594.アベル君と知識と結婚。
594.アベル君と知識と結婚。
「そんなの決まっているじゃございませんか。殿方には赤ちゃんが出来ませんもの。」
ミカ嬢がルシア嬢の不満に対し、真っ向から言った。
「でも、それは不妊のポーションを飲めば解決できるのでは?」
ルシア嬢がそんなことを言った。
はい、この世界にも経口避妊薬はございます。
どうやって排卵や受精を抑えているかはさっぱりわからんがね。
実際妊娠は抑えられるし、摂取する人の体調的にも問題は無いようだ。
何故わかるかと言うと、ローズがずっと飲んでいたから。
エドワード爺ちゃんが曾孫を早く見せろと言った日から飲んではいないけれどね。
そう言えば、荻野式的な妊娠指標的なものは聞いたことが無いな。
「必ずしもそれで抑えられるというものではないじゃないですか。」
ミカ嬢が言った。
それもそうらしい。
百パーセントではない。
何事も絶対などないのだ。
ただし、中絶が出来るかと言うと、微妙。
俺自身は聞いたことが無い。
魔法やポーションで出来そうな感じはするけどね。
女性たちの中では色々情報を持っているのかも知れない。
野郎どもが知らないだけの情報なんて、星の数ほどあるだろう。
「だとしても、殿方だけ知れて、私たちは結婚せねばわかりようが無いというのも、不公平ではございませんか。私は今知りたい!!王太子殿下もアベル様も既にご経験なのでしょう?王太子殿下はこの学校の教師とそういう関係にあると伺っておりますし。アベル様は、すでにお妾がいらっしゃるじゃないですか。」
それを聞いたオスカーは口を開こうとして、咄嗟に唇をかんだ。
よく我慢できた。
大人になったな。
代わりに俺が口を開くか。
「今までの話を聞いていると、理屈では分かるが王太子妃としてはルシア嬢は相応しくないように見える。」
俺がそう言うと、全員が目を剥いた。
「なぜです?」
ルシア嬢はおっとり聞いてくる。
ホント、結婚に興味が無いんだな。
あるのは自分の立場と興味だけか。
「では、ルシア嬢とオスカーが結婚したとしよう。オスカーはこうであった。では他の殿方はどうなのだ?あなたは、あえてこういう言い回しを使うが、この知的欲求を抑えることが出来るのか?」
「その時になってしまわなければ分からないでしょう?」
「いや、わかる。」
俺は、彼女の言葉にかぶせるが如き早さで言った。
「最初に経験したいと言って懇願したのは僕にだった。その時点でルシアさんの考えは決まっているだろう。よって、僕はあえて強く言う。それはオスカーの親友として、彼の義弟候補として、あなたはオスカーに今のままでは相応しくない。」
「確かに私は最初アベル様にお願い申し上げました。それはアベル様がすでに経験者でいらっしゃり、既に正室との結婚も、側室もある程度決まった気軽な身の上だと知っていたからです。」
へ?
何を言ってんの?このズベ。
「その言葉は聞き捨てなりませんよ、ルシア様。」
そう言ってオリビィは椅子から立ち上がった。
「旦那様はそのような軽いお方ではございません。私との結婚も、ローズさんを迎え入れたことも、側室候補の方々も、それぞれ軽い気持ちで決めてなどないのです。いい加減にしてくださいまし。」
あれ?俺がそんな悩んだことを、この子に言ったっけか?
いや、でも今の援護は助かる。
「そうなんですか?」
なぜかミカ嬢が俺に聞いて来た。
俺のことがそんなに軽く見えていたんだろうか?
見えていたんだろうな(反語)
「そりゃ悩む。ローズは妾に入れるべきではないと最後まで悩んでいた。妾などではなく、普通の伴侶を選び、小さな家庭でいいから幸せでいてほしいと願っていたんだ。」
俺はそこまで言ってハッとした。
なにを語っているんだ?
こんなこと言わなくてもいいのに。
「いや、ともかく、結婚というものは相手の人生も、こちらの人生もひっくるめた大イベントで、人生最大の契約行為ということだ。相手を裏切ってはいけないというね。」
そう言って俺は何故か天を仰ぎたくなるのだった。
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