529.アベル君とローズの立場。
529.アベル君とローズの立場。
「アベル気付いているんでしょう?」
ダンスも終了間際になって、また王妃が話しかけてきた。
「なんのことでしょう?」
ブライダルチェックのことかな?
それなら、まあ。
でも俺は一旦とぼけてみることにした。
「あなたの側室候補のことについて探りを入れたことよ。」
「それは、全然。と言えば、嘘になりますね。」
「何故そのような事をやったのかは?」
愛娘の旦那が複数の女を囲っている事実。
その真意を婿に尋ねたくなるのは親として当然のことなんだろう。
親になったことが無いから分からんが。
「母親の心理ということでしょうか。貴族の習いとして、側室、妾を囲うのは当然。しかしどのような者が囲われているか知りたくなるのは親心としても当然というところですか?」
「半分は当たりね。」
そう言って王妃は悪戯っぽい笑顔を作る。
あら可愛い。
ちょっとときめいちゃったよ、おじさん。
永遠の十七歳声優的可愛らしさがあるな。
あの人還暦越えたんだっけ?
「全部はお聞かせ願いませんか?」
俺は一応探りを入れる。
「そうね。今はダメね。でも遅すぎても駄目。迷うわぁ。」
今度はくるりとお惚け顔になった。
さすが狸親父の嫁だ。
底が見えない。
「聞きたい?」
小首をかしげる王妃。
流石にそれは十代以下の少女の仕草だ。
アラフォーのおばちゃんがやっちゃいけない。
前世なら後ろから刺されそうなこと考えちゃったな。
少なくとも、某SNSでは炎上ものだ。
気を付けるべし。
なに、〇ルちゃんに書き込まれなきゃヘーキ、ヘーキ。
とか思っている時点でアウトなんだぞ。
「あまり聞きたくはありませんね。最近重石ばかり担ぎ過ぎて、肩がこるやら腰が痛いやら。」
「あら、重石だと思っているのね。」
「聞いてみないと分かりませんけどね。」
「それもそうよね。」
そう言って、王妃は口をつぐんだ。
そしてフロア内も音楽が止んだ。
「残念。終わっちゃったわ。楽しかったわよ、アベル。」
そう言って、パートナーだった女性はいつもの王妃の微笑みを湛える。
俺たちは腕を組み、仲良くブース方面へ歩き出した。
「アベル、十年前に私があなたに話したことを覚えている?」
「ええ、五歳児が聞くにはかなり重い話でしたので、よく覚えております。」
「そうね。私は女であるという話をしたのよね。何故あなたに話したか、自分でも良く分からないけれど、アベル、あなたは話し易いのよね。」
「それは、どうも。」
「オリビィは私より女よ。気を付けなさい。」
「ご助言、痛み入ります。十分に気を付けます。」
俺たちはその後ブースに戻り、それぞれの位置に戻った。
きっつ!
きつかった。
これで全部終わったよな?
もうしばらくダンスしたくないし、パーティーも来たくない。
エドワード爺ちゃんは主役なのにバルドさんたちが囲んで飲んでいるだけだし、いったい何なの!
そこへ、国王と連れ添ったオリビィがブースに入って来た。
「旦那様!もう一曲踊りませんか!?」
若い子は体力があっていい。
若い頃には絶対言わないでおこうと思った言葉が、自然に頭を駆け巡る。
「王女殿下、私めが申し上げるのもおこがましいのですが…」
傍に来ていたローズが俺を慮ってオリビィに物を申そうとする。
しかしこれはダメだ。
いくらなんでも、中に俺が挟まろうとも。
傍に両陛下がいて、相手は王女、片やローズは平民出身の妾。
フォーマルなパーティー会場で、ローズは上流貴族以上に話しかけられることはあったとて、話しかけてはいけない。
俺自身はそんなんどうでもいい。
しかし、世間は許さない。
「ローズ!黙れ!」
俺の口からこんな言葉が出るとはな。
「出過ぎたことでした。申し訳ございません。ご処分は何なりと。」
そう言ってローズは一歩下がり、跪いた。
俺も椅子から立ち上がり、咄嗟に跪いた。
そしてオリビィに対し、謝罪の言葉をひねり出す。
「ローズ控えておれ。王女殿下、我が妾が失礼いたしました。」
「いえ、良いのです。アベルのことを慮ったのでしょう。その忠義に免じ、私、王女オリビアはローズを許しましょう。アベルも許して差し上げなさい。」
マジか、でも手ぶらってわけにもいかんだろうな。
くそ、こんなもんでも無いよりゃましだろ。
「王女殿下、その広いお心に感謝いたすと共に、永遠の忠誠をお誓いいたします。」
「え?いらな~い。そんなの旦那様じゃないではないですか。」
「よろしいのですか?」
「ええ、いりません。そのかわり、貸し一つで。」
そっちの方がこえーわ、そう思うアベルだった。
将軍様落ちが続いてね?
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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