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新生児から始まる異世界ライフ~愛情いっぱいに育てられた俺は剣も魔法も極めます~  作者: 天斑 蒼
第五章 アベル君と騎士学校。

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587.アベル君と校長室という名の密室。

587.アベル君と校長室という名の密室。




 爽やかなセントクレア邸の庭から数日が経過していた。

 そして俺は、いつものように寄宿舎から教室へと移動していた。


 もちろんローズから送り出してもらってね。

 でへへ。


 しかし、教室へ向かう廊下の途中で座学の教師から呼び止められた。

 「アベル・ヴァレンタイン。校長がお呼びだ。そのまま校長室に行くように。石が手元にあるならそれを持って行きたまえ。なければ寄宿舎まで取りに行くように。いいね?」


 丁寧なその物言いにちょっと思うところがあったが、

 「承知いたしました。」


 俺はそう言って、寄宿舎へ例の緑鉱石を取りに行った。

 なぜ石という言葉でそれが分かったか?


 それしかないと思ったから。

 それだけだ。


 「ローズ~、忘れ物しちゃったよ~。」

 そう言って寄宿舎の自分の部屋のドアを開いた。


 そこには知らない男と抱き合うローズの姿が…あるはずも無く、彼女は懸命にリビングの掃除をしていた。

 その手の情景は、どこぞのNTR同人誌か家庭板だけで十分だ。


 「お忘れ物ですか?」

 そう言って聞いてくるローズを俺は抱き寄せながら、


 「忘れたというより、取りに行けって言われたに近いんだけどね。例の緑鉱石さ。」

 言い終えると俺はハグをしている力を少し込めた。


 「なるほど。今日は遅くなりそうですか?」

 「まだわかんないな。どういう話が待っているか、それは分かるが、どこまで飛躍するかが見当つかない。」


 「そうですか。でも、お食事をお作りしてお待ちしております。」

 「うん、いつも悪いね。」


 「いいえ、これが私の生活ですから。」

 そう言ってほほ笑むローズに、俺は頷き彼女を手放した後、書斎へ石を取りに行った。


 売れば金額が大きい物なので、一応金庫にしまってあった緑鉱石を俺は取り出し、リビングに戻ると、

 「じゃ、行ってくるよ。」


 ローズに言い、

 「行ってらっしゃいませ。」


 ローズはお辞儀をして返してくれる。

 こういう生活は手放したくない。


 絶対にだ。

 俺は廊下に飛び出し、校長室に向かった。


 コン、コン。

 二度のノックの後、ドアの向こうの校長室へむかって、


 「アベル・ヴァレンタイン、お呼びにより参上つかまつりました。」

 などと、時代がかった物言いをしてみた。


 言ってみたかったんだ。

 「入れ。」


 ドアの向こうから、武骨な太い声が聞こえたので、俺は躊躇なくドアを開けた。

 執務用の机に大柄な人影が座っている。


 その横に痩身な影も。

 ああ、なんでこの人まで居んの?


 しかし執務用の机に大柄な影って、この間と同じシチュエーションだな。

 俺は一瞬、メタなことを考えながら、ドアをくぐった。

 「失礼します。」


 そう言って部屋に入り、ドアを閉めて入ってきた俺を見たグスタフさんは、チョイ、チョイ、と指で机の前に来るように促した。

 指で呼ぶとか。


 まあ、大臣閣下だから仕方ないか。

 俺の身分じゃ逆らいようがないしな。


 「校長、おはようございます。何か御用でしょうか?」

 一応テンプレを言ってみた。


 「やあ、おはよう、アベル君。」

 校長ではなく、グスタフさんの椅子の隣に立っていた、痩せた神経質そうな男性が俺に挨拶をした。


 この人も偉い人だが、マメなんだよな。

 「これは内務大臣閣下、おはようございます。」


 俺はカレッド伯爵に挨拶を返した。

 「君はいつもいろいろ賑わせてくれるね。私も暇ではないのだが。」


 カレッド伯爵が、鋭い目つきで言った。

 そのうち親戚になるんだから大目に見てよ、義父さん。


 「僕自身は、そんなつもりはつゆにも思っていないんですけどね。」

 俺は真面目な顔でカレッド伯爵に返す。

 

 「あらゆる方面から学校に苦情が来た。」

 仏頂面でグスタフさんが話し始めた。


 「生徒の権利が守られていないというのだ。アベル、何か知っているか?」

 さあ、はなから生徒の権利が無いこの学校で、なにが守られていないのやら。


 まあ、騎士学校という性格の学校だから、前世で言えば士官学校と同じ。

 そこに、自由など存在しないのは、当たり前っちゃ、当たり前なんだけどね。


 「生徒の権利ですか?具体的に、どのような権利でしょう?」

 実際、具体的に言ってもらわないと、全部でしょって言いたくなるのでね。


 「具体的には、騎士学校管理のダンジョンのドロップのことだ。」

 グスタフさんではなく、カレッド伯爵が口を開いた。


 内務大臣がこの件に首を突っ込むってことは、王室からの苦情って話なんだろうなぁ。

 王室の誰がそんな苦情を漏らしたのやら。





 密室の中で、事は動き始めたのだった。


読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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