609.アベル君と次の戦闘。
609.アベル君と次の戦闘。
俺たちはお互い和解し、次に進むことにした。
あ、魔物の解体は、リーダーの不始末だったってことで俺がやった。
ロッティーとマヤを甘えさせているわけじゃなく、俺の自省からの行動だからね。
因みにドロップは無し。
さて、ダンジョンはさらに続いている。
ニックは疲労の回復を済ませたようで、キチンと先行し斥候の役目を全うしている。
マヤは、一旦タンクを離れ、後衛の二人と一緒だ。
後衛の守護をしてもらうためにね。
バックアタックはダンジョンでは滅多にないけれど、百パーないとは限らないし、前衛を突破することも考えられるからね。
とはいえ、慣れるまでの期間だけどね。
「ドロップは出ませんでしたね。」
マヤが残念そうに呟いた。
「滅多に出るもんじゃないんだって。毎回金貨一枚稼いでいたら、マヤも騎士なんて目指さないで、冒険者になりたくなっちゃうだろう?」
俺がそう言うと、ニックが笑って、
「それはそうですよね。今頃、世の冒険者たちは大金持ちばかりになっちゃいますよ。」
などと言った。
「それはそうか。ちょっと揺れ動いていました。」
マヤは正直に吐露した。
一回潜っただけで金貨一枚を貰ったんだから、それは揺れ動くのもわかる。
収益化だけ設定していたアカウントが、何でもないポストでバズリ、何十万も振り込まれたようなものだ。
実際それで本業を止めて、収益だけで食おうと思った奴が周りにもいた。
でも、それはSNSの利用規約が変わってしまえば、終わりなのよね。
勿論大当たりを引いて、FIREの道を進む者も居るが、本来は地道に働くのが吉、世の中はそう動いているのだ。
博打で生きていくにもそれへの学習とストレスとのトレードオフなんだよ。
好きなことは何時間でも勉強できるって?
それに生活を掛けるようになれば同じことが言えるかな?
一度踏み込んで大金を得れば、抜け出せなくなる。
一度生活レベルが上がれば、その下の生活にはなかなか戻れなくなるものだ。
そして次の年には所得税が口を開けて待っている。
今年稼いだ金の税金を来年払わなければならないというシステム。
これがなかなか厭らしい。
来年の税金のために、また再来年の税金のためにずっとそれを続けなければならなくなる。
お金を取っておけばいいじゃないかって?
種銭を取っておける博打打ちは博打打ちじゃないんだよなぁ。
生活レベルを上げて、更に種銭も必要。
まあ、大金が入れば、稼ぐ選択肢が増えるのは確かだけどね。
その割り切りをいつできるか。
それが成功できる者と、失敗する者の線引きとして明確に作用する。
盛大に話がずれた。
で、しばらく歩いていたら、また虫に出くわした。
バッタだ。
ショウリョウバッタだ。
だよなぁ。
姿かたちはお馴染みのとんがった頭に、二本突き出した触覚が特徴のショウリョウバッタであった。
敵は一匹。
ニックが的確に報告してくれる。
俺たちを認めたバッタは、
「ギリッ!」
と、石臼を力強く擦り付けたような音を出し、威嚇した。
ああ、腹がぶよぶよして気持ち悪い。
「はじめてみる魔物だ!皆、警戒してくれ。」
俺は皆に警戒を促す。
「アンネはニックのフォロー!姉さんは俺のフォローで!マヤは後ろを警戒!」
「はい!!」
俺の指示に皆が返事をした。
敵は十五メートル先。
「ニック、挟むぞ!」
「了解!」
俺とニックが同時にバッタへ突進すると、バッタも俺たちに向かってジャンプをした。
奴は後ろの羽も広げて滑空してくる。
へ?十メートルの差がなくなったやんけ!
なんつー、跳躍だ!
もう一跳びされたら、後衛に届いてしまう。
そう考えているうちに、ファイアーボールが一つ飛んできた。
「バフッ!」
そのファイアーボールは結構なスピードでショウリョウバッタに向かっていき、見事にバッタの胸に命中した。
反射神経はそれほどでもないかもしれない。
しかし、いいタイミングの魔法だ。
「ニック!行くぞ!!」
「了!」
俺とニックは、炎に一瞬巻かれ、藻掻くバッタに向かっていくのだった。
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本作は長編となっています。
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