569.アベル君と大男。
569.アベル君と大男。
「あああああ、アンネローゼ君じゃないか!!!!」
大男がいきなり大声でアンネの名を呼んだ。
「ヴィクター君。ちょっと五月蠅いよ。」
アンネが思いきりヴィクターと呼んだ大男を邪険に扱う。
「アンネ、知り合いか?」
「アンネローゼ君をアンネと愛称で呼ぶ君こそ誰だね?羨ましい。」
大男は俺がアンネローゼをアンネと呼ぶのが羨ましいらしい。
なるほどね。
「アンネ、モテるな、お前。」
「やめて下さい。私はアベル様だけにモテたいんです!」
アンネはムキになって俺に言い寄ってくる。
まあ、どうでもいいんだけどさ。
とりあえず、自己紹介からだが、ニックたちのところに行ってからかな。
そう思い、彼らのいる場所まで、俺は歩き出した。
そして、アンネと大男に、
「とりあえず、残してきたパーティーメンバーの所へ移動しよう。そこで改めて自己紹介かな。」
俺がそう言うと、
「君はいったい何者なんだい?アンネローゼ君と親し気に。まさか、許嫁とかではあるまい。まあ、そうであっても、アンネローゼ君は僕のもとに来る運命だがね。」
と、夢見がちなことを大男は言った。
「ヴィクター君!君は馬鹿かな!君の所になんて行かないよ。私は、このアベル様の側室に内定しているんだ。だから何度も諦めろと言っただろ!?」
「なんだと!アンネローゼ君を側室!!正室ではなく側室!!しかも内定だと!君はまさかアンネローゼ君に手を出したりしてないよね!?」
大男はスタスタ歩いている俺の身体にデカい体を寄せて聞いてきた。
「僕自身、処女性への神格化とかしない人間だけど、一応貴族の家に生まれているからね。けじめくらいはちゃんとわかっているつもりだよ。」
俺は興味なさげに言うと、
「だから、私はいつでもいいですよ。」
などと俺の隣で歩くアンネが言ってきた。
「アンネお前、マリアさんが聞いたら泣くぞ。」
「アンネローゼ君に向かってお前とは何事!!しかも、アンネローゼ君!この男にいつでもいいってどういうことです!?」
アンネへの俺の注意に被せる様に、大男がまた怒鳴った。
「私はもう身も心もアベル様に捧げているのです。いつでも私という果実を召し上がっていただきたいほどに。それよりヴィクター君、いちいち反応しないで下さい。うるさいって言っているでしょう?」
そんなことを言いながら歩いているうちに、ニックとマヤの所に到着した。
「アベル様。どこに行っても騒がしいですね。」
ついて早々、マヤに酷いことを言われるわけだ。
俺は黙っていただけなのに。
「あ!アンネローゼ様。このパーティーに決まったんですね!よろしくお願いします。」
そう挨拶をするマヤに、
「マヤさん、アンネでいいですよ。よろしくお願いしますね。」
アンネはそう言うと、またマヤの頭をなでる。
猫か。
確かにマヤは猫っぽい。
獣人の血が入っているのかも知れないね。
わかんないけど。
「とりあえずパーティーメンバーが決まったので自己紹介しようか。」
俺はそう言って、ほかの四人を見まわした。
「はーい!」
マヤは元気に返事をし、ニックはにこやかに頷き、アンネは俺の顔を見つめ、大男は訝しげに俺を睨んだ。
「なら、僕から。僕を知らないのは君だけだな。」
俺はそう言って大男を見上げた。
「アベル・ヴァレンタイン辺境伯嫡男だ。君の身近なところでいえば、シャーロット・ヴァレンタインの弟にあたる。よろしく頼む。ついでに言えば、アンネは僕の乳兄弟だ。アンネの母であるマリアさんのことを本当の母と同等だと思っている。それから、さっきアンネが言ったのは本当だ。まだ正式ではないが僕の婚約者にあたる。」
「それは本当か北の坊主!!アンネローゼ君を所有物のように!!姉が姉なら、弟も生意気に!」
あれ?こいつ南の貴族関係?
またババ引いちゃったなぁ。
「ヴィクター君!君は誰にモノを申しているのかな?ふざけるなよ!アベル様に謝りなさい!」
アンネが烈火のごとく怒り始めた。
こんなアンネは初めて見たな。
「アンネローゼ君!なぜそこまで怒るのです!こんな小僧など、私ならちょっと魔力を籠めれば!」
「そうやって、シャーロット様にもやりこまれたんじゃないか!みっともない!シャーロット様は私が魔法を習う切っ掛けをくれた恩人であり、姉と慕っていた人物だ!ヴァレンタインの御姉弟を貶めたら、今度は私が許さないからな!!」
いやだ、アンネったらカッコいい。
トゥンクしそうになったじゃないか。
そんなことを思う、自己紹介だった。
いや、まだ始まってもいなかった。
読んでいただき、有難うございます。
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