588.アベル君と口八丁。
588.アベル君と口八丁。
「その件に関しては、この学校の剣術教官より、好きにして良いと言われておりますが。」
俺はカレッド伯爵に、教官からとった言質を披露して見せた。
「それは、学校の決まり事なのかね?」
カレッド伯爵が俺に聞くが、それを聞いたグスタフさんの顔が、更に仏頂面になる。
「質問を質問で返すようで大変申し訳ないのですが、何故内務大臣がこちらに?これは学校の問題だと思うのですが。」
俺は至極真っ当な率直な質問をカレッド伯爵にぶつけてみる。
「それは国の財産管理の問題だからだ。騎士学校の財産は国の財産。その扱いは勿論法に則って扱われるべきものである。違うかね?」
カレッド伯爵は、俺の無礼を脇において、丁寧に答えて下さった。
良い義父だ。
勿論それはグスタフさんに対してもだ。
なぜなら、法整備がされていないのなら、学校側の職員が好き勝手していても仕方がないから。
「それでは失礼ついでにもう一件お尋ね申し上げるが、制度を司る内務大臣閣下は、この問題をどうご覧になっているのですか?」
「法制度で見る限りでは、学校管理のダンジョンについて、明快な制度の法整備などはされていなかった。よって、ダンジョンから出たものを誰がどう使おうと、現時点では罪にならないし、責任も問われない。いいね?」
鋭い目を、更に鋭くしてカレッド伯爵が言った。
「承知いたしました。良かったですね、校長。責任が無いそうですよ。」
俺はグスタフさんに顔を向けて言うと、
「馬鹿もん!そういう問題ではないわ!」
と、グスタフさんは、いたく憤慨してらっしゃった。
「何故です?」
俺は素直に聞いてみた。
「ビルの奴に馬鹿にされたのだ!自分の管轄の法もしっかり読んでいないのかと!枯れていたと思われたダンジョンでも、それは黙っていれば持ち出してもいいと思われていたのだと!このうつけとまで言われたのだぞ!」
ウィリアム爺ちゃん、言いすぎ。
あれだ、揶揄うネタが見つかって、ウッキウキだったんだろうな。
「しかもだ!王妃陛下から直接聞かれ、クリスからはサロンで言われ、ルミナからはベッドの上で言われた!たまに登校すれば、カレッドが来て制度の穴に気付かなかったのか?だっ!このような辱めは初めてだぞ!アベル!!」
え、!?俺の所為?
「軍務大臣閣下、私は国王からの要請で調べたまでです。私自身が閣下に思うところはありませんので、あしからず。」
カレッド伯爵が冷静にグスタフさんに物を申す。
「あってたまるか!ほら見ろ!陛下まで調べておる!」
グスタフさんは吐き捨てた。
「まあ、すべてはこの石の所為ですね。」
俺は緑鉱石の塊を、執務机の上に置いた。
「おお、大きいな。」
デカいと言わないグスタフさんの育ちの良さだよ。
身体に似合わないんだよね。
しかも石の大きさに心が奪われ、さっきまでのヒート状態が嘘のように引いていた。
「この程度の石が今までも出ていたおそれがあるわけですね?」
カレッド伯爵が、いいところに目を付ける。
そのとおりなんだよ。
生徒や教師が黙って換金していた恐れがある。
バレない様に他領で換金していたかもしれないしね。
「うむ、ここ数年の報告では、倒した魔物分の魔石しか報告が無かった。現場を見ていたわけではないので、報告書を信じ込むしかなかったが。」
グスタフさんが渋い顔で言う。
「校長も調べていらしたんですね。」
などと俺が言うと、
「当たり前だ。給料に見合った金の使い方をしていない教師の噂は常にあったのだ。特にダンジョン実習の後でだな。」
しかし、教官はドロップが出るとは全然思ってもみなかった様子だった。
つまり、生徒が倒した魔物の数と、徴収した魔石の申告をちょろまかした程度のことはやっていたようだな。
問題は生徒がドロップを黙っていた場合か。
俺の様に。
「つまり、アベル君のように黙ってドロップを持ち出した生徒が過去に居たかもしれないということですね。しかし、その彼か彼女らが見つかっても、私たちにはもうどうすることもできない。何故なら、裁く制度が無かったからです。」
カレッド伯爵が尺を計るようにまとめるのだった。
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