527.アベル君と王妃とダンス。
527.アベル君と王妃とダンス。
王妃の言葉に顔を真っ赤に染め、照れているローズ。
ああ、かわいい。
癒されるわぁ。
って言っている場合じゃないか。
俺は王妃の前でまた跪き、
「僭越ながら王妃陛下、このアベル・ヴァレンタインと一曲踊ってくださいませんか?」
などと、申し込んでみた。
予約客なので、断られることなどないだ…
「イヤです。」
ふぁっ!
なんぞ!?
驚いたのは俺だけではない。
両サイドのローズとアンネも驚きのあまり固まった。
「あら嫌だ。冗談ですよ。さあ、行きましょう。正式な婚約者の我が娘以外を侍らす、不遜な婿殿。」
グサ、グサ、グサ。
全方位から言葉の刃が俺に降りかかった。
しかし、俺はエネルギーチャージしたばかり。
この程度の精神攻撃は効かぬのだ。
「で、では、行きませおう。」
だいぶ効いていたらしく、思い切り嚙んだ。
「アベル、どうしたのかしら。大丈夫?」
わざとらしく俺と腕を組んでから俺の顔を覗き込む王妃。
あんたの精神攻撃の所為だろ?
「なんでもございません。お義母様。行きましょう。」
キリッ!と顔を俺は作り、そして背筋を伸ばし、王妃をエスコートしてフロアへ向かった。
「あら嬉しい。お義母様などと、かわいいアベルのような少年の口から零れると、ワクワクするわね。」
変なスイッチ押したかな?
あなたは既にBLという甘美な癖を見つけてしまったんだ。
余計な扉を開かないでくれよ。
おれはNTRなんてするのもされるのもノーサンキューだからな。
「顔はオスカーに負けますけどね。」
「あら、アベルも相当よ。」
「それは、ありがとうございます。」
「そうね、素直な人は好きですよ。」
「自分ではあまりピンと来ていないので、こう言うしかないんです。」
実際十五年たった今でも、この顔の自分には慣れない。
そう言いながら、俺は王妃とダンスの体裁を整うべく、王妃の手を握り、空いた手を腰に回した。
「あなたのダンスをずっと見ていたわ。」
いやだ、恥ずかしい!
じゃ、ねーよ。
何言ってんだ?この人。
「しっかり踊れるのね。アリアンナの教育の賜物?」
ここでメロディーに入ったので、一歩ステップを入れる。
「そうです、母の主導ですね。」
「ならばシャーロットも?ローズもそうなの?」
質問攻めだな。
「そうです。姉さんは当然するべきだし、ローズは僕についてくることを想定していたんでしょうね。」
「流石、アリアンナ。抜け目ないわね。」
「そうですか?」
「そうよ、アベルがローズを娶ることを前提にしていたのでしょう。」
ん~~?それは買いかぶり過ぎじゃないかなぁ。
俺が五歳くらいからダンスレッスンは始まった。
ロッティーはもっと前から始めていたけど、ローズもロッティー、リサとともにレッスンは受けていた。
俺はね、母さんとマーガレットの暇つぶしだと思っているんだけどね。
実際、城の暮らしは仕事がなければ暇なんだもんな。
掃除や料理を母さんがするわけにいかないから、刺繡なんかをたしなみとしてやっている。
そこに娘と息子が出来れば、魔法とダンス授業を始められるというものだ。
子育ては最高のシミュレーションゲームだと言った人がいたとかいないとか。
「これは僕の考えですが、暇つぶしの一環だったんじゃないでしょうか?」
「それは子を持つ母親としては看過できない言葉だわ。否定もしづらいけど。」
ふむ、苦労していたであろう子育てを、暇つぶしで片付けられるのは癪に障ったかな?
「僕の認識が悪かったみたいですね。失礼いたしました。」
あとで面倒なことになるかもしれないので、すかさず謝罪した。
「まあ、いいでしょう。子供の立場から見ると、親とはどういう風に見えるかわかったような気がします。」
そう言って王妃は俺のステップに合わせ、滑らかに踊るのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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