567.アベル君と神のパーティー。
567.アベル君と神のパーティー。
「嫌です!カミラ様の意地悪!!私はアベル様のところに入ります!」
聖女が神に逆らうという、珍しい展開が目の前で繰り広げられていた。
まあ、こいつなら逆らったところで屁でもないがね。
「アベル!聞こえてるわよ!」
黙ったままの俺に、カミラが嚙みつく。
「?」
周りのみんなが何事って顔で俺とカミラを見る。
相変わらず周りを見ない奴だ。
「紹介するよ。あの内務大臣閣下、ヴィルヘルム・ド・カレッド伯爵のご令嬢でいらっしゃる、カミラ・ド・カレッド嬢だ。」
俺はやや慇懃に皆にカミラを紹介した。
すると、今まで騒いでいた連中が、急速冷凍で凍らせたように固まったではないか。
「あら、そんな大仰な紹介の仕方をしなくてもいいのに。私はカミラ・ド・カレッドです。令嬢なんてアベルは言ったけれど、私は所詮庶子だから、皆さん、そんな身構えなくてもよろしくてよ。どうぞ、よしなに。」
そう言ってカミラは周りにいた皆にカーテシーであいさつをした。
「よろしくおねがいします!」
そう元気に言ったのはもちろんマヤだ。
「あら、元気でかわいいわね。アベルのお手付き?」
などとカミラはとんでもないことを言った。
「おて、おて、おてつ…」
静かに呟きながら、元気っ子のマヤの目のハイライトが消えていく。
「いやいやいや、それはないから。」
俺はその場で否定した。
「そうよね、アベルだって生殖の権化じゃないものね。それなら私もアンネも無事で済まないもの。」
また、カミラは酷い物言いをした。
「私はいつでも構いませんよ?」
アンネが小首をかしげて当たり前のことを言うように俺に言ってきた。
「アベル、お前の周りの女性は、皆こんなにあけすけなのか?」
パオロが額に汗を浮かべて俺に聞いて来た。
なんでお前が緊張してんだよ、パオロよ。
「皆ではないが、比較的女性が多い中で僕は育ったから気にしたことが無いな。そんなにあけすけな会話かな?」
俺はとりあえずとぼけた。
「かなりあけすけと言っていいです。お二人とも嫁入り前なら直した方がよろしいかと。」
フランカが、俺の耳元で静かに教えてくれた。
「うん、そうか。でも、こいつらはもう俺のところに輿入れする気満々だから直さないと思うんだ。フランカ、心配してくれてありがとう。」
俺はそう言ってフランカに礼を言う。
「「「二人とも輿入れ!?」」」
パオロとフランカ、それとニックまでもが驚いた。
「本決まりじゃないけどね。オリビィが正室に納まったら、二人とも家で引き取ることになる。カレッド伯爵は反対しているけどね。」
「「「はあ?」」」
俺の説明を三人は呆れた声を出して聞いていた。
まあ、この二人を引き取るのは理由がある。
さんざん言っているから、もうここでは言わないけどね。
『神と聖女を側室にするなんて、アベルくらいなものでしょうね。』
俺の頭の中で、カミラが呟いた。
脳内会話の始まりである。
しゃーないし。
お前はどうしても俺の子が欲しいんだろう?
『そうね。何故だか分からないけど、欲しいのよね。子供なんて欲しいと思ったことはうん千年存在していて初めてだわ。』
『そうなんですか?ただ単にカミラ様はアベル様が好きだからだと思ってました』
カミラの後に、アンネが呟いた。
『そんなわけないじゃないの。あ、でもやりたいくらいには好きかも。』
なんだよ、やりたいくらいにはって。
もっと恥じらいを知りなさい。
『あんたに恥じらったって仕方ないじゃないね、アンネもそう思うでしょ?』
『今以上恥じらったら、アベル様は私に手を出して下さらないんじゃ?』
そういうことを言ってんじゃない。
一般論を言っているんだ!
『わかったわよ。喚かないで。』
『で、パーティー編成はどうするんですか?』
姉さんはうちの教官に丸投げしたんだろ?
なら教官の所へ行って聞いて来い。
カレッド伯爵令嬢だって言えば、懇切丁寧に教えてくれるさ。教師なんてみんな権威主義者だから。
俺が脳内でそう言うと、
「では、こちらの教官にどういう割り当てにするか聞いてきます。皆様、失礼いたしました。」
カミラとアンネは二人で皆にお辞儀をし、教官の方へ歩いて行ったのだった。
パーティー編成は決まらなかったよ。
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