563.アベル君と学校のダンジョン。
563.アベル君と学校のダンジョン。
オスカーが、吹っ切れた顔をして俺の部屋を出て行った。
オリビィにセフレか恋人かと詰められた恥ずかしさも忘れて。
その話だったはずだったのにね。
もっと重い話になってしまった。
その後、オスカーは思い出して俺の教室までクレームを言いに来たが、そんな寝たいだけの関係にいたお前悪いの一言で終わった。
トボトボと帰るオスカーの後姿を見たクラスメイト達が、ざわついていたが無視を決め込んだ。
だって説明するの面倒でしょ?
王家の兄妹喧嘩の内容が、お兄ちゃんのセフレ問題とかさ。
で、オスカーが帰った後、入れ違いで教官が入ってきた。
「王太子殿下は誰かに何か御用だったのか?」
などと聞いてきたので、
「僕に御兄妹のことで相談がありまして。お陰様で解決して帰っていきました。」
「あの悔しそうな顔でか?まあ、いいか。」
そう言って教官は持ってきた小冊子を生徒たちに配り始めた。
「来週から学校所有のダンジョンへパーティーを作って入る。これは魔法大学校の生徒とのパーティーとなる。貴様ら、魔法大学の生徒さんたちの前では行儀よくしろよ。ナンパなぞ許さないからな。」
そう言って、教官は生徒たちの顔を見まわしてから、
「アベル・ヴァレンタイン、貴様の領の騎士団ではダンジョンでの訓練があるそうだな?」
そう俺に聞いてきた。
「はい、ノヴァリス国軍の駐屯部隊とパーティーを組んで深紅の大穴へ訓練で入っていますね。」
俺がそう言うと、
「貴様は一緒に入ったことはないのか?」
教官は不思議そうに聞いてきた。
「僕は一冒険者として個別パーティーを持っていましたので。」
「はん!そうか。ではダンジョンで訓練する意義を言ってみろ。」
俺の答えが生意気そうに聞こえたのか、さらに質問を重ねる教官。
「実戦経験が積めることです。」
「うむ、もっと詳しく言ってみろ。」
一回うなずいて、更に言えという。
自分で説明しろよ、教官だろ?
などと言っても学校とはそういうところだからなぁ。
こればかりは、前世も今も変わりない。
先生とは理不尽が人の姿をしているのだ。
「ざっくり言えば、相手を殲滅することが出来、こちらも殲滅させられる危険をはらんだ訓練が出来ます。生きた人間相手に剣や魔法は振るえませんが、ダンジョン内の魔物なら別ですから。あと、」
俺がここまで言ったら、教官が口を開けた。
「そうだ、あ、続きがあるならいいぞ。」
教官の許しが出たので、俺は続ける。
「ゴブリンのような人型の魔物と実戦も積めます。するといずれ有るかもしれない対人戦であっても、禁忌が薄れます。まあ慣れるってことですね。」
俺がそこまで言うと、教官はふん、と鼻を鳴らしてから、
「流石、D級冒険者で、ダンジョンで稼いでいる領の嫡男だ。この訓練の本質を掴んでいるな。」
珍しく褒められた。
この学校に入って誉められたのは初めてじゃないか?
「で、貴様は実戦経験があるのか?」
と、教官が踏み込んで聞いてきた。
「人ですか?魔物ですか?」
一応俺は聞いてみた。
「冒険者なら魔物はあってしかるべきであろう?勿論人だ。」
まあ、そうよね。
「あります。初戦は五歳のころ。魔法で相手をやりました。」
「うむ、魔法はそのころから使えていたのか。流石お転婆魔法使いの薫陶よろしくといったところなのだろうな。どのような相手だった?」
「そのころ僕が五歳になって旅ができるようになったので、セイナリアへ母の里帰りで来る途中に騎馬による大規模な盗賊に襲われました。その時に何人かを仕留めました。頭が真っ白になって、気分が悪くなったのを覚えています。」
実際には十数名を俺一人の連射ファイアーボールで無力化した。
即死した盗賊は何人かいたのかもしれないが、多くは重度の火傷を負ったり、落馬したりして怪我をした者たちだ。
重度の火傷を負っている盗賊たちに、水を生成して掛けてやってみたが、それ自体やっていることが偽善だと自分で気が付いて、気分が悪くなったよ。
その盗賊たちは治療もされないまま、近隣の街に引き渡された。
その後どうなったのか知らないが、あのままならほぼ生きていまい。
父さんは、その後の俺のメンタルのケアに必死だった。
お前は悪くない、考えてはいけないってずっと俺に話していたな。
俺を戦闘に駆り出したおかげで、俺が三歳の時に殺された時の深いトラウマを負っていた母さんと夫婦喧嘩していたし。
あの数日は家族の雰囲気が散々だった。
教官に話しながら、十年以上前のことを思い出すのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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