536.アベル君とお姫ズ。
536.アベル君とお姫ズ。
王女命令の声が功を奏したのか、ダラダラしていた男子共もキビキビ動くようになり、見る見るうちに並んでいく。
「うん、いいね。流石オリビィだ。」
「いいえ!旦那様の指示がよろしいのですわ。」
ハッハァ、こ奴めぇ。
「そんなに褒めても何も出ませんよ。それでは失礼。」
俺は柔らかに踵を返した。
「お待ちください!」
お姫ズの一人、ルヴァン王国の王女、ミカ嬢が俺を呼び留めた。
「オリビア王女、こちらはどなたなのですか?どういったご関係で、今どういった能力を使ったのです?」
能力を使った?
ルヴァン王国には、その能力とやらが魔法の他にあるのかね?
ムクリと俺の中の興味という名の悪癖が動き出す。
「まあ、お二人にご紹介がまだでしたわね。こちらはヴァレンタイン辺境伯嫡男、アベル様。未来の私の旦那様ですの。いえ、既に心の中で結ばれている、真実の旦那様と言えましょう。」
オリビィが奇妙なことを言い始める。
なんだよそれ。
恋愛ラリって奴かもしれん。
冷めたら悲惨なやつだ。
なんたって脳内麻薬が切れるわけだからな。
とりあえず、オリビィは置いておいて、何とかとりなさなきゃならんか。
まあ、とりあえずだ。
「我が王女殿下は創作癖がありますので、どうか話半分でお聞きください。」
俺はそう言って、両サイドのお姫ズに頭を下げた。
「創作癖だなんて!酷い!旦那様!!」
そう言いながらむくれたオリビィを俺は無視して、
「申し遅れました、私、先ほど王女殿下にご紹介されたとおり、ヴァレンタイン辺境伯嫡男、アベルにございます。両姫様方、お見知りおきを。」
そう言ってもう一度頭を下げる。
俺が挨拶を終えると、ミカ嬢は自分の胸に手を当て、深々と頭を下げた。
そして、
「丁寧なごあいさつ、痛み入ります。御高名なヴァレンティアの至宝、その人でございましたか。私、ルヴァン王国王女、ミカでございます。以後、お見知りおきを。」
そう言って、面を上げた。
胸に置いた指が中指まで跳ね上がっている。
豊かな事であるよのう。
「オリビア王女の創作癖は置いておくことにして、アベル様はオリビア王女とどういったご関係なのです?」
ミカ嬢がなおも食い下がる。
オリビィは俺の顔を鋭い目でにらみつけていた。
創作癖と難癖付けたんだから、自分で説明しろと目が語っていた。
俺は右の口角をわずかに上げた。
わざとじゃないんだ。
笑いそうになったんだよ。
「私と王女殿下は…」
俺が話し始めようとすると、
「アベル!いつまでそこで食っちゃべっておる!戻らんか!式が始められん!!」
そうグスタフさんが拡声魔道具などいらない声量なのに、わざと拡声魔道具を使って怒鳴っていた。
「はーい!」
俺は手を上げ、合図をしてから、
「では、お姫様方。また後程。」
そう言って踵を返す。
その後ろで、か細い声が
「あ、あの、創作ってどういうことですの?わ、私の創作物…」
などと聞こえてきたが、気味が悪かったので振り返ることなくオスカーの元に戻った。
「ご苦労。オリビィ操作も堂に入ったものだな。」
オスカーが戻った俺に労いの入った嫌味を言った。
「オスカーよりも骨が折れるがね。」
「何だと!!」
オスカーは青筋を立て、立ち上がろうとするので、
「ほら始まるぞ。邪魔になってまた王妃の小言を聞きたいのか?」
そう俺が言うと、
「貴様はすぐ母上の笠に着る。いけ好かない奴だ。」
そう、ブチブチ言いながら体育座りをする。
百八十センチになろうという男子が体育座りする図はいつ見ても笑えるな。
「何だ?じろじろ見おって、気色悪い。」
「なんでもないさ。オスカーはかっこいいって思っただけだ。」
などというと、拡声魔道具のテストを教師がし始め、その音が修練場と、青空一杯に広がった。
そして教師のあいさつから入学式が始まったのだった。
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本作は長編となっています。
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