555.アベル君と設定変更。
555.アベル君と設定変更。
俺はセイナリア城に来ている。
やりたくない仕事にだ。
城と言っても、オリビィの私室。
とうとうこの時が来たのだ。
オリビィ著書の二巻目の制作っていうね。
もちろん部屋には二人きりじゃないよ。
オリビィお付きのメイドさんがバッチリ付いている。
まあ、付いていようがなかろうが、何もせんがね。
おっと、話が逸れた。
一巻目は思い出したくもないが、オスカーと俺の生物本。
BLってやつだ。
これがかなり受けた。
この国の中に少なからずいた腐女子たちの萌芽が花開くくらいに。
しかし、書かれたものは俺とオスカーのBL。
いつの間にか俺とオスカーがつるむだけで、城の中は色めき立ち、サロンで噂話に勤しむ貴婦人とその娘たち、いや、おつきのメイドたちまでもが、好奇の目で見てくるようになっていった。
それは城内だけではなく、騎士学校の女子生徒内でも噂になっていた。
うちの女性陣達に聞けば、魔法大学校の生徒たちも回し読みをしていたとのこと。
もう、書籍の内容はフィクションであると御触れを出した程度じゃ、さらにこの炎上に対し燃料を与えるだろうと判断。
俺とオリビィが婚約することで、オスカーはともかく、俺はストレートであると世に知らしめるという意味もあり、仕方なくオリビィと婚約。
こうやって書くと酷いな、オリビィ。
さすがにオスカーを放って置く訳にもいかないので、騎士学校にやってくる二人のお姫ズをネタに俺が監修の下、オスカーとお姫ズラブロマンスを書き上げるのが今回の目的。
「で、最初の骨子は、行き過ぎた友情の末、ゆがんだ関係を続けていた俺とオスカー、糞!気持ち悪い!!」
「ごめんなさい、旦那様。でもたまらない。」
オリビィは吐きそうな顔をしている俺を見ながら、上気した顔を見せる。
腐食が進んでやがる。
「う、うん、進めるぞ。」
俺は咳ばらいをしてからオリビィに言った。
「はい!旦那様。」
「しかし、お互い良くない関係であるのは分かっていた。そこでアベルは幼いころからアベルに秋波を送り続けていたオリビィの存在に気が付く。」
「はい!!」
「オリビィも、兄と想い人の関係を何とかしたいと思っていた。なんとか想い人の気持ちをこちらに向かせたい。」
「その通りです!相手はお兄様じゃありませんが。」
「お話の内容だよ?オリビィ。」
「わかっております。一緒に住まわれているローズさんが羨ましいとか言っておりません。」
「つづくぞ。」
俺は、オリビィの言葉を無視することにした。
「オリビィの献身的なサポートのお陰で、アベルはオスカーとの関係を正そうとしていく。」
「どのようなことを私はしたんでしょうか?」
「それはオリビィの創作をお願いしたいんだけど。」
「そうですわねぇ…」
「いや、とりあえず前段の骨子だけを決めてしまおう。」
「はい…」
「そしてアベルはオリビィの愛情に絆され、オリビィもアベルがこちらを向いてきてくれたことに、自分の中の愛情をさらに強く意識する。」
「ああ…」
ああて。
いや、今は進めよう。
「そしてふたりはオスカーという頸木を放たれ、二人の愛に目覚めて行き国王陛下にアベルは結婚の許しを請うべく進言。国王は幼いころからのオリビィの気持ちを知っていたため、快く承諾。晴れて婚約することとなる。」
「よろしいですわ。旦那様。今聞いただけでも胸がいっぱいで。」
さいですか。
俺たちの婚約は酷いもんだったからな。
「しかし、残されたオスカーの胸中は荒れた。愛情を持っていた親友を妹に寝取られた。そう感じていたオスカーの心は吹きすさむ雪嵐の中にあった。」
「ああ、かわいそうなお兄様。」
ああ!!もう!!
落ち着け、もうちょいだ、もうちょい。
「しかし、その気持ちを騎士学校と政務に励むことで、オスカーは自分を抑え込む。しかしその精神は疲弊し、ボロボロであった。そこに二名の美しい少女が現れる。隣国の姫、二人。彼女らがオスカーの心を癒していく。」
「報われてほしい。お兄様…」
じゃないだろ!
「てな感じでオリビィには書いてもらいたいんだが。」
「旦那様!流石です!!旦那様には創作の才能がおありなのですね!!」
「創作と聞いて!!」
バン!と部屋のドアが開け放たれ、そこにはアンダーリムのメガネをかけた美少女が立っていたのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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作者がんばれ!
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