608.アベル君とカミラの見方。
608.アベル君とカミラの見方。
声を掛けてきたのはカミラだったが、パオロも一緒だった。
お前ら、一緒のパーティーだったのか。
自分のパーティーだけで一杯一杯で、知らなかったよ。
「おう、アベル。どうした?大蜘蛛か?三匹か。まあ、お前が居れば楽勝だろうがな。」
パオロがのんきに話しかけてきた。
「いや、死にそうになった。危なかったよ。」
俺は正直に答えた。
「まじか。それでこの状態か。」
パオロは体育座りをしているロッティーたちをチラ見する。
「いや、単純な僕の油断だったよ。姉さんたちは何もしなかったから。」
「何もしなかった…?」
パオロは不思議そうにつぶやいた。
あ、言葉のチョイスを間違えたかもしれん。
「どうせアベルがちゃんとした説明もせず、戦闘初心者の先生を追い詰めたんでしょ。」
と、カミラが口を挟んできた。
が、その言は正鵠を射ていた。
「ああ、今分かった。そのとおりだった。ゴメンね、姉さん。いきなり十割の力を発揮できるものだと僕も思っていた。そうじゃないよね。」
俺の謝罪の言葉を聞いて、ロッティーが涙ぐむ。
「あんたは自分が何でも出来るからって、周りへの要求が極端なのよ。」
カミラがさらに追い打ちをかける。
「能力がある相手なら十割を望み、無いなら自分の庇護下に入れ何もさせない。これじゃダメよ。」
そこまでじゃないと思っているが。
現にアンネとニックはうまくやっているじゃないか。
ただ、相手に得手不得手があるという見方が欠如していると言えばそうだ。
実際、ロッティーもマヤも虫が嫌いだった。
虫や戦闘に慣れる期間が必要だったのではないか?
いや、必要だったんだよ。
周りの大人が有能すぎるせいで、周りの有能な子供達でもできる気にはなっていたのかも知れない。
あっちゃー、やらかしたな。
指摘してくれた神様に頭が上がらないな、こりゃ。
「ああ、本当だね。姉さん、マヤ。本当にゴメン。二人にはここにいる魔物たちに慣れてもらう必要があった。それを僕はすっ飛ばして、君らの能力なら出来ると勘違いした。もっと人のことを知ろうとしなければ、リーダーとして失格だな。」
俺がそう言うと、ロッティーが勢い良く立ち上がり俺を抱きしめた。
「違うの、甘えてたの、ごめんね、アベル。」
そう言ってロッティーは嗚咽を漏らす。
「うん、いや、でも初めは甘えさせるべきだったんだよ。それを怠った僕のミスだ。カミラ、指摘してくれてありがとう。気が付けたよ。」
「どういたしまして。なんだか問題は済んだようだし、私たちは行きましょう。」
カミラは、一緒に来ていたパーティーメンバーに向き直り、歩き始めた。
「おう、じゃあな、またあとで。」
パオロもカミラに続いた。
「アベル様。ゴメンなさい。私も甘えていました。授業ですもんね。頑張らないと。」
マヤはいつの間にか立ち上がり俺にそう言った。
「うん、このダンジョンは虫ばかりだから、まず慣れるところからだったんだ。マヤも慣れるよう、頑張ってくれ。」
本来頑張れって言葉は無責任で嫌いなんだけれど、他に掛ける言葉が見つからない。
「はい!頑張ります!!」
マヤは気合の入った返事をしてくれた。
俺の考えとは逆の方へスイッチが入ったようだ。
俺の様なネガな人間ばかりじゃないんだよな、世の中はさ。
「姉さん、そろそろ離れてくれる?」
いつまでも俺を離そうとしないロッティーに俺は声を掛ける。
「いいじゃない。こうしていたって。」
顔は見えないが、ロッティーはむくれた声で言った。
「そういう甘えは禁止で。」
「えー、それはないわ!」
「シャーロット様は弟君が大好きなのですね。」
ロッティーの不満の声を聞いたマヤが揶揄うように言った。
「大好きだけではないのよ、マヤちゃん。愛しているの。」
「家族愛だからね。」
ロッティーの不穏な返事に、俺は被せ気味に訂正する。
『アベル、貸し一つよ。』
頭の中でトレーサの声が聞こえると、傍に居たアンネが吹き出すのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。




