Act.? ヒロインも頑張ります その2
フィル様養分もしっかりと補給出来たし、気合いはバッチリ。
さて…ハリーの所へ行きますか!!
「ハリーのクラスはBだったよね…。」
「僕の事探してくれてるの?」
「!!ハリー!急に現れないでよ…心臓に悪いじゃない!」
「あはは、ごめんごめん、リナリーの姿が見えたから、つい嬉しくなっちゃって。」
…うーん、なんだろう、ぶんぶん振られてる尻尾の幻覚が見えるようだ…。
それにしても、本当にハリーってリナリーの事大好きだよね。
恋愛シュミレーションゲームの筈なのに、ハリールートだけはただただカップルの甘い日常を見せつけられているだけのストーリーだったもんな。あれは好きな人は好きだろうけど、苦手な人はとことん苦手なのだと思う。ハリーのキャラも含めてね。
とりあえず、どうしよう?特に何も考えずにハリーの所へ来てしまったけど。
「それにしても、リナリーが僕の所に来るなんて珍しいね?どうしたの?」
「あー、うん、えっと…久しぶりにハリーともお話したくて。」
あー、苦しい!我ながらこの言い訳は苦しい!!
いやまあハリーは多分普通に受け流してくれるんだけど、自分的に、なんだろう、おやつとかお小遣いが目当てでおばあちゃんの家に来た孫の対応のような感じがする!
「わあ!そうなんだ!最近全然お話出来てなかったからね!いいよ、食堂でも行こうか?女の子に立ち話なんてさせる訳にもいかないからね!」
「あ、う、うん、そうだね、ありがとう。食堂行こっか。」
このキラキラした視線に罪悪感を感じるなって言う方が無理です…。
それにしても、本当にハリーは天然フェミニストだよなー。女系家族に育ったあるあるなんだろうけど、一応公式設定ではマダムキラーなんだよね。本人無自覚だけど。
確かファンブックにリナリーに選ばれなかったハリーのその後が載ってたっけ。社交界でマダムキラーの名を欲しいままにしていたとか。
まあ本人はずっと無自覚なんだけどね。
「リナリー、何か食べる?マドレーヌとクッキー、それにフィナンシェがあるよ。」
「ありがとう、それじゃあマドレーヌにしようかな。」
「わかった、紅茶はミルクに砂糖は二つでいい?」
「うん、さすがね、本当に久しぶりなのに。」
「当たり前だよ。昔から本当に甘いものが好きだよね、リナリーは。」
うーん、手早くお茶とお菓子の用意をしてくれて、更に好みも覚えてくれている。そして用意をさせているのにこの嬉しそうな顔。
…さすがのスパダリ感にリナリーさんもコロッといっちゃいそうだよ。いかないけど。
「はい、どうぞ。」
「ありがとう、いただきます。」
「ふふ、珍しいね、リナリーが僕と話したいなんて。六年振りくらいかな?」
「そう、ね。それくらいになるかな?」
「ますます可愛くなったね、リナリーは。」
「もう、ハリーったら。」
む、むず痒い…!
ゲームしてた時も思ってたけど、ハリーって本当に甘々わんこって感じで、申し訳ないけど攻略しがいがないというか。リナリーの事が大好き過ぎて扱いに困るというか。
今世で生まれてから今までもそうだし、作中でもそうだったけど、ハリーだけはリナリーを好きになるのに理由がない。一緒に事件を乗り越えたとか、心の傷を癒したとか、理解したのがリナリーだけだったとか、そういう乙女ゲームによくある攻略対象がヒロインに恋に落ちる理由というものが、ハリーにはない。
強いて挙げるとするなら、「リナリーは僕のお姫様だから」とかいうぶっ飛んだ理由しかない。曰く、運命の人なんだとか。こっちは運命感じた事なんてないんだけど。最早一歩間違えたらストーカーじゃんって昔思ったのは内緒。
「リナリー、最近ローズシェット公爵令嬢と仲が良いんだって?」
「えっ?なんで知ってるの?」
「噂でね。かの黒薔薇姫が聖属性を使う辺境伯令嬢を傍に侍らせてるって聞いて…ねえ、彼女とは本当にお友達なの?」
そんな噂流れてるの…まだ入学して一週間も経ってないんだけど…貴族社会怖っ。
ハリーの心配は恐らくあれだ、私が何か害されてないかとか、そういうイジメのような事はされてないかって事だろうな。私とルーシーに限ってそんな事絶対ないんだけど、というかあったらルーシーの人生が終了するから出来ないんだけど、傍から見てる分には貴族社会のトップであるローズシェット公爵家のご令嬢と田舎者の貴族社会カーストワーストワンにでも入るんじゃないかっていう辺境伯令嬢が一緒にいるなんて信じられない光景なんだろう。
まあ多分四割くらいはルーシーとお近付きになれなかった妬みで適当な事吹いてる奴もいるとは思うけど。
「大丈夫、とっても仲良くさせてもらってるよ。」
「本当に?」
「何?ハリーは私の友達を疑うの?」
「そういう訳じゃないけど…アンも心配してたよ。本当なら凄く光栄な事だし、喜ばしいと思うけど、リナリーは無理してないかって。」
「アンが?そっか…アンにはまた手紙書かないとね。でも本当に大丈夫よ。心配されるような事は何も無いから。」
アン…アンナは、ゲームでも出て来る姿そのままだったな。留学してるからしばらくは会えないけど、情報通のアンって設定は生きてるみたいね。
まあ今世ではお助けキャラとかじゃなくて、本当に仲のいい幼馴染だし、心配しないでって手紙は書かなきゃ。ルーシーの事誤解されたままなのも悲しいし、ルーシーだって多分アンに会ってみたいだろうから、夏季休暇辺りに会わせてあげようかな?
