535.アベル君と三人の姫。
535.アベル君と三人の姫。
俺は並んだ三人の見目麗しいお姫ズを眺めながら、オスカーに呟いた。
「良かったじゃん、二人とも美人で。」
「そういう問題ではなかろう。いや、選べないのだから、美人であって助かったと思うべきか。」
「頭まわるようになったな、オスカー。」
「貴様!失礼だと思わんのか?私は王太子だぞ。」
ムッとした顔で、俺に言葉をオスカーは向けた。
「その前にオスカーだけどな。しかも俺はお前の教育係をご両親から仰せつかっておりますのでね。その手の脅しは効かんよ。」
「くっ!」
そう歯を食いしばり、オスカーは口をつぐんだ。
「さっきのオリビィとのやり取りを鑑みるに、既に二人とも城でお披露目はやっていたんだな。」
まだむくれているオスカーに言った。
「ああ、そのとおりだ。基本の住居は、ここの寄宿舎になるが、セイナリアでのあの二人の本拠は城になる。使用人たちも、城で面倒を見ているよ。」
俺は頭を軽く振って言った。
「金のかかりそうな話だ。」
「まさにそのとおりだが、北の辺境伯と、南の公爵家が税を稼いでくれるお陰でセイナリア城は潤沢だ。」
こちらに一瞥もすることもなく、冷めた顔で話すオスカー。
「さよか。知っていたけどな。」
俺も前だけ見て答えた。
「北の嫡男が優秀で助かるよ。冒険者ギルドを立て直し、商業ギルドとも目配せを利かせ、領内の政治は官僚たちに任せている。おかげで北も裕福だがうちも裕福だ。ありがたい事だよな。アベル。」
「敬ってもいいんだぞ?」
「知るか!」
ふん、と、またオスカーはソッポを向いた。
「ところで、オスカーとの面通しもあったわけだろ?」
「ん、まあな。」
「初見で、どっちよ。」
「お前…、今はどっちとも言えんな。二人とも見目麗しくキチンと躾もしてあるようだ。」
最初、呆れたように首を振ったオスカーは、内容をちゃんと答えた。
このツンデレめ。
「人なんて裏表があってしかるべきものだからな。今は奇麗で躾もされている。これだけで表は十分だろう。問題は此処からだ。」
「そうだな。尻尾を掴んでやる!」
オスカーはそう言って拳を握った。
相変わらず馬鹿で助かる。
いや助からん。
そんな話していると、教師たちが一年生たちを並べ始めた。
子供の頃から整列に慣れていないと、きちんとは並べないらしい。
前世日本の幼稚園の運動会を見た海外の父兄が、
「この歳から日本では軍事教練をやるのか!」
と、驚いたという話を聞いたことがあった。
一般的な日本人が、
「はい、ここから二列に並んで。前倣え!」
の号令一発で並んでしまうのは、外国人にとって奇異に見えるらしい。
目の前の連中がそんな訓練を受けたことが無いのは明白で、教師に言われてもばらばらのままだ。
中には騎士や騎士団のある貴族の子弟もいるのだろう、きちんと並ぼうと右往左往している。
だが周りが慣れていなければ無理な事だ。
しかし、のんびり眺めていても、早くは帰れない。
「ちょっと手伝いに行ってくるよ。」
俺はオスカーに声を掛け、オリビィたちが立って並んでいるとこに行った。
「オリビィ。」
俺がオリビィに声を掛けると、花が咲き誇らんと言った笑顔を咲かせ、
「はい!旦那様!」
「「旦那さま?」」
両サイドのお姫ズが疑問形でユニゾンした。
俺は無視した。
だって明らかに面倒ごとになりそうじゃん。
二人は怪訝そうな顔をしていたが、それも無視。
俺はにこやかなオリビィを見据えて言った。
「ちょっと僕がこれから言うことを、後ろを向いて言ってくれないかな?」
「あら、旦那様がお話しなさればいいのでは?」
「混乱しているからね、申し訳ないけど、オリビィの権威をお借りしようと思ってさ。」
「あら、そんなことならいくらでもお貸しいたしますわ。」
「ありがとう。じゃあ、言うよ。」
俺がオリビィの耳元で呟くと、オリビィはくすぐったそうに笑いながら首をすくめ、言い終えると、きりっとした面持ちで、号令した、
「女の子たち!わたくしたち三人の後ろに一人ずつ並びなさい!」
言い終えると男子たちの方へ首を巡らせ、
「男子たち!貴族、騎士の子弟で整列、行進の訓練をやったことある者!私たちの横に5人並びなさい。余ったものはその後ろにそれぞれ並びなさい!そのほかの者たちは、並んでいる後ろに一人ずつ並びなさい!王女命令です!」
命令までは俺は言ってないんだけど、調子に乗ったな。
おバカちゃんめ。
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本作は長編となっています。
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