

 御礼?何故だ?

 今俺に礼をするって事は、間違ってんのはあのゴミって言ってる事になんだぞ?

 お前はそれで……いいんだろうな、お前は。


 仕方ない、殺すのは、一旦保留にしてやる。その方が、楽しめそうだしな。



 あのゴミの間抜け面も拝めたし、結局ルーシーは生かしておいた方が今は愉しめるって事か。



「お前は俺のモノだ。」



 なんの飾り気もない、俺にとってはそれが事実。まあ今まで俺がそう言った女共は絶望の顔をしていたが…なんでいつも、ルーシーはやたらと照れる?

 こんな顔はコクヨウとしての時しか向けられた事がないってのに。



「じゃあ、私はもう行きますので!」



 恨めしそうに言っても、そんだけ顔を赤くしてりゃ意味ねえだろ。


 本当に、懐かしい。




 …?…なんだ、懐かしいって。どういう感情だ、これ?


 ………よくわかんねえな、とりあえず今日は無駄に疲れた。とっとと拠点に帰るか。



いつも読んでくださってありがとうございます。



もし良ければ感想や評価などいただけると嬉しいです。

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