557.アベル君と王家の食卓。
557.アベル君と王家の食卓。
邪魔が入ったので、すっかり遅くなってしまった。
それを見越してか王妃から連絡が入り、オリビィと一緒に夕食を食べて行けとのお達しが来た。
俺は、ローズが待っているから断ろうとしたが、すでに遅くなる旨を伝えに人を走らせたという。
相変わらず、囲い込みがうますぎる。
家臣の妾の心配までするとか、普通無いから。
でも俺ならその理由で帰ることをキチンと把握している。
侮れませんわ。
いや、はなから侮ってなどいないけどさ。
で、今は広い食堂に置かれたテーブルで、国王と王妃、そしてオリビィと食卓を囲んでいるのだ。
しかし、最近のこちらの料理は些か味が薄い。
王家の食卓なんだから、味濃いめの立派な料理が、バーン!と置かれるって感じを想像するかもしれないが、小分けに配膳された料理は、ギリギリの味の濃さだ。
この若い身体には物足りないが、精神的には素材の味が生かされて美味いと感じる。
何より身体に優しいしね。
「アベル、料理の味は如何?」
無心にカトラリーを使って口に食物を運ぶ俺に、王妃が問うてきた。
「僕的には普段から食べている料理に比べ味が薄いように感じますが、素材そのものの味が程よく出ていて、これはこれでとても美味しいです。これは、王妃陛下の采配なのですか?」
俺は無難に言葉を選ぶ。
「ええ、そうよ。わかってくれて嬉しいわ。最近陛下のねえ、分かるでしょ?」
などと、王妃は変な含みを持たせる。
国王までビックリしてこちらを見ているし。
分かんねぇよ!口で言え!
とは言えないので、
「なんとなくは。ヴァレンティアに帰り際の祖父が言っていました。陛下は運動不足であると。お腹を見ていたのかも知れません。」
「そう!そうなのです。やはりエドワード卿はよく見てらっしゃいますね。」
王妃はそう言って暗に国王の腹が出たことを肯定した。
家臣を使わず、直接言ってやれよ。
「余は運動不足のように見えるのか?」
国王はとぼけたように言った。
気が付いているんだろう?
「ええ、陛下は少々出てまいりました。」
王妃は国王に答えるが、どことは言わない。
「さようか。エドワード師匠は余がサボっていると見たのだろうなぁ。」
そう言って、遠い目をする国王。
てか、サボってたんだろ?
言わせんな、家臣に。
言わねぇけど。
「お父様は、確かにお腹周りが太ましくなっておいでですわね。」
オリビィがここで直球を投げ込む。
「オリビィ、陛下になんてことを言うのです?」
王妃はオリビィを窘めるが、振ったのはあなただ。
「お母さまから始めたことじゃないですか。」
オリビィ、容赦なし。
「しかし、それを気遣っての王妃陛下の采配によるこの料理なのでしょう?内助の功ですね、国王陛下。」
俺は一応フォローを入れる。
一応ね、拾う奴にあとは任せるよ。
「まったくそのとおりである。クラウディア、面倒を掛けるな。オリビアの指摘ももっともだ。素振りをサボるとこれだからな。」
そう言って、国王は自分の腹を自嘲的にさすった。
「まあ、太ましくなるといろいろ弱るとも言いますし。おっと失言。」
ついうっかり、場の雰囲気に促され軽口が出てしまった。
「旦那様?いろいろとは何のことです?」
突っ込んで欲しくないところを、オリビィはすかさず突っ込んで来た。
「なんのことだろうね。一般的に言われている事だから。両陛下ならご存じじゃないかな。」
この娘は面倒だから、ご両親に丸投げだ。
「アベルは何でも知っているのに、こういう時だけ知らない子供に戻るのね。」
「ああ、彼奴はとてもズルい奴だからな。オリビアも十分気を付けるように。」
両陛下が、俺に牙をむいてきた。
「滅相もございません。僕は何も知らない小僧でございますから。生きる勉強だけで精一杯でして。」
「「ほら!」」
国王と王妃は、綺麗なユニゾンを見せ、そして可笑しそうに笑うのだった。
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本作は長編となっています。
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