532.アベル君とベッドのぬくもり。
532.アベル君とベッドのぬくもり。
俺は今、惰眠を貪っているのだ。
昨日は疲労困憊だったからな。
それで今は、寄宿舎のベッドの中にいるわけだ。
カレッド伯爵の追及は、カミラの妄想ということにして俺は逃げた。
別邸に居るのも怖かった。
酔っぱらったアンネが襲いに来そうだったし。
あれだけ俺には厭らしいだのなんだの言っていたのに、自分の性欲に忠実なのは、あいつも女ということだ。
「アベル様、朝食のご用意が出来ました。」
そう言ってローズが俺を起こしに来た。
「もうちょい寝たい。冷めてしまうと美味しくなくなるご飯かい?」
「はい、アベル様は二日酔いだろうということで、麦の乳粥にしました。」
そりゃ冷めれば不味いか。
でも。温めが利く料理でもあるなぁ。
「ローズここに座って。」
俺はベッドサイドを指さし、ローズを座るよう促した。
「え?冷めますよ。」
「わかっているよ。でもここでちょっと話をしよう。」
「でも…」
「叱るわけじゃないよ。昨日僕も帰ってすぐ寝ちゃったから二人で話す時間が無かったなってね。」
「はい…」
ローズはわずかに逡巡し、ベッドサイドに腰を下ろした。
「昨日はお疲れさまでした。」
「いえ、アベル様こそお疲れさまでした。」
「本当に疲れたよ。八人?と踊る羽目になるとは思ってもみなかった。」
「楽しそうでしたね。」
「そう見えたかい。」
「ええ、カミラ様とか、アンネちゃんとか。」
「あいつら責任も使命もなんも無いもんな。」
「そう言えばあの二人はそうですね。」
「な。まあそれはそれでこの数年だけだ。カミラ嬢は置いておいて、アンネは側室にすることを決めた。」
「はい。」
「異論はないね?」
「もちろんありません。そうなるだろうと思っておりましたし。」
「うん、ローズも同じパーティーでダンジョンに入っていたから気づいてはいただろうけど、アンネの魔法の能力は僕や姉さんに匹敵する。しかも治癒魔法は超一流だ。」
「はい。」
「それを野に放つわけにはいかないのが、まあ、僕の表向きの理由かな。」
「そうですね。大学に入っていれば、おのずと気付く人もいます。縁談も舞い降りるでしょう。」
「そうだ。」
「それに裏向きの理由もありますから。」
「そう、トレーサ神の聖女という重荷は、アンネ一人に背負わすには重すぎる。」
「はい。」
「ま、アンネのことは以上だな。」
俺はそう言って、ベッドの真ん中から両手両足を使って身体をずらしつつ、ベッドサイドへ移りローズと並んで座った。
ローズはその俺の横顔を固い顔で一回見つめ、俯いた。
「昨日の気遣いは嬉しかったよ。」
「でも、そのお陰でアベル様に過分なご迷惑をおかけしました!」
「そうだなぁ。オリビィに貸し一つって言われたときは、肝が冷えたよ。」
俺はそう言って軽く笑う。
「ごめんなさい。」
「いいんだ。もう済んだことだし、オリビィ自体が上手くとりなしてくれた。あの子を正室に迎えるのは正解なんだろうな。」
「そうですね。器の大きいお方とお見受けしました。」
「うん、僕もそれは感じた。前はこまっしゃくれた王女くらいにしか思わなかったけどね。だけど、人は変わる。多分僕も変わったし、ローズも変わったと思う。それは責任だったり環境の所為だったりするけれど、オリビィも王家のしがらみの中で成長も変化もあったんだろうね。」
「ええ、お優しい方です。」
「四年後には俺とローズの二人が、オリビィの掌でコロコロ転がらされる未来しか見えないな。」
「アベル様もですか?」
「そうだよ、昨日なんて、王妃とオリビィに転がされて大変だった。」
「まあ。」
ふふふ、そんな声を上げ、ローズが薄く笑った。
「やっと笑ったね。その顔が一番好きだよ。」
「え?」
そう言って俯くローズに、
「こっちへおいで。」
俺は両手を広げた。
ここからはまた別のお話。
は、ないない。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。




