571.アベル君と教授。
571.アベル君と教授。
うぉーん!と大声で泣いている大男を横目に、さて、どう進めようかと思案をしていたら、
「アベル!何をやっているんです!?」
ロッティーがうちの教官を伴いやって来た。
見た目、二十歳そこそこのロッティーの方が、中年の教官より威厳がありそうなんだがどういうこと?
役職、責任によって備わるものがやはりあるのだなぁ。
学生たちに個人修練させといて、サボっている教官とロッティーは責任も、意気込みも違うのかも知れない。
「教授!アベル様は何も悪いことはなさっては居ません。ヴィクター君がいちいちアベル様に突っかかって来て、アベル様の魔法を見たら泣いちゃったんです。」
アンネがいち早く俺の擁護をしてくれた。
前世は庇ってくれる人なんて一人もいなかったな。
恵まれてる!
本当に今は恵まれていると感謝しながら生きなければ駄目だよ、アベル君!
つい、感慨に耽ってしまい俺は涙ぐんだ。
それを見たロッティーが、
「どうしたの!?アベル!ヴィクター君がそんなに鬱陶しかったの?それなら彼を今すぐ退学にしましょう。私も鬱陶しいもの。」
またブラコンの過剰反応が出てしまったか。
「姉さん、大丈夫。ただアンネの反応が嬉しかっただけさ。いい嫁になるよね。」
「「え!?アベル!」様!!」
ロッティーとアンネがそれぞれ反応する。
「ん?深い意味はないよ。そのままの意味だ。で、何か用?姉さん。」
「何か用ではないわ。ファイアーボールの連射はする、傍らでヴィクター君は大泣きしている。見に来るに決まっているじゃない。アベルが心配だもの。ヴィクター君と決闘でもするの?」
ロッティー、飛躍しすぎ。
「ん?決闘か?ならば私が取り仕切りますぞ。」
そう言って教官が張り切りだした。
「いいえ、決闘なんてしませんよ。彼は僕が剣も魔法も出来て、ファイアーボールの連射が出来るって言って泣いたんです。ショックだったのかも知れませんね。」
俺がそう言うと、
「ヴィクター君、何ですか情けない。アベルが特別なのは仕方ないのです。私の弟は至宝なのですよ。どこの馬の骨とも分からぬ、田舎魔法使いとは違うのです。あら、ヴィクター君のことではありませんからね。」
ロッティーは大男を更に刺しに行った。
「私は田舎者ではない!」
うずくまり顔を覆って泣いていた大男が、起き上がり叫んだ。
「あら、そうでしたね。中部出身でしたね。中部だけど西の大森林寄りの小さな男爵家。」
姉の追撃の手が緩まない件について。
「姉さん、流石に地域差別はいけない。」
さすがに止めようと俺は口を挟んだ。
「そうね。セイナリアのある中部は田舎じゃないものね。」
ロッティーはこともなげに言うが、そこじゃない。
「いや、ここに西部出身者がいるからさ。あまり地域のことを口に出しちゃダメだよ。」
「アベルは誰にでも優しいのね。姉として誇りに思うわ。でも敵対したなら徹底してやらなくてはダメ。母様にも言われていたでしょう?」
初めての国王謁見の帰り道の馬車で、そんな話したっけな。
「そりゃ言っていたけどね。けど、いちいち叩き潰してちゃらんないよ。面倒くさい。」
敵は増えるわ、火消しはしなきゃならんわ、結構大変なんだよね。
「もう、すぐアベルは出来る力があるのに面倒がるんだから。」
ロッティーはふくれっ面でそう言った。
そこへ、アンネが口を挟む。
「アベル様は優しい人ですからね。」
「そうね、アンネローゼさん。流石に良く分かっているわ。」
おや、呼び方が変わったな。
「アンネちゃんじゃないんだね。」
「一応授業の一環ですからね。公私は分けないと。」
さっきから分かれとらんがな。
「それより、ヴィクター君。あなたはアベルの邪魔がしたいの?ダンジョンで経験を積みたいの?どっち?」
「アンネローゼ君と一緒に居たい。」
一瞬その場がまぶしく光り、ドゴン!!!と音と共に大男の目の前に雷が落ち、周りにいた人たちの目が丸くなった。
お転婆魔法使い直伝の雷魔法が落ちたのだった。
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本作は長編となっています。
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