593.アベル君とお姫ズの貞操。
593.アベル君とお姫ズの貞操。
「オスカーどこから聞いていた?」
俺は微妙な笑みをたたえて突っ立っているオスカーに聞いた。
「何の話だ?」
「ごまかさなくていい。」
オスカーがとぼけようとしたので、さっさとその態度を却下する。
「うん、そうだな、ルシア君がアベルと経験をしたいと言ったところからだな。」
僕は何も気にしていませんよ?そんな雰囲気を醸しつつ、オスカーの言葉の節々に気まずさが残る。
「僕が誘ったわけじゃないからな。」
俺は一応予防線を張っておく。
「私はそんな話は聞いていないが?」
そう言う、オスカーの目に少し怒りが見えた。
やっぱ怒るよね。
今はミカ嬢とルシア嬢もオスカーとは慣れた間柄でないことが、そこはかとなく分かる。
でも三人ともオスカーの正室候補としてのコンペディションが、この留学の真の目的だということも知っている。
そこに俺が割り込んだ。
実際俺は割り込んではいないし、割り込むつもりもないのだが、さっきの会話を切り取ればそう見えても仕方がない。
「お兄様、旦那様は、その件に関して被害者と言っていいでしょう。ルシア様の好奇心の的になっただけですよ。」
オリビィが俺の擁護をしてくれたが、それに対しオスカーは、
「今の話をオリビィは何も思わんのか?」
と、聞き返す。
「ルシア様は何をおっしゃっているのだろう?とは思います。ただ、話の流れとして、純粋な好奇心と分かっていましたから、そこまで怒る必要が無かったというのが正直なところ。それに、」
「それに?」
オスカーが聞き返す。
「旦那様が受け入れるとは思っていませんから。旦那様はおちゃらけるところはございますが、凄く理性的な方でいらっしゃいますので。」
オリビィ…、良く分かっていらっしゃる。
「たしかに。妙に年寄り臭い所が有るからな。アベルは。」
と、オスカーが納得しつつ、憎まれ口をききやがる。
「ルシアさん、という訳で僕は君の相手は務まらない。いいね?」
「では、王太子殿下、お相手願いますか?」
「駄目です!!」
ルシア嬢のオスカーへの質問に、いち早く反応したのはミカ嬢であった。
「ミカ様、何故です?」
不思議そうにルシア嬢はミカ嬢に聞いている。
分かってしかるべきところだが、自分の興味のあずかり知らないところは、心底どうでもいいのかも知れない。
それが例え、自分の結婚であっても。
前世であれば不思議ちゃん扱いで済んだかもしれない。
浮気されること前提で付き合う茨の道が見えるので、普通の男は手を出さない。
つまみ食いが好きな男共が相手をするだろう。
そこで病むか、それを糧にのし上がるか。
大抵、病んで消えていくんだが、ルシア嬢は後者のような。
まあ、分からんし、分かりたくもないがね。
「当たり前でしょう!王太子殿下は私の婚約者候補でもあるのですよ!それを分かって、他の婦女子に寝取られるようなわけには参りません!」
ミカ嬢の憤りが俺からルシア嬢にスライドした。
ありがたい。
「寝取るだなんてそんな、滅相もございません。今現在、必要なのは経験であって、王太子殿下の感情ではございませんので。」
と、ルシア嬢は言い切った。
そこ言い切って良いモノなのか?
仮にも婚約者候補に対して。
そして、さらなる爆弾を放り投げる。
「ミカ様は興味がございませんの?」
「ありません!!」
ミカ嬢は憤怒の表情で答えた。
「そうなのですか?」
本当に不思議そうに聞くルシア嬢。
「あなた!淑女の貞操をあまりに軽く見過ぎなんじゃございませんか!?」
ミカ嬢が叫ぶ。
ほんそれ。
でも、所謂研究者というものはそういうことに疎いモノなのかもしれないが。
「私の貞操は、その体験によって奪われるものです。軽くなど見ておりません。」
「それが軽いと言っておるのです!」
両者ともに引かない。
「おかしいじゃございませんか。成人を迎えたら、殿方たちはさっさと筆おろしと称して次の体験を得ているのに、私たちは何故駄目なのです?」
妊娠の可能性を秘めているから。
王太子妃候補ならなおのことだ。
俺は、嫌な流れになって来たなと、心中で頭を抱えるのだった。
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本作は長編となっています。
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