597.アベル君と擦り合わせ。
597.アベル君と擦り合わせ。
「さて、なんの話だっけ?」
俺は場のリセットの意味で、そんなことを言ってみた。
「昨日、貴様が何の仕事をやっていたかという話だ。」
オスカーがまじめな顔で答えた。
ルシア嬢のことは、置いておくことにしたのか。
それが一番だな。
なら畳み掛けるのが良いのだ。
「ああ、そうだったな。では一から話そうか。」
俺はそう言うと、ダンジョンの授業から、件の教官との言質取りについてのやり取り、そしてドロップを売りに行った時の冒険者ギルドでのやり取りを話した。
クリス婆ちゃん家の庭での話?
そんなんは黙っておく方が吉よ。
自分の母親まで絡んでいたなんて、あの兄妹も聞きたくもないだろう?
「そんな感じで僕らが仕留めた魔物のドロップをダンジョンから持ち出し、冒険者ギルドで売ることが出来なかった。だから、僕のコネを使ってなんとかならないかと当たりを付けたら、釣れたのが内務大臣と校長だったんだよ。」
「学校がらみだから、校長が出てくるのはわかる。が、なぜ内務大臣迄出張って来たのだ?」
オスカーは顎をさすりながら、俺に聞いてくる。
「冒険者ギルドの所で言っただろ?この学校のダンジョンは国の所有物だからドロップした緑鉱石も国の物になるって話さ。だが、ダンジョンから出たものをどう処理していいのかの厳密な取り決めが無かった。」
「なるほど。国有財産ならばカレッド伯爵が出てくるか。」
オスカーは言いながら頷いた。
「国政の勉強やった甲斐があったな。先生は嬉しいよ。」
俺がそう言うと、ミカ嬢が声を上げる。
「どういうことです?アベル先輩が王太子殿下の先生?」
「たまにね。躾とか国勢とか情勢とか。両陛下直々に頼まれたからさ。」
俺はミカ嬢に端的にあらましを説明した。
「ふん、最近はやっとらんではないか。」
気に入らなそうに、オスカーは首を振る。
仕方ないので、俺は本当のことを話すことにした。
「そりゃお前がライラ女史とよろしくやっている時間が増えたからな。」
「それを今言うな!まったく。でだ、校長と内務大臣とその取扱いを作っていたということか?」
俺の言葉を聞いたオスカーは、一瞬激高したが、すぐに本題に戻った。
「そうだ。校内ダンジョンにおける収穫物の取り扱いについて、素案。これを作っていたわけさ。昨日の朝から晩までな。あの二人の間で。」
あの二人を前に、生徒たちが危険を冒して成果物を得ているのに、何ら実入りがないのは何事かと説明に説明を重ねてきたんだ。
そりゃ俺でも疲れるよな。
「それで、件の教官の話はその時どうなっていた?」
それなのにオスカーはコロッと話題を変えた。
「そういう教官がいるという話にはなった。が、僕が知っているのはそこまでだ。今朝、教室で退職した旨を聞いて驚いたくらいだからな。」
俺がそう言うと、オスカーが険しい顔をした。
「そういう教官とは?」
ん?不良教官という意味だったが、通らなかったか。
「生徒が取って来た魔石を、自分のポケットに入れてしまうような教官だってことさ。」
「なるほどな。」
そう言うと、オスカーは俯いた。
「死因は何だ?」
何かを考えているオスカーに、俺は率直に聞いた。
「わからん。バルド配下が調べてはいるが、分からんというのだ。」
わからない?
「刺し傷や斬った痕も無しか?」
俺は訝し気に聞いてみた。
「ああ、そうだ。外傷がない。」
オスカーは呟く。
「じゃ、疑われるべきは僕か。」
俺はスルッと言葉に出した。
「貴様の能力を知っている者は、そう思ってしまうかもしれない。だから、直接貴様に聞きに来たのだ。」
ああ、こいつなりに俺のことを心配してくれたのか。
愛い奴だ。
へっへっへ。
「まあ、僕じゃないがな。第一動機がない。確かにあまり素行のよろしくない教官ではあったが、先生というものは、そういう人が一定数居るものだからな。魔石を取られたからって、たった四個の魔石でさすがの僕も殺意は沸かないよ。それに、」
あの教官を殺しても、俺になんら旨味が無いもんな。
まずそれを考えるべきだし、
「それに?」
オスカーが急かすように俺に聞くが、続きは次号!刮目して待て!!
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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