546.アベル君と黒猫ちゃん紹介。
546.アベル君と黒猫ちゃん紹介。
「ルナさんは自薦でこちらに参りました。来てからすぐトラブルがあり、僕の要請で治療師の先生を連れて来てくれました。」
それを聞いた黒猫ちゃんは、思い出したのか俺のことをキッ!と睨んだ。
「はじめは他の先生も連れてくるように言ったのですが、浮遊する魔道具の担架を見て判断したんでしょう。ことが急を要するのを知っていた彼女は、遠回りして他の先生方を連れてくることはせずに、こちらに来てくれました。素晴らしい状況判断です。」
俺はそう言って一息入れる。
「状況判断と即時の決断力が飛びぬけていると感じました。それが彼女を幹部会に僕が推薦する内容です。」
「アベル様、ちょっと待ってください。」
手をあげてフランカが俺に問う。
「はい、なんでしょう。」
「廊下で起こったトラブルって何でしょうか?治療師の先生方を連れてこなければならない状況が、ちょっとわからないのですが。」
フランカもよく気が付くね。
面倒だが、説明しないわけにはいかない。
どうせバレるし、バレるのならば早い方がいい。
言い訳をたくさん並べられるからね。
「トラブルというのは、マキシミリアン君の同級生がこちらに来て、急に倒れたというものです。」
「まあ!倒れられた?で、その方は大丈夫でしたの?」
そう聞いてきたのはルシアだった。
「ええ、気を失っただけだったようで、ルナさんが呼んで来てくれた治療師の先生方が運んで行かれました。」
俺がそう言うと、フランカは、
「そのようなことがあって、そのルナ様にアベル様が治療師の先生方を頼んだと。」
「そういうことです。」
「私は、このアベル・ヴァレンタインが何かをやったのかと思っています。」
黒猫ちゃんが俺をにらみながら言った。
「そうであろう?アベルは見るからに怪しいからな。」
オスカーがそう言うと、
「プッ!」
と、その隣にいたテオが吹き出した。
「なぜ旦那様が怪しいと思われるのです?」
オリビィが黒猫ちゃんに向き直って問うた。
「彼は何もしませんでした。王女殿下。しかし驚きもしなかった。目の前で人が一人、喉を掻き毟り苦しんで倒れたのにです。」
「私にはとても旦那様らしいと思いますが。」
「驚いていましたよ。だから顔を覗き込みに行ったじゃないですか。」
「私には成果を確かめに行ったようにしか見えませんでした。」
俺の言葉に黒猫ちゃんは即座に反論した。
ま、黒猫ちゃんが正解なんだけどね。
「アベル様!分かりました。アベル様の推薦に私は賛成です。」
フランカはそう言って楽しげに言い争おうとしていた俺たちに言った。
「私もだ。」
オスカーもそれに続いた。
ジーナとリック、イーディスが呆れた顔で顔を見合わせ、
「その推薦受け入れますよ。」
そう、イーディスが言い、ほかの二人がうなずいた。
「なぜ皆様は、そのように暢気に構えておられるのです?人一人が倒れて運ばれたのですよ!」
ルナが叫んだ。
その通りだ。
その犯人に対する糾弾は必要だ。
誰だかわからんがな。
「ん?では君は倒れた彼に対し、アベルが何かをやったと言っているわけだね。」
オスカーが黒猫ちゃんに問うた。
「はい。証拠も証明も出来ませんが。」
「では、黙っていたまえ。そのような雑談に私たちが付き合う必要もあるまい。」
「ッ!」
オスカーの否定的な言葉を浴び、黒猫ちゃんは苦悶の表情をした。
「どうした?これで晴れて君は幹部会の一員だ。嬉しくないのかね?」
今度はテオが黒猫ちゃんに問う。
黒猫ちゃんの顔は悔しそうにゆがんだ。
「テオ先輩、かわいそうですよ。まだ一年生なんだから優しくしてやってください。こんなにかわいい女の子を。」
そう言って、フランカは前に来て黒猫ちゃんを抱き寄せた。
まさかの百合展開!
などあるはずもなく、
「入ればじきに慣れる。幹部会にもアベルにもな。」
「僕を何だと思ってるんだよ!オスカー!」
新入生そっちのけで、上級生たちの笑い声が広がるのだった。
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本作は長編となっています。
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