「ところで、ハリー。ハリーの方こそ、学園生活は順調?」
「え?僕?」
「そうだよ。疎遠になってたけど、また学園で会えるし、話したいなって思ってはいたんだよ。」
「そうなんだ?嬉しいな、忘れられてなかったんだ。」
「忘れるわけないでしょ、幼馴染を。」
「ふふ、ありがとう。そうだね、僕の方は順調かな。特に変わった事も…あ。」
んっ?一瞬安心しかけたんだけど?
え、何?なんかあったの??
「そういえばディリアス殿下と同じグループになってね、最近親しくしていただいてるんだ。」
「あー…そう、なんだ。」
同じグループ…って事は今の所は原作と変わらないのかな。確かディリアスとハリーは魔力値が同じくらいだから同じ班になるんだよね。
これは全ルート共通だから問題は無い。ハリーも仲良くしてるって言ってるし、うん、大丈夫そうだ。
あとは明日ルーシーと相談してからかなー。よし、そうしよう。
「リナリーもディリアス殿下とお会いした事があるらしいね?」
「え?あ、えーと、この前たまたま中庭で…。」
「ふーん…もしかしてそれって黒薔薇姫がいた時?ディリアス殿下が…女生徒と仲睦まじくされてらっしゃる姿に黒薔薇姫が嫉妬したっていう…。」
「はあ?!!」
ちょっと待てハリー!今聞き捨てならない言葉が二つくらいあったんだけど?!!
「えっ、リナリー?ど、どうしたの?」
「ハリー!!どんな噂になってるのか知らないけど、二つ。二つ!訂正しとくわ。」
「あ、う、うん…。」
「まず一つ目。仲睦まじくなんてしてない!王都について聞こうとした時にあの王太子が暇そうにしてたから声掛けたらやたらと馴れ馴れしくされただけ!!」
「ちょ、リナリー、それはさすがに不敬になるから…ボリュームを…」
「そして二つ目!!」
「はい!」
「ルーシーは嫉妬なんか欠片もしてないから!あの時は私に用事があって来たの!あれはたまたまそこに存在しただけ!!」
「わ、わかった!わかったからリナリー、もっとボリューム下げて!」
はっ……や、やってしまった…ついカッとなって…。
ちらほらいる生徒がガン見してるわ…いやもういいけどね…。
それにしても、そんな噂が流れてるなんて由々しき事態。明日それもルーシーに言わないと。ルーシーがあんなクズに嫉妬なんかする訳ないのに。
それをとっとと全校生徒に理解してもらいたい。じゃなきゃ黒薔薇姫としての威厳がなくなるじゃない。
「…ごめん、ハリー。ちょっと興奮しちゃって。」
「ううん、僕の方こそごめんね、君の友達を貶めるような事を言ってしまったみたいだね。」
「ううん、大丈夫よ。…私、寮に帰るね。」
「あ、うん。今日は久しぶりに話せて嬉しかったよ。またこうして話せるかな?」
「……そうだね、また。」
「…優しいね、ありがとう。またね。」
さて、ハリーの話を踏まえてこれからの事をちゃんとルーシーと話さなきゃ。
まずは寮に帰って攻略ノート片手に考えないと。




