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Act.11 こいつは何言ってるんだ




「ところで、ルシル様はどうしてこちらに?それに、そちらの…。」

「これは失礼した。私はフィリップ=ライアス。この学園の第三学年Aクラスだ。騎士見習いをしている。」

「あ、初めまして、リナリー=ロンガートと申します。」



 さっと、胸に手を当て、騎士の礼を取ったフィリップを、リナリーは熱く見つめる。

 目が完全に恋する乙女のそれだ。


 一頻りフィリップを熱く見つめた後、リナリーはぱっとこちらを向いた。

 何しにここにフィリップ連れて来てんだというリナリーの視線を合わせないようにしながら、私は明後日の方向を見て口を開いた。



「ええと、リナリー様、ディリアス殿下とのお話はもうお済みかしら?」



 暗に「イベントはもう終わったのか」と問い掛けてみる。

 そう問い掛けながら、脳内フル回転でフィリップを連れて来た理由を考えた。



「えっ……ええ、そうですね、もう大丈夫です。」

「そうですか、それは良う御座いましたわ。ではフィリップ、彼女を鍛錬場へ。」

「え?」

「はい?」



 必死で考え出した用事…それは。



「リナリー様、鍛錬をしたいと仰っていましたの。けれどやり方がわからないと…私が見ても良いのですけれど、毎日はさすがに厳しいので、フィリップに見ていただこうと思いまして。」



 そう!リナリーの鍛錬の先生を頼む事だ!


 これなら初対面イベントの内容とも被ってるし、フィリップを連れて来ててもおかしくない。

 我ながら完璧な用事を仕立てあげたと、自画自賛をしたいほど。



「ルシル嬢?先程はディルに用事と」

「何のことかしら?ディリアス殿下に用事等、私は何もありませんわよ。」

「ええ?!」

「なんだと、ルーシー、貴様…!」

「ディリアス殿下、少しお待ちいただけますかしら。」

「なっ?!」

「え、えっと…ロンガート嬢?ルシル嬢の言葉は…。」

「ほっ、本当です!他の方と同じカリキュラムが出来ないので、せめて少しでも体力を付けたくて!」

「あら、フィリップは私が嘘をついたとでも言いたいのかしら?」

「いえ、そんな事は…しかし、私が女性に教えるなど…。」



 眉尻を少し下げて、目線をきょろきょろと忙しなく動かしている。完全に照れまくってるな、フィリップ。



「フィリップ。貴方は少し女性と話すのに慣れた方がいいわ。ほら、早く鍛錬場へ行きなさい。時間が勿体ないですわ。」

「ライアス様、参りましょう!」

「え、いや、しかしっ…あ、ちょ、ロンガート嬢!」



 半ば引き摺られるようにフィリップとリナリーは校舎の方へ消えていった。

 それを見送り、一息ついた時だった。



「貴様のような自己中心的な女が、何を考えてフィルにリナリーを連れて行かせた?!」



 忘れてたわー。

 そういやこいついたわー。

 ていうか、あれを見てフィリップがリナリーを連れてったように見えるのか。すげーなこいつの視力は。



「何と言われましても。先程申し上げた通り、リナリー様を思っての事ですわ。」

「嘘をつくな!大方誰かから俺がリナリーと中庭でいる事を聞いて邪魔をしに来たのだろう!そこまで国母の座に就きたいのか!浅ましい!!」

「…仰っている意味がわかりませんわ、ディリアス殿下。」

「私がリナリーと親しくなるのが許せないのだろう!もしかしたら傷モノ女など捨てられてしまうかもしれないのだからな!」

「…ディリアス殿下。貴方の交友関係には私は毛程の興味もありません。ですから、貴方が何処で誰と仲良くなろうと、私には何も関係御座いませんわ。」

「フン、汚らわしい女め。貴様との婚約などというおぞましい契約、いつでも破棄出来るのだぞ!」



 嘲るように、ディリアスは私の付けていた髪飾りを無理矢理剥ぎ取り、地面へ打ち捨てた。

 カシャン、と甲高い音と共に、硝子細工の蝶は粉々に砕け散った。


 痛い。

 こいつ髪飾り取る時に髪も一緒に何本か引きちぎりやがった。

 しかもそれこの間ユースポールの職人に頼んで仕上がったばかりの特注品。なかなかいい値段するんだぞ。


 ふつふつと怒りが湧き上がってきて、今すぐにでもぶん殴りたい衝動に駆られるが、大量の猫を総動員してそれを抑え込む。


 駄目だ、今そんな事をしては。

 今そんな事をしたら反逆罪と取られかねない。

 まだ、まだ駄目。

 こいつを殴るのは、ザック様が王太子へと戻ってからだ…!



「…気分を害されたなら謝りますわ。申し訳御座いません。」

「……チッ…。」



 憎々しげに舌打ちを残して、ディリアスは校舎へ戻っていった。

 仕方なしに、割れた髪飾りの髪留め部分と、ポイントであしらわれていたルビーを広い集める。


 ふ、と急に影が出来た。

 雲行きでも怪しくなったのだろうかと思い、目線を上に上げたら、そこには予想だにしなかった人物。

 その人の影で、私はすっぽりと覆われていたのだ。



「なかなか…酷い事する王太子殿下もいるもんだな?」

「っ…!!!」



キリのいいとこで終わらすと長くなるか短くなるかですみません…。

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