530.アベル君とアベルの立場。
530.アベル君とアベルの立場。
へ?なんでローズを叱ったのかって?
決まってんじゃん。
ローズが殺されるからだよ。
その程度だって?
その程度で命がなくなるのが、この世界の貴族制度なんだよ。
共和制政治に慣れきっていると分からないだろうけど、そういうものなのさ。
ローズもたぶん納得しているし、反省もしていると思う。
俺があんな風に怒鳴るなんて、滅多にないことだから凹んでいるとも思うけどね。
しかし、命あっての物種だ。
オリビィの返しも、本当にありがたかったよ。
オリビィの無礼の一言で、ローズの首が飛ぶ。
ガウェインさんにローズの首が切られるところなんて見たくなかった。
だからオリビィにはもう頭が上がらない。
ローズも同様にね。
でも、オリビィに貸し一つの方が俺にとっては痛い。
痛すぎる。
何言われるか分かんないもんな、あの王女様。
とりあえずこれくらいで良かった。
「アベル、お立ちなさい。」
「はい。」
「一緒に座ってお話ししましょう。これで貸し借りなしです。」
オリビィはにこやかに笑いながら椅子に腰かけた。
これで貸し借りなし?!
マジかよ。
何考えてんだ?この王女様はよ。
俺は立ち上がり、さっきまで腰かけていた椅子に座りなおす。
そこに、
「王女殿下、孫の妾が大変申し訳ありませんでした。」
クリス婆ちゃんが俺の座っている横に跪きっぱなしのローズを気遣いつつ、声を掛けてきた。
「あら、クリス夫人。もう済んだことです。ローズさんも楽におなりなさい。」
オリビィは本当に何事も無いような口ぶりでクリス婆ちゃんに答えた。
「本当によろしいのですね?」
こういう場での言質の大切さを嫌ほど知っているであろう、婆ちゃんが念を押した。
「ええ、いいんです。私が将来ヴァレンタイン家に輿入れしたら、ローズさんをお姉さんのように思って接したいのです。色々聞きたい。ローズさんしか知らない事が沢山おありの筈ですから。」
「くぅ…」
オリビィの言葉を聞いたローズが、たまらず嗚咽を漏らした。
おいおい、ちょっと見方変える?
オリビィのさ。
俺の中で株が爆上がりだよ。
好きんなっちゃいそうだ。
「何をお聞きになりたいのです?」
婆ちゃんがオリビィに聞いた。
「そうですね、旦那様の操作の仕方とか。」
こわっ!
はい、好きになるとかは無しの方向で。
「ほほほ、それはいいですね。アベル、覚悟なさい。強いお嫁さんが増えるわね。」
クリス婆ちゃんは朗らかに笑いつつ俺をいじる。
「元来、女性は強いモノですからね。婆ちゃんと母さんを見ればわかりますよ。」
俺は婆ちゃんに憎まれ口を言ってから、
「申し訳ありません、ローズを頼みます。」
そう言って、ローズを引き取ってもらうことにした。
「ええ、そうね。ローズ、立てますか?向こうで冷えたものでもいただきましょう。」
クリス婆ちゃんはそう言うと、ローズの両の肩を抱きながら、奥の方へと去って行った。
「ああ、その前にお礼を言わせてください。ローズを救って下さり、ありがとうございました。」
俺はオリビィに向き直り感謝を込めて頭を下げた。
「いいんですよ、旦那様。ローズさんが旦那様を思う気持ち、苦しいほどわかりますから。まして一緒にお住みになって、いろいろなさっているんでしょう?」
なぜかテンションを上げながらオリビィが聞いてきた。
「いろいろとは?」
「いやだ!いろいろとはいろいろです!!」
オリビィは顔を赤らめ、俺の肩を軽く叩いた。
お嬢ちゃんは何を想像したのかな?ぐへへ。
「で、王女殿下。それが話したい事かい?」
もう疲れた。
俺一人の処分ならどうでもいいから、砕けた口調でオリビィに話しかける。
「いいえ、二人の未来のこととかは?」
そりゃまた、夢見がちな少女の未来なら輝かしいものを想像しているんだろう。
けど、こいつはそういうんじゃねーからな。
「二人の未来ね。とりあえず四年後ヴァレンティアで結婚式だね。」
「あら、セイナリアで式をするのではないのですか?」
「王女殿下はヴァレンタイン家へ輿入れなさるんですよ?ならばヴァレンティアでしょう。まあ、二回やるのもありですが。うちの騎士がすでにやってますし。」
「いいですわね!二回結婚式!!」
テンション爆上がりのオリビィであった。
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本作は長編となっています。
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