526.アベル君と休みのはず。
526.アベル君と休みのはず。
ルミナ夫人に引きずられるようにブースに戻ってきた俺。
正直、頭も身体も使いすぎてヘトヘトだ。
俺はエドワード爺ちゃんの近くの椅子に座って、メイドから蜜入りの果実酒を渡された。
「疲れた時にはこれがいいですよ。」
メイドはそう言って微笑みを残し、去っていった。
そんな疲労した顔をしていたか。
いかんなぁ。
もうちょっとタフでいたいね。
俺はさっき受け取った蜜入り果実酒を飲んだ。
あ~、甘。
グリコーゲン補充できるわぁ。
でもちょっとでも休まんと、話んならんな。
もうね、頭の回転だけは、今日の俺はアスリート並みだよ。
ご婦人方と会話するたびに、ブレインブーストを使う必要もないんだけどさ。
さっきのルミナ夫人の追及はやばかったな。
本気で俺と結婚するつもりなのかね?
いやいや、今は考えちゃいかん。
放心状態で。
「アベル様。」
「ん?アンネ、どうした?」
アンネが俺に声をかけ、隣のシートに腰を掛けた。
「どうしたのかなって思って。お疲れですか?」
「流石にね。七人と踊って話をして、もうくたくただよ。自分でもびっくりだ。」
「大変でしたね。」
「うん、大変。みんないろいろあってね。頭も気も使ってさ。けど、全員必要なことだから、無碍にできないしね。」
「そうですね。私との一大決心もしてくれましたし。」
「だなぁ。待たせて悪かったね。またもうちょっと待たせてしまうけど我慢してな。」
「仕方ないですよね。順序がありますから。」
アンネがそう返事をすると、
「アンネちゃん、アベル様を休ませてあげて。」
アンネの逆の位置から、ローズが声をかけてきた。
心配させてしまったのかもしれない。
「ああ、ごめんなさい。アベル様にご負担をかけるつもりはなかったの。ごめんね、ローズちゃん。」
「私はいいのよ。ちょっとアベル様が憔悴されていたようだったから。」
「ありがとうローズ。ごめんな、アンネ。ちょっと休ませてもらうわ。」
俺は背もたれに寄りかかり、静かに目を閉じた。
ちょっとだけブレインブーストとマッスルブーストをかける。
あっという間に疲労が飛ぶ。
なんてことは起きないが、変質したグリコーゲンがエネルギーを疲れた脳と筋肉に行き渡らせてくれる。
普通に休むよりだいぶ楽になるのだ。
俺は腹式呼吸で魔素を吸入。
同時に新鮮な酸素も取り入れる。
魔素吸入してんのに、酸素生成をするようなことはしないよ?
魔素の補充、酸素の補充を同時に行い、また果実酒でグリコーゲン補充も行った。
お、いいんじゃね?
さっきまでのぼーっとした鬱陶しさと、筋肉疲労が和らいでいる。
「うん、いや、楽になった。」
「あはは、もう?」
そう言ってアンネはおかしそうに笑った。
「マッスルブーストとブレインブーストを使うと、ちょっとだけ回復が早いんだよ。」
俺がそう言うと、ローズが、
「力が強くなったりするだけじゃないんですね。」
と言ってきた。
パーティー組んで、ダンジョンに潜っているころに固有スキルみたいなものの種明かしは、この二人にはしてあった。
だからまあ、気楽には話せる。
大きな声じゃ無理だけどね。
「可愛い御婦人方に囲まれて、ご満悦ね。アベル。」
ふと、俺の目の前が陰り、声が降ってきた。
「これは王妃陛下。こちらから伺うところでした。」
俺は椅子から降りて跪く。
両サイドのローズとアンネも俺に倣った。
ん~~、もうちょっと休みたかったがなぁ。
来ちゃったもんは仕方がない。
ちゃっちゃとエスコートして踊って仕舞にしてしまおう。
「いいのよ、気を使わなくて。あなたのお爺様の送別会でしょう?こちらはホスト。だから、三人とも楽になさい。」
王妃がそう声をかけてくれたので、椅子には座らず、俺たちは三人とも立って応対することになる。
「王妃陛下、こちらへ。」
ローズは自分が座っていた椅子を王妃へ勧める。
「あら、ありがとう。ローズ久しぶりね。すっかり奥方業が板についたようですね。愛されているのが手に取るようだわ、ふふ。」
そう言いながら、勧められた椅子に座る王妃。
ローズはしどろもどろになりながら、
「い、いえ、とんでもございません、王妃陛下。」
そう言ってローズは顔を赤めたのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。




