606.アベル君と蜘蛛の糸。
606.アベル君と蜘蛛の糸。
「いい加減にしないと、パーティーの代表として二人はやる気がないと教官に報告するぞ。」
俺は学生伝家の宝刀、チクりを発動させる。
「私たち二人が抜けてもいいの?」
なぜかロッティーが強気発言。
「構わないよ。僕も斥候は出来るし、ニックもアタッカーとしていける。後衛はアンネがいれば十分だね。」
すかさず俺は三人での編成を述べた。
「アベルの意地悪!私だって苦手なものくらいあるのよ!」
一番年長で教授という立場を忘れ、弟である俺に対し甘えを発動するロッティー。
「それが現状甘えであって、この授業に最も忌むべき感情ということを、知っていて言っているなら姉さんは帰って構わないよ。」
「うぐ。」
ロッティーは涙目で黙った。
「つか、前回のアタックで二人とも確認したよね?だから今回は大丈夫だと踏んで安心していたんだが、早とちりだったようだ。」
そう言うと、俺は大蜘蛛の方へ向き直った。
「わかりました!わかりましたよ!もう!」
そう言ってマヤは一番前へ駆けて行き、
「早くあいつら落としてください!!」
そうマヤは怒鳴った。
俺はアンネの方を見ると、その横に居たロッティーが、真っ赤な顔でファイアーボールを生成していた。
出力的には三匹同時に吹き飛ばせるくらいの大きさであった。
「姉さん!デカすぎ!」
俺の言葉より早く、そのファイアーボールは大蜘蛛まで飛んで行き、爆発四散しその熱が着弾地点から十メートル以上離れた俺たちのところまで届いた。
ファイアーボールは炎の玉ってだけだから、本来爆発はしないんだが、ロッティーめ、新型か何かか?
爆発によって巻き上げられた埃が晴れる。
大蜘蛛がいない?
地面にも落ちていない。
「ニック!警戒!!」
「了解!」
俺は前衛に居たニックに命じた。
ニックは爆発を受け、フラフラ歩いているマヤを後方に引っ張り、伏せさせた。
そこに、
「シュッ!!」
と音と共に、蜘蛛の糸がマヤの居た地面に届いた。
俺は糸を辿り、発射地点を見た。
そこの天井には亀裂が走っており、蜘蛛の尻だけが、チョコンと間抜けに出ていた。
見てくれだけは。
あの糸がマヤに当たっていたら、今頃はグルグル巻きにされていただろう。
「アンネ!」
「はい!」
アンネは、亀裂の中にファイアーボールを連続で叩きこんだ。
さすがの大蜘蛛たちも、ピンポイントに亀裂の中へと吸い込まれて行く、連続したファイアーボールに辟易としたのか、カサカサと音を立てて出て来た。
そして一斉にスピードを上げ俺たちへと迫ってきた。
「ニック一匹対応!アンネはニックの援護!俺は二匹とやる!!」
俺はそう言うと右手を伸ばし、手で銃の形を作った。
よく「バン!」と撃った真似をするアレだ。
その人差し指の先から、チョロチョロと水が出てくる。
「シューーーーー!!!」
一瞬でその水の出る音と勢いが増し、まっすぐ迫ってきた蜘蛛の頭を貫いた。
右腕を下に振ると、大蜘蛛が真っ二つに割れた。
「ヒッ!」
俺の後ろでマヤの悲鳴が聞こえるが、構ってられない。
割れた大蜘蛛の陰から、白い蜘蛛の糸が、
「シュッ!!」
と、音と共に現れ、俺の右手を覆った。
あ、ヤバイ。
手が丸まっちゃって、水が出せない。
ブラインドになっていたか!
クンッ!と蜘蛛の糸が引っ張られ、俺の体が宙に浮いた。
このままだと俺は地面に叩きつけられ、屠られるのを待つだけになるだろう。
そうはさせないがね。
宙に舞った状態でブレインブーストとマッスルブーストを発動。
視界が途端にスローモーションへと変わり、マッスルブーストで強化された腹筋と足の筋肉で無理矢理足を地面へと向けた。
体操選手が種目の「床」でダッシュとジャンプの勢いで空中をクルクルと回るが、あれに近いと思って頂きたい。
自分が思った方向じゃないから、それより難しいけれどね。
まあ、そのお陰で俺は固い地面に叩きつけられず、ブーツから降りられた。
右手は相変わらず糸に絡み取られていた。
またも引っ張られ、今度は地面擦れ擦れを飛行することになった。
ブレインブーストがかかったままなので、恐怖心はないが、擦れたら痛いだろうななんて考えながら、空いた左手で左の腰に吊るしてあった黒曜鋼の剣を抜き、口を開き待ち受けていた蜘蛛の口に剣を入れガッチリ目に身体強化を掛けた。
口に刺さった黒曜鋼の剣は身体強化で急激に自重が重くなり、それだけで黒曜鋼の剣は大蜘蛛の顎を切り裂き、大蜘蛛は息絶えたのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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