560.アベル君と家族の事情。
560.アベル君と家族の事情。
え?今?
寄宿舎の部屋だよ。
セイナリア城から帰って来たのさ。
城の豪華な馬車に乗ってね。
もう乗りなれた馬車だけどさ。
で、今は寄宿舎の部屋で、のんびりローズの膝枕の上に頭を乗っけてるってわけ。
安らぐよね。
あの狸と狐の前に居るよりは全然。
実は帰りの馬車の中も大変だった。
オリビィと一緒だったからね。
隙あらば抱きつかんとオリビィは虎視眈々と狙っていたが、オリビィお付きの執事さんが一緒だったからね。
さすがに抱きつけなかったようだ。
そう、俺の貞操は守られたのさ。
そんなモンは一年以上前に、リラにくれちまったが。
「旦那様の部屋に参ります。」
オリビィは学校の寄宿舎に着くとさらにそんなことを言ってきた。
男のオスカーならいざ知らず、女子が、いや、一国の王女が婚姻前から婚約者の部屋に行くなどまかりならんと、俺と執事さんで説得し、ようやくオリビィを振り切り自室に来れたってわけだ。
そりゃもう落ち着くよ。
最愛の奥さんの膝枕の上だもの。
「それで、何かあったのですか?」
ローズは神妙な顔で聞いて来た。
「ん?なにもないよ。」
「何かあったのですね。」
「僕的には何もなかったんだけどな。オリビィと小説の打ち合わせをしていた時に、変な乱入者が現れたとか、両陛下、オリビィと四人で食事している時に、ライラ女史のことをオリビィにばらしたとか。オリビィに王妃陛下がキレ散らかしたとか。そんなんだけだよ。あ、ちょっと心配な事はあるかな。」
黙って俺の髪を撫でながら聞いていた、ローズが口を開く。
「やはり何かあったんじゃないですか。」
俺を諫める眼差しが天井方向から見ていた。
「ライラ女史とオスカーの関係をさ、セフレ以上、恋人未満てやんわり伝えたつもりだったんだけど、オリビィに通じたかなって。通じなくても、両親が教えればいいんだよな。うん、問題なかった。」
俺はそう言って、ローズの腰に腕を回しローズの下腹部に顔をうずめる。
「ローズ、心配かけるね。」
俺は顔を隠したまま、ローズに言った。
「アベル様の心配をするのが私の役目ですから。」
ローズはそう言って、髪を撫で続ける。
あとは、年齢制限の時空へと行くだけだから、そろそろおさらばだ。
バーン!という音と共に、部屋のドアが強く開かれ、
「アベル!!」
と、オスカーの切迫した声が部屋中に響いた。
やっぱラブコメかよ!!
「なんだよ、オスカー。」
俺は無礼な乱入者に一言いった。
「なんだよではないぞ!あ、ローズ、お邪魔する。」
慌てて入ってきたオスカーは、ローズを認めると、一言挨拶をした。
「いえ、王太子殿下、こんな格好で申し訳ございません。」
まあ、俺を膝枕中だしね。
「いや、こちらも急いて入ってきてしまった。申し訳ない。」
そうだよ、お前が悪い。
「それは僕に言う言葉じゃないの?」
だから、俺はオスカーにクレームを入れた。
「貴様はこの部屋の中ではおまけではないか。」
くっ、オスカーの癖に本質を突きやがる。
「ちぇっ。」
俺はちょっと拗ねた。
俺は仕方が無いから、安息の地から上半身を上げた。
くそ、身体が重いぜ。
「で、なに?」
「先程部屋にオリビィが参ってな。」
「うん。」
「ライラ女史とはどういう関係だと言って来たのだ。」
「へ?」
「セフレ以上恋人未満とはどういう関係か、私に聞いて来たのだ。」
「はあ、ははは。」
「はははではない!!貴様だろ!そのようなことをオリビィに吹聴したのは!」
「そうだよ。」
俺は一言だけオスカーに言い放つ。
「そうだよではない!なぜそのようなことを言う!!」
激高したオスカーは俺に詰め寄った。
「だってすぐバレるし。」
ボソリと俺が言った。
それに、オスカーは反応が追い付かなかった様に
「?」
を、頭に出した顔になっていた。
「すぐにバレるって言ってんだよ。それをオリビィが級友から聞き及ぶか、家族の間から聞くかの違いになる。オスカーお前、どちらが恥ずかしい?」
オスカーの長い夜が始まるのだった。
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本作は長編となっています。
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