590.アベル君とローズとリビング。
590.アベル君とローズとリビング。
時間は既に十時を過ぎていた。
実はこの世界でも二十四時間制に近いらしい。
エルフの偉い人が天文学を千年以上やっているんだとか。
スパンが長すぎてどうも良く分かりません。
ありがとうございました。
まあ、そんな時間になって、ようやく俺は寄宿舎の自分の部屋へと戻れたわけだ。
ドアノブを回し、ドアを開け室内に入る。
ローズが常駐しているから、カギは使わない。
持っているけどね。
え?ローズが居るのになんでって?
ローズがお買い物とか行っていたら、入れないじゃん!
などはどうでもいい。
「ただいま~。ロ~ズ~。カレッド伯爵に虐められた~。」
「あら、あら、大変でしたね。お疲れさまでした。やはりあの石の話だったんですか?」
「そうだよ。でもそれだけじゃないね。学校所有のダンジョンの在り方を決めてきた。」
「それは大仕事でしたね。お食事は?」
「あの内務大臣、奢ってもくれないんだよ。やっぱ法衣貴族は貧乏でセコくてかなわないよね。」
疲れた頭と身体の所為で、つい愚痴っぽくなってしまう。
「偉い人にそういうことを言っちゃダメですよ。また虐められてしまいます。」
そうそう虐められてはたまらない。
「それはあるね。何かご飯ある?」
「ありますよ。少し温めてまいります。」
そう言って、キッチンへ踵を返そうとするローズの腕をつかみ、強引に引き寄せた。
「アベル様。急にこういうことをなさるのは危険ですよ。私の頭がアベル様の鼻に当たったらどうするんです?」
「ローズが手当てしてくれるんだろう?」
「勿論手当はしますけど。」
「でも今はちょっとこのまま。」
俺はローズを抱きしめる。
「もう。」
ローズも諦め俺の背中に手を回した。
安心する。
心に出来た澱が、一枚一枚剥がれて行くような軽さを感じるんだ。
ぐぅ。
フッと軽くなった心と身体が反応したのか、腹がこのタイミングでなってしまった。
ローズは俺の腕の中から、フワッと離れ、
「食事を温めてまいります。」
そう言ってほほ笑むと、キッチンへ向かった。
ええ、だらしのない腹め。
そう言って、俺はカバンを床において自分の身体をソファに投げ込んだ。
このソファは、うちの両親がクリス婆ちゃんに頼んで揃えた家具の一つだ。
相当いい物で、ヴァレンタイン家の財力を知らしめすものになっている。
めったに人なんか部屋に入れないけどね。
そんなことをしているうちに、ローズはダイニングじゃなく、リビングに料理を運んでくれた。
「お疲れでしょうから、こんなものを用意しました。」
昔、ヴァレンティア城の炊事場で、俺がふざけてジョージと作った料理。
ミ〇ノ風ドリア的何かじゃないか。
「よく覚えていたね。こんなの。」
「美味しかったので。アベル様が発案する料理は何でもおいしくて、ジョージさんにこちらに来るとき全部教えて頂きました。」
「ジョージは一度作った料理は忘れないからね。」
「凄いですよね。私はメモを取るだけで精いっぱい。」
「いただきます。」
「おあがりなさい。」
二人の挨拶で二人が笑い合う。
ルーナブルのミルクのクリームと、トマトに似た野菜で作ったソース。
酸味と甘みが合わさって中の麦を炊いたものを包み込んでいる。
米じゃないのが残念だね。
「ドロップはね、誰がなんと言おうと冒険者の物だって不文律を、グスタフさんとカレッド伯爵に言ったんだよ。カレッド伯爵はなんていったと思う?」
俺は的何かを食べながら、朝からのことを思い出してローズに話し始めた。
「なんと仰ったのです?」
質問を質問でローズは返したが、そんなことはどうでもいい。
「冒険者と騎士学校の生徒は違うだろう?だってさ。そんなん分かってんだよ!」
俺の物言いに、ローズは、
「フフフ。」
と小さく笑う。
「ダンジョンから帰った生徒は、ドロップと魔石はすべて学校に渡す。これがマストだ!マストじゃねーよ!こっちは命はってんだぞ!!」
俺はスプーンを振り上げ熱弁する。
「フフフ。」
それを聞き、ローズはやはり小さく笑った。
それから、俺の愚痴は続き、
立って聞いていたローズは、いつの間にか俺の隣に座っていた。
顔が赤い。
「ローズ、顔が赤いな。熱でもあるか?」
俺は手でローズの前髪を跳ね上げ、額を寄せた。
すると、ローズがガバッと俺に覆いかぶさる。
「ロ、ローズさん、如何なさいました?」
「ア、アベル様。いい匂い。」
そう言って、自分の鼻を俺の首筋に近付け、クンカクンカ嗅ぎ始めた。
「始まっちゃった?」
「始まっちゃったようです。」
そう言って、ローズはいきなり着衣を脱ぎ始めた。
最近の獣人はヒートがなくなったという話は、ローズには無効なのだなぁ。
そんなことをあらためて思うとともに、疲れてんのに朝まで眠れないことを覚悟するのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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