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Act.24 呼び出しといえば裏庭ですよね

感想、評価、ブクマありがとうございます。

とても励みになっております。

 

 

 

 座ったのは受け取りテーブルにほど近い、普段から王族やそれに近しいものしか座ってはいけないという暗黙のルールがある席。ここは確か原作ではリナリーが何も知らずに座り、ルシルに咎められるシーンがある場所だ。

 まあ今回は私の連れであり、兄様も同席を許しているのだから、文句を言う奴などいないだろうが。

 

 

「お待たせしました、ルシル嬢。どうぞ。」

「ありがとう、フィリップ。」

「リナリーも、どうぞ。」

「すみません…ありがとうございます。」

 

 

 給仕係はフィリップ。勿論リナリーは自分もやると言ってはいたが、フィリップのか弱きご令嬢にそんな事はさせられないという殺し文句にやられたらしい。

 私?私はやる訳が無い。これでも公爵令嬢が、格下の者がいるのに動くというのは色々と問題がある。それに兄様の分もフィリップが持ってきているのだから問題ないだろう。

 全員の給仕を終えて、フィリップも席に着く。隣は勿論リナリーで、その向かいに私、フィリップの向かいで私の隣が兄様。

 

 

「一つ聞いてもいいだろうか、セオドア。」

「なんだ?」

「いつの間にルシル嬢と、その…話すようになったんだ?」

「……別に、いつでもいいだろう。」

「一昨日、久しぶりに兄様の執務室へ行ったのよ、フィリップ。」

「ルーシー。」

「いいではありませんか。他ならぬフィリップですわ、兄様。」

「……久しく、会話というものをしていなかったからな。」

 

 

 兄様、それは私が言った事ですわ。

 

 と、一瞬喉から出かかって、既の所で止めた。フィリップはただひたすらに感嘆詞を漏らすばかりで、まともな会話も成立しなさそうだ。

 ちらりとリナリーを見遣れば、嬉しそうに微笑みながらまだ話し続けている兄様とフィリップを見ていた。いや、違うな、フィリップを見ている、か。

 

 

「お二人共、本当に仲がよろしいんですね。」

「リナリー嬢、と言ったか。むしろ俺はフィリップに驚いた。」

「そうですわよね、兄様。フィリップがこんなに普通に女性と話せるなんて。私も驚きましたわ。」

「こ、これでも俺は普段から普通に話してるつもりなんだ!」

「聞いたか、ルーシー。」

「ええ、聞きましたわ、兄様。その言葉、そっくりそのまま今までのご令嬢方に聞かせてあげたいくらい。」

「そんなに今までの方と違うんですか?」

「今までフィリップに話しかけた女性は…どう言ってたかな。」

「皆一様に、錆びた鐘のよう、と仰っておりましたわよ、フィリップ。」

 

 

 そういうと、リナリーとフィリップは同時に思案顔をしながら首を傾げる。え、首傾げるリナリー可愛い、なにそれ。フィリップはちょっと気持ち悪いからやめて。

 

 

「錆びた鐘、とは…どういう…。」

「叩いても響かない、て事ですかね。」

「あら、リナリーは意味がおわかりになるのね?」

「なんとなく…でも今までの方はきっと叩く場所を間違えていたのだと思うの。フィル様にも、話題の向き不向きがありますもんね?」

 

 

 天使みたいなヒロインスマイルを向けられたフィリップはわたわたとしながら顔を真っ赤にして必死に頭を上下に振る。

 なんだなんだ?早速いい感じなんですかリナリーさん??私聞いてないんですけど???

 

 一瞬いじってやろうかとも思ったが、黒薔薇姫はそんな事ではしゃいではいけないタイプなので、猫を被り直して我慢する。

 まあリナリーが楽しそうだし、置いておこう。そのまま二人の世界に入りそうな目の前の人間を一旦放置して、私は兄様にそっと耳打ちした。

 

 

「兄様、ディリアス殿下はよろしかったんですか?」

「ああ…いい。元々はフィリップが共に食事をしないかと言われたから付き添っただけだ。」

「ああ、そうでしたの…だから別になったのですね。」

 

 

 ディリアスは兄様に対して多少なり忌避感を持っている。それは恐らく何を言っても正論しか返って来ず、尚且つそこにやたらと高度な嫌味が三倍くらい乗っかって来る為、反論すら許されないからだろう。

