581.アベル君とクマちゃん再び。
581.アベル君とクマちゃん再び。
「デケェ。」
「なんだよあれ!」
「ドロップ!?あれが?」
などなど、様々な声が外野から聞こえてきた。
こっちじゃこの程度が珍しいのかね?
「アベル様、少しお聞きしたいのですが、セイナリアでの活動報告は成されていませんが、どちらのダンジョンでこれを?」
などと、バニーちゃんが申し訳なさそうに聞いて来た。
まあ、冒険者じゃなく学生をしていたから、活動報告も何もなかったってのが正直なところなんだけどね。
「これは騎士学校所有のダンジョンで手に入れたものです。」
俺は素直に事情を話す。
「はあ、騎士学校所有のダンジョンですか。申し訳ございません、少々お待ちください。」
そう言って、バニーちゃんは席を立つと、足早に奥へ引っ込んで行った。
ああ、バニーちゃん、お尻大きかったな。
なんて考えていたら、カウンター脇から、いかにも出来る女がやって来た。
「アベル・ヴァレンタイン様でいらっしゃいますね。」
ひっ詰め髪で、背が高い気の強そうな出来る女が、俺のそばまでやって来て俺に聞いてきた。
テンプレな出で立ちだなぁ。
もうちょっと、柔らかい風貌にした方がウケがいいだろうに。
まあ、ウケとか狙っていないんだろうけど。
「ええ、左様でございますが。」
「わたくし、こちらのギルド長秘書をやっております、マナと申します。ギルド長がお呼びですので、私について、いらっしゃってください。」
そう言うと、出来る女は即座に踵を返し、颯爽と歩き始めた。
こちらは形がいい小ぶりなお尻だ。
「アベル様、どこを見ておいでです。」
殺気を纏ったローズの声が聞こえた。
「前だよ。」
「前のどこかと、お聞きしているのですが。」
「マナさんの背中?」
「背中ですね。」
「うん、後ろ姿だね。」
「アベル様?」
「しつこい。」
などとやっていたら、アンネがクスクス笑い始めた。
「二人とも変わらないなぁ。」
ポツリとアンネが呟いた。
すると何故だかローズが赤面し、俯いた。
嫉妬心をアンネに見透かされたのが恥ずかしかったのだろう。
お前、これからさらに俺の嫁が増える予定なのに、本当に大丈夫かと問いたい!
問い詰めたい!
あ、いかん、古いミームが零れ落ちてきてしまった。
そんなことをしていると、昇降機の前でマナさんが止まった。
こちらを振り返り、
「こちらにお乗りください。」
そう言って、横スライドシャッター型の扉を開いた。
「はい。」
俺たちは順に昇降機の中に入る。
「慣れておいでですね。」
ちょっと期待外れという顔をマナさんはした。
「ヴァレンティアのギルドにも同じものがあって、乗り慣れていましたから。」
「ああ、なるほど。」
そう言って、昇降機のレバーを操作するマナさん。
自分で振っておいて、俺のリアクションが薄かったから、興味を無くすとか何事?
「でも落ち着いていらっしゃいますね。これから中央のギルド長にお会いになるというのに。」
昇降機の扉を見つめたまま、マナさんが言った。
「ドミトリさんには以前お会いしていますから。交渉事もその時にしていますし。」
「交渉事?何年前のお話ですか?」
「僕が五歳の頃でしたから、十一年前になりますね。」
「ご、五歳でギルド長と交渉?」
「ええ、ギルド学校の開校のことについてです。お聞きしていませんか?あ、もちろん父も同伴でしたが、ヴァレンティアのギルド学校の開校は僕の案でしたから、それを見て中央でも開校したいとなったんですよね。面倒くさいおじさんですよね、ドミトリさんって。」
「ギルド学校が、アベル様の案?…私、一期生なんです。」
「ああ、それは奇遇ですね。」
俺がそう言うと、丁度昇降機が止まった。
そして、また外連味タップリのドアの前まで連れて来られた。
「こちらにお入りください。」
観音開きのドアをマナさんが開くと、そこは広々とした執務室になっていて、でかい図体で白髪交じりの巨漢の男が、背を丸めペーパーワークに勤しんでいるのが見えた。
頭からは、クマの耳がぴょこんと出ている。
これだけ見れば可愛いんだけどね。
「ギルド長、お連れしました。」
マナさんがそう告げると、丸まった背がゆっくりと伸び、人懐っこい笑みを浮かべたおっさんがこちらを見た。
「よう!久しぶりだな、アベル君!」
そう言って、ドミトリさんはぶっとい片腕を上げるのであった。
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本作は長編となっています。
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