565.アベル君と学生同士。
565.アベル君と学生同士。
ダンジョンへ入る前に班編成があった。
教官に言われたとおり、俺、パオロ、レオ、フランカは別々の班に割り振られることになった。
「よう!ニック、今回はよろしくな。」
奇しくもこのダンジョンの班で一緒になるニックに挨拶をした。
「ああ、アベル様が一緒の班ですか。D級冒険者が一緒なら、これはラッキーですね。」
そう言いながら、ニックは笑っていた。
「授業の一環だからな。ラッキーとかないから。」
俺が苦笑いしながら、ニックと握手をした。
俺の班にはニックともう一人、マヤという名の女の子が入ることになった。
百五十センチに届くか届かないか。
そんな体格で、丸い顔の表情がコロコロ変わる、市井出身の娘である。
実は魔法サークル出身者で、三割の壁を見事突破し、現在はちゃんと身体強化も出来るようになった。
剣の腕は並かな。
でもちゃんとこの学校に入ってくる実力はあるから、舐めては掛かれない。
「キャー!アベル様と一緒だぁ!楽勝じゃないですか!」
はしゃぎながらマヤが言ってきた。
お前もか!
「楽勝とかないからな。まあ、よろしく頼むよ。」
俺はそう言ってマヤに右手を差し出した。
マヤはその右手を両手でつかんでブンブン振りながら、
「はい!アベル様!ニックもよろしくね!今も頑張ってんでしょう?偉いわね。」
そうニックに言った。
「そんなんで偉くはなりたくないんだけどね。マヤの様になりたいよ。」
ニックは、ちょっと苦虫をかみつぶした顔をしたが、最後には笑っていた。
マヤの雰囲気の所為だろうな。
そんなことをしていると、修練場に様々な格好をした集団が入って来た。
一応言っておくと、俺たちは決まった修練用の修練着というものを着ている。
そこへチュニックやローブらを着た集団が入って来たわけだ。
魔法大学校の生徒たちだ。
見た顔が三人いる。
あいつらもなのか。
「魔法大学校の方々がいらっしゃった。貴様ら!粗相のないように!!いいな!!」
教官が大きな声で怒鳴った。
その教官を挟んだ奥で、手を振りながら
「アベルー!」
と叫んでいるうつけ者がいた。
カミラである。
相変わらずの自由人ぷりを発揮しているが、これも見た顔に叱られていた。
「カミラさん、自重しなさい。」
そうカミラを嗜めたのは、誰であろうロッティーである。
「アベル様、手を振っていたあの子はどなたです?親しいんですか?」
俺の隣にいたマヤがちょっとイヤらしい顔で聞いてきた。
「かかわらない方がいいぞ。内務大臣閣下のご令嬢だ。」
俺がそう言うと、マヤは短く、
「ひっ!」
と、悲鳴を上げ、なぜか俺の後ろに隠れた。
市井の者にとっては内務大臣なんて、おとぎ話の閻魔様みたいなもんだからな。
そりゃ怖いわ。
まあ、ほとんどの貴族もかかわることはないんだけど。
なんで俺知り合いなんだろう?
「この度はよろしくお願いします、ヴァレンタイン教授。」
などと、緊張しながらロッティーに挨拶をしている教官の姿が見えた。
「こちらこそ、生徒たちに貴重な体験の場を設けて頂いて、感謝しております。校長のグスタフ閣下によしなに。」
ロッティーはそう言って優雅にカーテシーをした。
猫をかぶっていらっしゃる。
いや、社会人として当然か。
ロッティーも大人になったものだ。
「アベル。」
おもむろにロッティーが俺を呼んだ。
「はい。」
俺は短く返事をして、ロッティーのもとへ早歩きで近づく。
その間、周りがざわつくのが分かった。
「アベル様のお姉さま?」
「本当にお綺麗な方ね。」
「ヴァレンティアの至宝の片方か。」
「いいなぁアベル。あんな姉ちゃん、俺も欲しいよ。」
もう言いたい放題だね。
俺がロッティーのそばで立ち止まると、いきなり、
「会いたかったわ!」
そう言ってロッティーは俺に抱き着いたのだった。
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本作は長編となっています。
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