537.アベル君と騎士学団団長さん。
537.アベル君と騎士学団団長さん。
つつがなく、入学式は進み、グスタフさんの挨拶が終わった。
教師たちから細かな説明や、寄宿舎に入るためのオリエンテーションの説明があった。
で、続いて、騎士学団団長の挨拶がある。
「アベル、では行こうか。」
「了解。」
俺たちは、立ち上がり、演壇に向かった。
俺は演壇脇に立ち、オスカーは教師から拡声魔道具を受け取り、演壇の上に上がった。
その途端、女子生徒が並んだ列から黄色い声が飛ぶ。
それはしゃーない。
オスカーは見た目だけはいい男だから。
しかし、お姫ズたちは三人おすまし顔だ。
ミカ嬢はつんとした顔しているし、ルシア嬢はアルカイックスマイルを浮かべていた。
躾が出来ていると言えばそれで終わりだが、オスカーとは面通しも終わっていることだし、ここで騒がなくとも正室候補として、いろいろとこれからやらなくてはならんしね。
あー、一人すましていない奴がいた。
オリビィが俺に向かって、小さく手を振っていた。
子供か!
そうか、子供だったよ。
そこに、拡声魔道具のスイッチを入れた音が響きオスカーが口を開いた。
「諸君!入学おめでとう!長旅であった者もいるだろう、そして緊張もあり疲れたとも思うが、我らの話をしばし聞いて欲しい。」
おお、いい導入じゃん。
ちゃんと練習していたんだな。
「わたしは、オスカー・ノヴァリス。この学校の三年生であり、生徒内組織である騎士学団の団長だ。そしてそこに控えているのが副団長、アベル・ヴァレンタインである。皆、よろしく頼む。」
去年は自分を王子と喧伝していたんだが、止めたんだな。
偉い、偉い。
建前上、学校内に身分差は無いことになっているから、自ら言うのを止めたんだろ。
ちゃんと考えているじゃないか。
オスカーらしくもない。
しかし、短い俺の紹介の後に、新入生の中からリアクションがある。
「アイツが…」とか、「チッ!」とかは南出身者だろう。
「至宝様だ!」「アベル様!」と言っているのは、たぶん北出身者。
これはもう仕方がないよね。
王子様に何とかしてもらおう。
たぶんできないけど。
「では、騎士学団幹部会に入会する新入生を発表する!」
騎士学団が、前世で言う生徒会と同じような組織で、活動内容などは、生徒による自主運営で行事等を行う事がオスカーの口により説明された。
そして、最後に出たのが幹部会の新規入会者発表である。
「ミカ・ルヴァン!ルシア・リッツ!この両名を優秀な新入生枠として騎士学団幹部会に入会して頂きたい。両名よろしいか?」
オスカーがそう聞くと、ミカ、ルシア両名が前に一歩進み、綺麗なカーテシーでオスカーに答える。
「光栄にございます、騎士学団団長殿。」
ミカは短くそう答え、続いてルシアも。
「謹んで入会させていただきます。団長様。」
と答えた。
まあ、これは決まっていたんだけどさ。
三年生のオスカーとの時間を合わせるにはこれが一番だしね。
で、一人烈火のごとく怒っている者が居た。
オリビィだ。
顔は怒りで紅潮し、兄であるオスカーを睨み、視線を動かし俺に助けを求めている。
器用な子だ。
「それから、自薦、他薦どちらでも構わん。あと三枠設けているから、我こそはと思うものは、幹部会会員へ声を掛けてくれたまえ。順次幹部会室にて面接を執り行う。それでは終了する。改めて、入学おめでとう!」
そう言って、オスカーは演壇を降りた。
すぐ寄宿舎のオリエンテーションが始まる旨、教師から案内があったのだが、そんなん聞いてられない人間が我々の方に歩み寄ってきた。
「お兄様!どうして私は入っていないのですか!?」
「オリビィ、残念だがお前は剣の技術が並以下でな。優秀者には入れられなんだ。」
あ、そういうこと?
俺もちょっと疑問だったんだけど、なるほどねぇ。
オスカーの発言を聞き、オリビィは、
「あっ!」
と、だけ言うと、ガクッと項垂れた。
騎士学校に入学するために、おそらく魔法を封印し、剣の練習もしたのだろう。
それでも至らなかった。
「わかりました!私、幹部会に立候補いたします!!」
切迫したオリビィの声が青空の修練場に響くのだった。
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本作は長編となっています。
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