579.アベル君と帰りの大きな馬車の中。
579.アベル君と帰りの大きな馬車の中。
「「「やったー!!」」」
ロッティーが乗ってきた、魔法大学校の大きな馬車の中で俺たちは歓声を上げていた。
そして俺の手には、拳半分ほどの大きさの、緑鉱石が乗っていた。
「この大きさだと、金貨五枚程度か?」
俺がそう言うと、
「そうですね、それくらいで買い取ってもらえると思います。」
アンネもそれに同意した。
「「金貨五枚!!」」
マヤと、あのおとなしいニックまでもが声を張り上げる。
金貨五枚、前世換算で約五百万円である。
「丁度分けられるな。金貨一枚ずつに分ける?それとも記念に何か買おうか。」
俺はみんなに提案した。
「ヴァレンティアのパーティーの時も、お揃いのナイフを買ったんですよね。」
アンネが懐かしげに言った。
「き、金貨一枚分の記念品ですか!?」
マヤが目を剥きだして言ってくる。
「全部を使うわけじゃないよ。余ったおつりは分けてもいいし。でも現金が良ければそれでもかまわないよ。アンネも姉さんもどっちでも構わないでしょ?」
俺が家族の二人に聞くと、二人とも笑って頷いた。
このどちらも金で困ってないもんな。
ロッティーは教授業でかなり貰っているらしいし、アンネは冒険者業のころに、幸運の女神としてドロップ出しまくっていたから。
え?いつそんなドロップが出たのかって?
アンネが仕留めて黒焦げになったローチがいたでしょ。
その片方に入っていたんだ。
さすが幸運の女神は違うよね。
魔石も黒焦げローチから二匹分きっちり回収。
だから俺とロッティーが採った二個の魔石と合わせて四個の魔石を教官に渡したってわけだ。
ちょうどいい目くらましになったね。
これからの言質にもなったし。
ありがたい話だ。
ロッティーのフォローもあったおかげで言質も堅固なものになった。
権威主義者には権威をぶつけるのが一番だな。
目に余るようになったら、ルミナ夫人のところへ、クッキーでも持ってお邪魔することにしよう。
学校のことをグスタフさんに直接言っても話を聞いてくれそうもないしね。
将を射んとする者はまず馬。
これよ。
「まあ、こいつは僕が預かっておくから、ゆっくり悩めばいいよ。多分、幸運の女神のお陰で悩む必要はないと思うけど。」
俺はそう言って、アンネをチラ見した。
当のアンネはのほほんと窓の外を見ている。
「本当にアンネちゃんは幸運なのね。」
多分俺たちのパーティーのことはあまり知らなかったのだろう、ロッティーがそんなことを言ってきた。
「金剛石が何個も出ちゃってね。母さんが領の予算に手を付けそうになって大変だったよ。」
大金貨数十枚を領の歳費、ヴァレンタイン家の預金にまで手を付けようと奔走して、父さんに止められていた。
父さんが折れちゃったこともあったけど、ドロップがあってもアリアンナにあまり見せるなって言われたっけ。
「母様、金剛石が大好きだものね。」
「姉さん知っていたの?」
それは知らなかったな。
でも同性同士の親子の会話ってやつもあるのだろう。
「ええ、まだヴァレンティアにいた頃にコレクションを見せてもらったわ。凄い財産でしょうね。まだ私も小さかったから、奇麗くらいにしか思わなかったけれど。」
ええ、それこそ大金貨がうん百枚になるんじゃないかな。
「セイナリアに、宝石のカットの名人がいるんだってさ。透明な金剛石に虹がいくつも浮かんで、心奪われたって言っていたなぁ。」
初めて金剛石をお土産に持って帰った時にそんなことを言っていたのを思い出す。
「流石上級貴族の奥様の趣味は違いますね。私は見たこともありません。」
マヤが目を丸くして言ってきた。
「じきに見られるかもしれないよ。いや、見られるといいね。」
俺がそう言うと、
「はい!虫でもなんでもぶっ殺しますね。」
マヤはそう息巻いた。
「頼もしいね。」
「ええそうね。」
俺とロッティーが笑う。
夕日のきれいな帰り道だった。
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本作は長編となっています。
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