568.アベル君と魔法使いたち。
568.アベル君と魔法使いたち。
「なんだかアベル様の周りは、個性的な女性ばかりですね。」
フランカが何を思ったか知らないが、そんなことを呟いた。
「君も含めてか?フランカ。」
俺がそう言うと、
「私は無個性の方だと思いますけど。」
ちょっぴり頬を膨らまして、フランカが抗議してきた。
「女性は皆個性的だよ。陰に隠れているような女性も、それはそれで個性だろ?」
「それはそうですけど。」
俺の答えにフランカは渋々頷いた。
「まあ、でもアベルの姉を含めて、あれだけあけすけなのも珍しいだろ。自分たちの欲望に忠実だ。」
欲望ねぇ。
確かにそれは間違いじゃない。
「人というものは欲望を持たないと努力できないからな。恋愛にも努力が必要だろ?相手に認めてもらうために、どのような努力が必要かは人それぞれだろうけど。武道大会でカッコいいところを見せたりな。なあ、パオロ君。」
俺はパオロをジロリと見つめて言った。
ちょっと厭らしい笑い方になっていたかもしれない。
「俺は勝つために努力しただけだ!よこしまな気持ちなどあるものか!」
「だってさ、フランカ君。」
「なんで私なんですか!」
「え?フランカとパオロ様ってそういう関係だったんですか!?」
放心していた筈のマヤが即座に食いついた。
「マヤは気が付かなかったのか。僕は分かっていたよ。」
ニックは爽やかな笑顔を浮かべて、マヤに言った。
「知っていたとか、なにを言っているんだっ!!」
と、パオロが盛大にキレる横で、フランカは俯き顔を伏せていた。
チラッと、頬だけが見えた。
赤いな。
そっとしておこう。
「傾注!!」
パオロが騒いでいたら、教官の号令が掛かる。
「これより各班に二名の魔法大学の学生さんが入る。そのメンツがこの度入るダンジョンのパーティーとなる。即席パーティーであるが、油断すると命に係わることを肝に銘じ、交流と、パーティーの役割をちゃんと話しておけよ。わからんことは、アベル・ヴァレンタインに聞け。プロだからな。」
丸投げにされたわけだが。
「では、班の代表はこちらに来い!」
と、教官が言ったので、俺は黙ってニックを見た。
しかしニックは俺を見ている。
え?何?
頭を巡らすと、マヤも俺を見ていた。
え?代表って、俺?
ニックじゃないの?
『アベル、行くぞ。』
そう言って、パオロに手を掴まれ教官の立っている方面に引きずられて向かった。
ニックとマヤは並んで笑顔で手を振っていた。
あいつら、虫が襲ってきても助けんからな。
さて、どういう割り振りになるんだろうね。
使える魔法使いならいいんだけど。
治療魔法も使えればなお良し。
難しいかな。
カミラかアンネが来るのが一番いい。
二人ともダンジョン経験者だから、俺は楽が出来るからね。
生命の危機にも対応可能になる。
よしんば、死んだとて蘇生が可能なのはデカい。
誤魔化しが必要だけどさ。
などをパオロに引きずられながら考えていた。
程なくして教官のもとに到着した。
「これから貴様らにくじを引いてもらう。引いたくじには番号が書いてある。もう一方で、学生さん達にも別のくじを引いてもらう。そこにも番号が書いてあるので、同じ番号の代表者の方へ学生さんは行くように。」
「パオロ、アベル、順番に引いて行け。フランカも。レオは?何?寝てる!?叩き起こして連れて来い!!」
教官の方が浮足立っているな。
パオロが先にくじを引き、次に俺がくじを引いた。
三か。
「私、三番です。」
聞き覚えのある声が三番と言った。
俺は手を上げて、番号を叫ぶ。
「三番こっちでーす!」
「キャ!アベル様だ!!」
「なんだ、アンネか。」
「なんだはないじゃないですか。」
アンネは不満げに口を尖らす。
「いや、嬉しいよ。アンネがいるだけで僕は楽が出来るから。」
「もう!」
そう言って、アンネは俺の肩をポカポカと叩いた。
「馬鹿、痛いって。」
そんなじゃれ合いをしていたら、頭上から野太い声が降りてきた。
「私も三番なのだが、代表者は君かね。」
とても魔法使いに似つかわしくない、巨体のいかつい顔が俺を見下ろしているのだった。
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本作は長編となっています。
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