584.アベル君とガーデンティーパーティー。
584.アベル君とガーデンティーパーティー。
ここは、セイナリア市の貴族街でも一等地にある、セントクレア家である。
その庭先でおば様方になぜか囲まれている。
と言ってもいつもの三人。
クリス婆ちゃん、ルミナ夫人、で、もう一人が王妃である。
お忍びで宰相の家に来るとか、何を考えているんでしょうね。
「お茶に呼ばれたから来ただけよ。」
にっこり微笑み、王妃はお茶をすする。
まあ、いいんだけどね。
なぜこのようなことになったか。
俺はまず婆ちゃんにルミナ夫人の橋渡しをお願いした。
なぜルミナ夫人に話があるのか、婆ちゃんに根掘り葉掘り聞かれたわけだ。
では、うちで話をすればいいじゃない。
別にそんな話ならルミナの家に直接行く必要もないでしょ。
などと丸め込まれたわけだ。
では、なぜ王妃が?
叔母様から面白い話が聞けると聞いた。
だ、そうだ。
相変わらず俺は暇つぶしの道具なのである。
まあ、いいんだけど。
「で、かわいいアベルが私にどんな用なの?」
相変わらず鈴を鳴らすようなかわいい声音で、危険球をガンガン投げ込んでくる、合法JCことルミナ夫人。
「これなんですけどね。」
俺は騎士学校でドロップした緑鉱石を取り出し、目の前に置かれたティーカップの更に前に置いた。
「コトリ。」
緑鉱石は少し音を立てて傾いた。
「まあ!大きい。緑鉱石ね。」
婆ちゃんが一言入れる。
まあ、先に話してあったから、そんな驚くことでもないと思うんだけど、それが大人の女たちの会話の妙なのだろう。
「これはどこから?」
王妃が俺に聞いてきた。
「騎士学校の管理しているダンジョンです。そこにいたローチからドロップしました。」
「ローチ?あのゴ…」
「ううん!」
俺の言葉を受けて、ルミナ夫人が皆まで言うところを婆ちゃんが制した。
「あの枯れ泉のようなダンジョンからこれがドロップしたというの?」
王妃が緑鉱石から目を離さずそう言った。
ああ、あのダンジョンてそう言う認識なんだ。
「で、アベルはなぜこの石をここに持ってこられたのかしら?」
ルミナ夫人が切り込んできた。
そう、学校に取り上げられても不思議ではないこの石を俺は持ち出している。
それを、貴族サロンの中心人物たちの目の前に置いた。
それは摩訶不思議な石なはずだ。
「学校の教官からドロップは好きにしていいと言っていただけたので。」
俺はこともなげに言い放つ。
「現場の教官がそう言ったのね。あと証人になるような人はいるの?」
ルミナ夫人はなおも掘り進める。
もうこの人は俺の目的が分かったみたいだな。
頭のいい人と話をするのは楽でいいね。
「姉です。」
「シャーロットも一緒にダンジョンへ?」
婆ちゃんが口をはさむ。
「ええ、たっての希望で。父さんや母さんが見た世界が見たいと。」
「まあ!あの子ったら、十二でこっちに来てから何度も話をしたけど、そんなことは一度も言わなかったのに。やっぱり姉弟とは違うのかしらね。」
ちょっと婆ちゃんが寂しそうに言うもんだから、
「それは違うと思うよ。たまたまタイミングが良かったんだ。騎士学校でダンジョンに潜ることになり、魔法大学校とも合同で行うことになった。その引率が姉さんで、僕もたまたまD級冒険者だった。それだけだよ。婆ちゃんが気に病むようなことじゃないからね。」
「アベルは優しいのね。」
王妃は微笑みながら言った。
「ねぇ、優しいのはクリスだからかしら。」
ルミナ夫人は揶揄ってるんだ。
「僕は家族には優しいですよ。」
普通は。
前世じゃあり得なかったが。
「そう、やはりアベルの家族にならなきゃね。」
ルミナ夫人がまじめな顔をして言った。
「あんた、まだあきらめてないの?やめてよ、うちの孫を口説くの。」
婆ちゃんがルミナ夫人をこき下ろした。
「あきらめないわよ。こんないい男なかなかいないじゃない。」
「叔母様、オリビィの婚約者ですよ?」
相変わらずのルミナ夫人に、王妃が突っ込む。
「分かっているわよ。だから私は側室でいいの。もう正室は経験したしね。」
何が分かっているのか分からないが、分かっているらしい。
そんな感じで、この庭にいる時間も長くなりそうだと思うのだった。
「空が高いなぁ。」
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本作は長編となっています。
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