548.アベル君と同級生たち。
548.アベル君と同級生たち。
ミカ嬢と別れ、俺は教室にたどり着いた。
「おう、今日は遅いな。」
そう声を掛けてきたのはパオロである。
「そうですね、ローズさんはいつもキチンとしているのに、何故です?」
パオロの隣で座っていたフランカがそんなことを言ってきた。
何かい?
俺はローズが居なきゃ、とてつもなくだらしがない野郎だとでも思っているのかい?
フランカさんよ。
「しっかりローズに面倒を見て頂き、朝出掛けましたが何か?」
俺がそう言うと、
「何かと言われても。」
そう言ってフランカが口ごもり、それを察したパオロが
「何かあったのか?」
と、その矛先を変える。
二人とも仲が良い事だ。
チッ!
いや、この時点で俺は非モテでもなんでもないので、爆発しろと思わなくていいはずだが、なぜか釈然としない。
「こっちに向かって来る途中で、ミカ嬢に話しかけられてしゃべっていたんだよ。」
俺がそう言うと、パオロは首を捻りながら、
「ミカ嬢?」
と、言った。
下級生なんて、接触なければわからんよな。
「ミカ様は、この学校へ、ルヴァン王国から留学にいらっしゃったルヴァン王国の王女殿下です。」
フランカがパオロに説明する。
「へー、他国のお姫様が留学してきたのか。」
合点がいったようにパオロが言った。
「もう一人、留学していらっしゃる。」
俺がそう言うと、またフランカが、
「ええ、バーム公国公女のルシア様がいらっしゃっています。」
と、すかさず説明する。
「王女と公女、そんなくらいの高い方々が、なんで騎士学校に留学などしに来たんだ?」
疑問に思うのは仕方が無い事だ。
別に口止めもされていないから、説明するのはやぶさかではないが。
「見合いだよ。」
「「見合い?」」
パオロとフランカが同時に聞き返してきた。
フランカは幹部会で彼女らが入って来たのを知っているとはいえ、その裏側までは聞かされていないから、疑問に思うのも不思議ではない。
「そう、見合い。オスカーとのな。」
「ああ、王太子殿下の正室候補か。」
パオロは納得できたようだ。
「でも、正室候補が二名同時ですか?」
フランカは納得できなかったらしい。
でも、その反応は正しいね。
「そうだ。不思議かい?」
俺はフランカに問うてみた。
「不思議ではありません。考えられる話です。王太子殿下について、悪い方にですけど。」
「悪い方に?どういう意味だ?」
フランカの言葉に、パオロが疑問を持ったようだ。
「王太子殿下に決めさせるってことでしょう?」
フランカが俺を見ながら言った。
「おおむね正解だね。」
「おおむねですか?」
俺の言葉にフランカは釈然としないようだ。
「はじめ、縁談はバーム公国のみだったんだ。バーム公国は、この国の公爵が起こした国で、言わばこの国の親戚筋だ。縁談自体はほぼ決まっていた。」
俺がそう言うと、小さく頷いた。
「そこへ、ルヴァン王国が割り込んだ。縁談を受けないと、テオの領地がまとめている、交易を荒らすって言ってね。」
「そりゃ、脅しじゃねえか!」
「こら、声を抑えろ、パオロ。」
「あ、ああ、スマン、つい。」
パオロは俺に謝る。
素直で良い子だ。
「パオロの言うとおり脅しだ。ただし、向こうには圧倒的海軍兵力があり、こちらからは中々太刀打ちできない。だから王家は、留学という名目で、ミカ嬢を受け入れオスカーにエルゼ港の命運を託したわけだ。」
「むう。」
そう言ってパオロは腕組みをし、フランカは眉をハの字にして困った顔をした。
留学を進言したのは俺だけどね。
選択肢のない結婚より、オスカーも百倍ましだろう。
王家は最終兵器が居るから大丈夫って思ってそうだけどね。
ミカ嬢の親を殺すのは忍びないな。
海軍力も兵力も送らず、俺一人がルヴァンへ渡り、難攻不落のルヴァン城を酸素で満たし、火を点けるだけで終わる。
俺は城が見える場所で、魔力操作するだけで事が済む。
燃えている人を見ることも、悲鳴を聞くこともせずにだ。
「ミカ嬢がこの国を気に入ってくれて、諍いが無いようにルヴァン王国に進言してくれるといいんだけどな。」
俺がそう言うと、パオロとフランカの顔が明るくなり、
「そうだな、そう思ってくれるのが一番だ。」
「ですね、王太子殿下に期待です。」
二人はそう言って力なく笑った。
これ以上俺が口を出すと、余計なフラグが立ちそうな予感がするのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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