541.アベル君と黒い影。
541.アベル君と黒い影。
「ありぇ、マキシミリアン君も来てたんにゃあ。」
音もさせず黒い影が近づいて来たと思ったら、マキシミリアンに話しかけた。
「ルナさんか。君も幹部会に立候補に来たのかい?」
マキシミリアンは、俺から目を外しやってきた影、いや、真っ黒な髪の毛の中にぴょこんと猫耳がついている獣人の女の子に問いかけた。
「そうよ、西の森の代表として幹部会に入るべきだと思って。そして、そこの大旦那様の仇の孫にも興味があったし。」
二人はそんなことを話してから俺に視線を向けた。
西の森の獣人さんかぁ。
レオの爺さんがらみは面倒なんだよな。
「幹部会に立候補へ来たってことで良いのかい?」
俺がそう聞くと、黒猫ちゃんは、
「そうよ、アベル・ヴァレンタイン。レオ様にキツく言われているからやらないけれど、あなたの首も頂きたかったのにょ。」
「今は双方の協定によりそのようなことは出来ないからね。」
俺はにこやかに答えた。
「レオ様も、ヘタうったのにょね。あたしならそんな協定組む前に寝首引っ掻いていたにょ。」
「あは、コワイね。で、君、名前は?」
俺がそう聞くと、スッと黒猫ちゃんの雰囲気が変わった。
そうだね、子供がいきなり大人になったように、話し始めた。
「これは失礼致しました。私は西部、西の大森林ソル・ミレー子爵が息女、ルナ・ミレーです。アベル・ヴァレンタイン辺境伯嫡男、何卒よしなに。」
そう言って流麗なお辞儀をするルナ。
これもまた面倒そうだ。
「君もまたレオがらみかい?」
「がらみと言われるのは癪に触りますが、その通りと言っておきましょう。ライ・カルー伯爵閣下は、我がミレー家の寄親ですので。そして。」
で、ルナはまだ話したそうに一拍おいたので、俺が待っていると。
「レオ様は私の許嫁です。」
そう言うと、ルナは赤面し、顔を押さえた。
「なるほどね。それで得心がいった。」
俺がそう言って一人で納得していると、また少女の雰囲気に戻ったルナが、
「にゃにが?」
と、小首を捻って聞いてきた。
「いや、レオって可愛い顔してんじゃない。中性的っていうかさ。俺が見てもすごく綺麗な顔立ちしているよね。」
「あら、アベル・ヴァレンタイン、わかっているじゃにゃい。」
そう言っている、ルナの尻尾がくにゃくにゃ揺れる。
「そのレオが女の子に全然興味を示さなかったからさ。こんな可愛い子が許嫁なら、周りの女の子に興味がないのは頷けるなって。」
「ひっ!可愛い!?アベル・ヴァレンタイン!あなた女ったらしっていう話は本当ね!!!」
なんか、とんでもないことを言われたような気がしたのだが、気のせいか?
「あの、僕ってそんな噂が立っているの?」
「ええ、西の森では有名にゃ。王女様と婚約したにもかかわらず、既に妾が二人、側室候補も多数。娼館遊びにも勤しんでいると有名にぇ。」
あああ、ほぼ本当のことだけに、否定し辛い。
「私も聞き及んでおります。大貴族の子息たる者、斯く在るべきだと皆でよく話しておりました。」
マキシミリアンの馬鹿タレが!
俺は、一夫一婦制こそが理想で生きてきたんだつうの。
それがいろんなことに巻き込まれ、しがらみに雁字搦めにされ、見るも無残な事になってしまった。
「女の子の中での評判は最悪にぇ。何故ご両親や大旦那様の敵であるエドワードの様に、一組の番として仲睦まじく出来ないのかと。特にローランド、アリアンナ夫妻は女の子たちの憧れの的にぇ。」
そうよな、父さん、母さん、爺ちゃんの夫婦生活こそ目標だったんだけどな。
ローズを捨てられず、リラには甘え、カミラとアンネの押しに負け、オリビィは王家一同が俺を雁字搦めにした。
勿論それぞれ情愛なるモノは存在してんだが、まあ、しゃあないじゃん。
「まあ、こうなるにも家との結びつきとか、しがらみとか、もちろん感情もあるけれど、色々あったんだよ。僕も目指すは両親だったんだ。そうは思えないかもしれないけど。」
「ふーん。」
「へぇー。」
両者、あまり俺の言葉は刺さっていないようだ。
そこへ、どたばたという足音が聞こえたかと思ったら、
「おい、そこの貴様!ここが幹部会の部屋とやらか!」
と、横柄な声が飛んできた?
あ?
今、俺はとても機嫌が悪いんだ。
そう、心の中で憤るのであった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。




