580.アベル君とノヴァリス国中央ギルド。
580.アベル君とノヴァリス国中央ギルド。
俺とアンネ、そしてローズは今、ノヴァリス国中央ギルドに来ていた。
いわゆる、冒険者ギルドのセイナリア本部だね。
ノヴァリス王国内の冒険者ギルドの総元締めだ。
そんなところに何しに来たかって?
そりゃドロップの換金だよ。
この前ダンジョンの授業でドロップした緑鉱石のね。
俺とアンネの見立てでは金貨五枚分。
さて、いくらになるかな。
しかし、ここのギルドのドアも装飾がふんだんに施されてあって、大仰だ。
冒険者という半ばはぐれ者たちを相手にするために、ハッタリを利かせているとかどうとか。
建物自体はヴァレンティアの冒険者ギルドの方がデカい。
あそこは冒険者の数が半端ないからね。
セイナリアはダンジョンは数か所あれど、ヴァレンタイン領とは規模が違い過ぎる。
深紅の大穴だけで、潜る冒険者がセイナリア全体の数倍にあたるようだ。
その大仰な扉を俺たちはくぐった。
大きなフロアが目の前に広がり、シャンデリアがぶら下がって、足元には絨毯だ。
高級ホテルのロビーと見紛うような作りだ。
ヴァレンティアも似た感じだが、実務感が向こうは強い。
中央はやっぱり権威的に見せているんだろうな。
俺たちが入っていくと、冒険者と見受けられる連中からジロジロ見られる。
こういうのはもう慣れた。
まずアンネの美少女感が良くない。
目立ち過ぎだ。
あと、ローズの出来る女感もよろしくない。
目立ち過ぎる。
俺?
アベル君は美男子さんだから、それなりに目立つが、いまだそそり立つ陰キャのオーラが俺の身体を包み込んでいるから大丈夫。
俺ら三人は衆目の中、口笛を吹かれ、キャッキャッ、キャッキャッと騒がれつつ、D級冒険者のカウンターへ着いた。
何処のギルドも変わらないのか、E級とF級の列は長い。
D級になると途端に列が短くなる。
D級はなんも知らないと低く見られがちだが、ここまで上がるのは結構大変なんだ。
地味な依頼や、自分に合った等級のダンジョンを地道にクリアしていかなければならない。
それまでにドロップアウトする冒険者が多いんだよね。
誰でもなれるが、成り上がれるのはほんの一握り。
Vtuberみたいだ。
しかし、実務として動いているヴァレンティア支部では違う。
ヴァレンティア支部はD級以上が入れる深紅の大穴に挑む冒険者の数がやたら多い。
その所為もあって、D級対応カウンターが何列も作られていた。
俺たちがD級の列に並ぶことで、E、Fの冒険者がざわついた。
こういう雰囲気は、懐かしいな。
ヴァレンティアでは強盗にダンジョンで襲われた際、裸に剥いて縛り上げ、ダンジョンに置き去りにしたことが他の冒険者たちの逆鱗に触れた。
で、見事にハブられちゃったんだよね。
まあ、領主の息子ってのもあって、腫れ物だったし。
昔のことはまあいい。
ようやく俺たちの番が回ってきたので、冒険者の証であるタグを取り出し、カウンターの向こうで微笑む女性に見せてこう言った。
「D級冒険者の、アベル・ヴァレンタインです。ドロップの買い取りに伺いました。」
俺がそう言うと、周りがまたざわついた。
「一閃の剣の息子か?」
「剣では無敵の弟子…」
「お転婆魔法使いの弟子だって聞いたが?」
「セイナリアに居るって本当だったのね。」
「可愛い!」
「ヴァレンティアの至宝!」
などなど。
これも懐かしい反応だ。
その間、女性冒険者たちをローズが威嚇しているのもセットである。
「いらっしゃいませ、アベル様。どういったものを買い取り希望なさいますか?」
ウサギ獣人の可愛らしい女性職員が、俺の対応をしてくれる。
リアルバニーガールか。
初めて見た。
「これなんですが。」
俺はベルトに引っ掛けていたポーチの中の緑鉱石を取り出し、カウンター上にあった引き取り用の皿の上にあげた。
「まあ、大きな緑鉱石ですね。」
バニーガールが驚きの声を上げると、途端に周りも騒がしくなるのだった。
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