533.アベル君と新学年。
533.アベル君と新学年。
怒涛の送別会から三つ月が過ぎた。
爺ちゃんは送別会の三日後にセイナリアを出発。
見送りは家族だけで静かにと、爺ちゃんが国王に注文を付けていたらしく、本当に静かな見送りとなった。
バルドさんだけは、別邸付近の茂みから覗いて見ていたのを俺は知っている。
どんだけエドワード爺ちゃんが好きなんだよ。
カミラは来てたよ。
前日から泊まって、皆で飲んでいた。
ネスとユーリも爺ちゃんと一緒に帰郷した。
セイナリア休暇中は、二人とも本気で観光を楽しんでいたらしい。
まあ、帰ればユーリは次期騎士団長としてまだまだしごかれているようだし、ネスは官僚長として激務が待っている。
たまの出張くらい、羽を伸ばせばいいのさ。
爺ちゃんたちが帰って三週間後、爺ちゃんから手紙が来た。
帰路の途中、十人程度の野盗らに二度ほど襲われたそうだが、爺ちゃんとユーリ達が返り討ちにして、皆無事だったそうだ。
野盗たちも、襲った相手が悪かったとしか言いようがない。
俺と違って、容赦なく切り捨てる人たちだしね。
そう考えると俺って優しいな。
せいぜい窒息させて捕縛するだけだもん。
人権意識がまだ残っているのかも知れない。
まあ、捕縛された連中は、ほぼ間違いなく処されるんだが、それは自業自得だから俺の所為じゃないでしょ。
てなわけで、爺ちゃんはヴァレンティアに帰った。
しばらく会えなくて寂しいなんて言わないよ絶対~♬
でだ。
セイナリアに来てからもう一年経ってしまった。
早いね。
歳は取りたく無いもんだ。
まだ十六歳だけど。
俺やパオロ、フランカは二年生、オスカーたち騎士学団幹部会の先輩方は三年生になった。
去年の三年生の幹部が居ないのには理由があった。
オスカーだ。
こいつが居るんで、いろいろ気を遣わなければならず、それならオスカーたち下級生に丸投げという話になったようだ。
先生たちも思う所が有り、了承したとのこと。
体育会系の学校らしく雑なやり取りだが、先輩面が出来ない下級生が嫌だってのは、なんとなくわかる。
そんなもんだから、去年の行事は人が足りず苦労したんだ。
一人、抜け殻みたいになって田舎に帰ったし。
名前?
忘れたよ、そんなん。
そして、野外修練場には初々しい顔の子供たちがワラワラそこら中にたむろっている。
新一年生たちだ。
寄宿舎にまだ全員入っていないので、野外修練場には全員が揃っているわけではない。
そろそろ時間になるけどな。
で、俺が何故新入生のことを気にしているかと言えば、いや、その言い方はおかしいか。
気にしては無いんだが、早くやって早く帰りたいという、ごく自然な考えを持っているだけなんだ。
何をって、去年オスカーがやったじゃん。
俺とフランカを名指しで指名したヤツ。
あれをまたやるんだって。
今んとこ決まってるのは二名。
去年は俺とフランカしか入らなかったから、順次優秀と思える者を足していく方針なんだってさ。
「じゃないと貴様とフランカが来年苦労するだろう?」
学団長様がそう言っているんだからそうなんだろう。
そんなわけだから、新入生たちがたむろっている修練場の演壇脇で、座ってぼーってしているんだ。
いつの間にか副団長になっていたから、出なきゃ駄目なんだそうだ。
副会長なんて、テオの役目だろ?
なんて思っていた時期もありました。
「僕には本気で暴走した王太子殿下を止めることは無理だからね。」
そんなことをテオは言っていたよ。
俺だって無理だよ、そんなん。
王権には逆らえないもん。
そんな麗らかな陽気の修練場に、三台の豪華な馬車が入って来た。
一台の紋章は知っている。
王家の紋章だ。
あれ?なんで?
二台目の紋章は、船の碇にカトラスの様な剣の紋章。
もう一台は、大きな樹木の紋章だ。
さあ、学園ドラマになってきやがったぜ。
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