569.アベル君と恋敵。
569.アベル君と恋敵。
「アンネ、もういいよ。ありがとう。」
俺はそう言って激おこのアンネを制した。
「でも、アベル様。」
アンネは不満そうだが、いちいち怒ってばかりじゃ進まないからさ。
「僕のことは気に入らないのはいいんだけど、はやいところ自己紹介してくれない?それやったら若干の打ち合わせの後、解散するからさ。」
俺は大男を見上げ、そう言った。
「偉そうに!アンネローゼ君が庇ってくれたからって強気に出るんじゃない!」
なおも大男はおこのようだ。
「アンネに懸想しているのはわかったから、早くしてよ。面倒くさい男だな。」
俺はつい、本音を言ってしまった。
「なんだと!!け、懸想だと!私が!アンネローゼ君に!?」
え?自分の気持ちに気が付いてないとか言わないよね。
「違うの?じゃ、なに?」
俺は素直な気持ちを聞いてみた。
「い、いや、け、懸想とか、そんなんじゃなく、尊敬とか、憧れ!そう!憧れの気持ちに近いのかも知れないな!」
などと大男が宣うので、
「じゃ、僕とアンネが結婚しようがベッドで何しようが構わないわけだ。」
「そんなことは言ってない!!」
俺が言ったことは力強く全否定されてしまった。
「そうか。でも僕はいずれアンネと結婚するよ?」
「ぐぬぬぬぬ」
俺の言葉に大男は歯を食いしばる。
リアルでぐぬぬしている人間を初めて見たな。
「アベル様、遊んでいるんですか?」
マヤが屈託のない笑顔で俺にそう言った。
「いや、遊んでないが?」
俺はマヤの問いに答えた。
「そうは見えないですけど。おっきい人だけじゃなく、そこでアンネ様が悶えてますよ。」
マヤはそう言ってアンネを指さした。
「は!?いえ、悶えていたとか、そんなことは…」
指を指されて、気が付いたアンネがそう言い訳をし始めた。
「そもそもアベル様が悪いんですよ!結婚とかベッドとか言うから!」
アンネは恥ずかし気に顔を手で覆った。
「そうだ!貴様が悪い!貴様、アンネローゼ君を貶めたな!!」
俺の二人称は貴様になったか。
お前だったり、坊主だったり忙しいことだ。
「違うよヴィクター君。私は嬉しいんだ。やっとアベル様と一つになれる。」
「まだならんぞ。」
俺はアンネの危険球を即座に処理する。
「ひ、一つとは?」
ヴィクターがアンネに問うた。
処理しきれなかったか。
「厭だな!ヴィクター君!そんなことを女の私の口からは言えないよ!キャ!恥ずかしい!!」
そう言って、再びアンネは顔を手で覆う。
恥ずかしいなら言うなよ、とは言うまい。
まあ、あと三年は待たなければならんからな。
一人で慰めて貰って、じゃないな。
「先に進まないね。」
俺はポロッと呟いた。
「むしろ進めていないのはアベル様では?」
さっきまで静かに一人たたずんでいたニックが、おかしそうな笑顔で俺に言った。
「そうかな?俺は問題を処理していただけだが。」
ニックの問いに俺が答えると、
「とてもそうは見えなかったので。」
さらに可笑しそうにニックが言った。
そうか。
ズレた人間を目の前に置いていると、俺自身もズレてしまうのかも知れない。
それに気が付かなくなるのは危険の兆候だな。
まあ、俺の周りにズレた人間ばかりなのが悪いのだ。(他責)
ロッティーとか、アンネとか、カミラとか、王族連中とか、etc、etc。
数えれば枚挙に暇がなくなるのだよ。
ね、大変でしょう?
で、比較的まともなローズが俺の安寧の地となるわけだ。
ほら、腑に落ちた。
「彼から自己紹介を先にしてもらおうと思ったけど、なかなか難しいようだから、ニック先してもらうかな。」
俺は絡んできたニックにバトンを渡した。
「え!いきなり!まあ、仕方ないですね。」
不満を一つ漏らし、コホン、そう一つ咳払いをすると、ニックはさらに続けた。
「西部、大森林からやってきたニックです。よろしくお願いします。」
そう言って、簡単に挨拶を済ませたニックは、ペコリとお辞儀をして、次お前だろって顔をしながらマヤを見つめた。
確かに次はマヤだな。
俺とニックに見つめられ、マヤはいきなりドギマギし始めた。
「厭だ、男の人達にこんなに見つめられると恥ずかしい。」
などと頓珍漢なことを言い始めるマヤ。
「馬鹿を言っていないで早く自己紹介を始めろよ、マヤ。」
そう言ってニックはマヤをせっついた。
こう見るとニックはマヤに気やすいな。
まあ、特別なことが無い限り、市井出身者が貴族子弟に絡むことはまずないからな。
フランカは騎士学団の幹部だから別だけどね。
市井出身者同士が気やすいのは普通なのだろう。
途端、マヤは目を煌めかせ、
「はい!」
と言って、手を上げるのだった。
自己紹介だけで二話以上消化するとは思わなかったよ。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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作者がんばれ!
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