582.アベル君とクマちゃんと一緒。
582.アベル君とクマちゃんと一緒。
「ご無沙汰しています、ドミトリさん。」
俺は、中央ギルド長に近付き、右手を差し出した。
「ずいぶん大きくなったなぁ。」
感心したようにドミトリさんは言うが、これは明らかにお世辞だ。
「まだまだ小さいですよ。父さんと並ぶには、まだ拳二つ分くらい足りませんから。」
イタ!
ドミトリさんから握られた右手から鈍い痛みが走った。
なんつう力だ。
「そのローランドとアリアンナは元気なのか?」
「元気みたいですよ。手紙のやり取りしかできませんが。」
「そりゃそうか。でも息災そうで良かった。」
ドミトリさんはそう言って、握手を解き、手を差し伸べてソファーに座るよう促してくれた。
「娘と息子が遠いセイナリアでは、連中も寂しいだろう。」
俺らが座ると、自分も独立したソファーに座り、さっきの続きをドミトリさんは話す。
「そうかもしれませんね。でも、弟か妹でも今から作ってもらってもいいと僕は思っていますよ。あの二人は今でも仲が良いですし。」
俺がそう言うと、一瞬ドミトリさんは目を丸くし、
「わっはっはっは!そりゃいい!!」
そう言って、腹を抱えて笑い始めた。
「どうぞ。」
マナさんが、俺の前にソーサーに乗ったティーカップを置いた。
「ありがとうございます。」
俺は一言礼を言う。
「俺はね、アベル君。」
さっきの大笑いから一転、急に真面目な顔でドミトリさんが言ってきた。
「なんです?」
俺はそう言ってから、カップを口に運んだ。
「そういう一言が言える、君のことが気に入っているんだ。」
「はて?」
そこで、俺の後ろに立っていたローズが俺の耳元に口を近づけ囁く。
「さっき、マナさんにお礼を言ったことです。」
そう一言言うと、またローズは直立不動の姿勢に戻った。
「ああ、そういうこと!?ローズありがとう。」
俺がローズの一言で気が付くと、ドミトリさんは満足げに頷き
「ほら、まただ。自然に染みついているんだな、君は。」
などと言った。
「そうですね。沁みついているのかも知れません。ただ、ヴァレンタイン家の女性陣は皆怖いですから、言うことを先に言っておくという処世術ですよ。」
「はっはっは!処世術か。確かにそれも必要だな。しかし自然に礼が言える。それは君の価値を高めているよ。自信をもって良い。」
そう言って、ドミトリさんは自分の顎を撫でた。
「なんだかこそばゆいですね。」
俺はそう言ってからカップにまた口を付けた。
「まあ、自然にできているのが一番だからな。」
ドミトリさんも、カップを持ち上げる。
そして、中の茶を含んでから、
「さて、なんだっけな。」
そう言って首を巡らせ、ドミトリさんはマナさんを見た。
「騎士学校所有のダンジョンからドロップされた緑鉱石のことについてです。」
そうマナさんはフォローを入れる。
「ああ、そうだ。随分デカいの持ち込んだそうだね。」
ドミトリさんはそう言ってまた茶を啜った。
「ええ、そこまで大きくはないですよ。」
そう言って、持ってきた緑鉱石を目の前のテーブルの上に置いた。
「な!?ああ、確かに君は深紅の大穴にも入ったって実績持ちだったな。」
石を見て、若干目を見開き、そして俺のちょっとした経歴を話してから、ドミトリさんは背もたれにデカい背中を預けた。
「セイナリアでは、これくらいの石はなかなか出ませんか?」
率直に俺は聞いてみた。
「出んな。それがあの騎士学校のダンジョンだと言うと、眉唾物と思われても仕方がない。本当に出たためしがないからな。」
ドミトリさんはそう言うと、目を細めた。
「因みにヴァレンティアではどんなのを出した?まあ、まあ、ドロップなんぞそうそう出るものではないが、その口ぶりなら、中々の物を出しているのだろう?」
ドミトリさんが言うので、俺は掛け値なしに答えた。
「この倍の大きさの金剛石を。」
「拳一つ分の金剛石だと?」
「ええ、母さんたちの寝室の金庫に眠ってますよ。」
ドミトリさんとマナさんは、口をあんぐりと開けたまま、しばしフリーズするのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。