 他の誰かなら癇癪でも起こせばすぐに従うが、相手が兄様ではそんなものでどうにか出来るわけがない。

 

 今日もフィリップだけを誘うつもりが、それを聞きつけた兄様が付いてきたから結局昼食も別々になったんだろう。邪魔をした訳ではなさそうなので一安心。

 

 

「……さっき、何か殿下に言われていたようだが…。」

「え?ああ、後で何かお話があるようで、呼ばれましたの。」

「な?!何処に呼ばれたんだ!」

「えっ、いや、場所までは…多分、Bクラスにいけばいいと思いますけれど…。」

「……絶対に二人きりになるんじゃないぞ。」

「そうですわね、努力しますわ。」

 

 

 多分無理だろうけど、という言葉を飲み込み、お手本のような淑女の笑みを返した。

 

 

 

 

 問題の放課後。

 普段であればディリアスの言葉なんてシカトしてしまえばいいんだけど、今日に限っては私からも用事があってしまうのだから仕方ない。憂鬱な気持ちを抱えたまま、私はBクラスの教室までやってきた。

 しかし、呼び付けておいて場所の指定もなにもないとは。さすが頭空っぽ王子と評判なだけはあるわ…世界の全ては自分が中心とか思ってんでしょうね、あのクズは…さて、その当事者は…と。

 

 

「ディリアス殿下。お迎えに来ましたわ。」

「…ついて来い。」

 

 

 そう言ってさっさと教室から出ていくディリアスに、聞こえるようにわざと盛大な溜息を一つ吐き出し、後を追った。

 

 目的地は裏庭だった。ある程度人目につかないような所まで行った辺りで、ディリアスがこちらを振り向く。急に振り返られて驚きつつも、一定の距離をあけて私も足を止めた。

 

 

「セオドアと仲直りをしたそうじゃないか?」

「あら…我が兄妹事情を思って心を痛めて下さっていたので?光栄ですわ、殿下にとっては瑣末事ですのに。」

 

 

 遠回しに、わざわざ家庭事情にまで首を突っ込んで本当に暇人だなと言ってみる。

 フィリップみたいに家臣になるのが決まってるならまだしも、父様も母様も兄様も城に仕えてなんてないし、ぶっちゃけるとうちの家系は例えアリエスハイムが滅ぼうと滅ばないんだよね。父様は領地経営の傍ら商会長をしているし、その商会での最大手は叔母様のアパレルブランド。

 叔父様はうちの領地で農耕をやっていて、それもうちの商会で取引をしているし、更にうちの商会は他国にも支部があるから、他国との伝手も十分。

 

 …まあ、そのあまりの勢力に王家が難癖付けて私を婚約者として王家にって父様に迫ったんだけどね。

 こいつはそんな事知らないだろうし、知ろうともしないんだろうけどな!!

 

 

「……貴様は、勘違いをしているようだな。」

「勘違い、とは?どういう事で御座いましょう?殿下。」

「貴様がデカい顔が出来るのも、王太子殿下の婚約者という肩書きがあるからだ!それが無ければ貴様なぞただの公爵家の娘に過ぎん!!」

「…はあ。」

 

 

 え、何言ってんのこいつ?

 

 思わず間の抜けたような返事しちゃったじゃん。

 王太子の婚約者って肩書きがないとデカい顔出来ない?お前公爵家舐めてんだろ。

 

 お前の婚約者じゃなくてもローズシェット公爵家令嬢ってだけでデカい顔出来るわ、馬鹿か!!いやしないけどな!?

 

 

「この辺りでお前にしっかりと身分をわからせてやろうと思ってな。」

「え…はあ。…え?なんですの?」

「どうせ傷モノ女なんだ、傷が増えた所で何も変わらんだろう?」

「!!」

 

 

 裏庭の生垣、そこからわらわらと…十人ほどの男達が現れた。全員ご丁寧に木剣を持ち、目だけを出すように顔を布で覆っている。

 

 

「……随分と、物騒なお友達がいらっしゃるのですね?」

「痛い目を見れば少しはお前も分相応の振る舞い方というものがわかるだろ?」

いつも読んでくださってありがとうございます。


もし良ければ感想や評価などいただけると嬉しいです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ルーシーとお兄様が普通に喋れるようになって良かったなって思います。リナリーとフィリップも仲良さそうで良かったです。 [気になる点] ディリアスサイテーですね。さっさと婚約破棄されて痛い目に…
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