552.アベル君と筋肉。
552.アベル君と筋肉。
今日は屋外修練場で剣の修練をするはずなんだが…
「素振りと型が終わったら、相手を見つけて掛かり稽古を始めろ!いいな!!」
教官はそう言うと、俺とパオロの方を向いてから、
「アベル!パオロ!レオ!貴様らはクラスの連中の面倒を見てやれ。では、はじめろ!」
教官はそう言って、校舎に引っ込んだ。
やる気あんのかね?ないんだろうな、あの給料泥棒め。
そんなことを考えていると、パオロが俺に話しかけてきた。
「アベル、手分けしようぜ。」
一年生の途中からこんな感じだったからか、パオロは慣れ切っているようだ。
おバカちゃんめ。
本来、我々生徒が教官を糾弾しなきゃならんだろう?
いや、面倒だからグスタフさんにチクろうか。
「パオロ君は、フランカを中心に見てくれていいよ。フフフ。」
俺がそう言うと、
「なぜフランカの名前が出てくるのだ?」
この朴念仁はこんなことを言いやがる。
なので俺は、
「嫌なら別に構わんが。」
と、一回煽る。
「む!?どういう意味だ?」
そのあおりに乗ったパオロは、感情を顔に出した。
「僕がフランカを手取り足取り、ってことさ。」
「そうか、アベルがしたいならいいぞ。」
「え!?いいの?」
「ああ構わん。俺よりアベルのスタイルの方がフランカに合っている。俺のように、力で段平振り回す戦闘スタイルとは違うからな。」
「まあ、そうだね。」
言われてみればそりゃそうだ。
しかし同じ十六歳で、この身長と筋力差は何なんだろうな。
俺の身長はやっと人並みに伸び始め、百六十センチに届いたかどうか、片やパオロは百九十センチ近いだろう。
いや、超しているのかも知れない。
明らかに父さんより上だもんな。
で、腕や脚の筋肉だ。
どう鍛え上げたら、こう育つのか?
遺伝子操作されているに違いない。
腿周りなんて、ちょっと細い女性のウエストサイズだ。
つまり、六十センチを超えているってこと。
「パオロ、お前、どうやったらそんな身体つきになるんだよ。」
思わず俺は聞いてみた。
「良く食って、良く寝ることだな。そして良く振ることだ。」
そう言ってパオロはデカいロングソードを振り回す。
「アベルこそ、なんでそんなチッコイんだよ?細いし。女子並みじゃねーか。」
「僕の場合、パオロのようなおっさんと違って成長期だからな。これからよ、これから。」
「ふん!触れば折れるような腕しやがって。」
などとパオロ君は挑発してきた。
「なんだ?パオロ。俺とやりたいのか?」
俺がそう言うと、周りで素振りをしていた連中が集まってきた。
「いいが何をするんだ?これでやんのか?」
そう言って、ロングソードを振り回す。
武道大会で優勝して、ちょっと天狗なってんじゃね?
「教官もいないし、生徒だけの模擬戦は流石にヤバいだろ。腕相撲でどうだ?」
「おう!いいが、いいのか?」
パオロは言葉の反復横跳びをやってのけた。
そこへ、
「アベル様!パオロ様も!授業中ですよ!」
そう言って他の生徒をかき分け、フランカが仲裁してくる。
「すぐ済むから大丈夫だよ、フランカ。」
俺が言うと、続けて、
「アベルの腕は折れるかもしれないがな。」
と、パオロが言った。
「もう!レオ様も止めて下さい!」
興味なさげに修練場の脇で寝ころんでいたレオに、フランカは仲裁しろと言う。
「剣の戦いではないのだろう?つまらん。興味ない。」
そう言って、レオは寝返りを打ち、そっぽを向いた。
そんなこんなしていたら、悪乗りした連中が、どこから樽を持ってきてセッティングした。
「ニックも止めて!」
なおもフランカは止めようと躍起のようだ。
「僕があの二人を止められるとでも?身体強化も使えないのに?」
「あ、ごめん。」
ニックの言葉に、思わず素の謝罪をフランカはした。
「んじゃ、やるか、パオロ。」
俺は樽を挟んでから、パオロに言った。
「おう!怪我して泣くなよ。」
パオロは盛んに俺を挑発。
効かんが。
そして、俺らは右手を差し出し、互いの手をガッチリ組むのだった。
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本作は長編となっています。
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