524.アベル君とエルフの貴婦人。
524.アベル君とエルフの貴婦人。
えっと、七人目?
踊んの。
あと王妃の予約が入っているから八人か。
女性関係のしがらみ緩和のためといっても、俺もようやるわ。
「だいぶお疲れね。」
ルミナ夫人は、俺のリードで華麗なステップを踏む。
ああ、違うから、俺のリードがいいってわけじゃなくて、疲れてヘロヘロの俺のリードでも華麗なステップを踏んでいるって意味だから。
結局皆まで言ってしまったか。
ルミナ夫人はいくつなんだっけ?
そういえば聞いたことがない。
まあ、聞く必要もないが。
なんだか取り留めもないな。
やはり疲労の蓄積はぬぐいようがないか。
「アベル、大丈夫?無理しなくてもいいのよ?」
ルミナ夫人が優しい言葉をかけてくださる。
こんな人だっけ?
「すみません、ちょっとボケッとしただけですから、大丈夫ですよ。」
俺はそう言って取り繕った。
「ならいいけど。ご婦人方のお相手も疲れるものね。」
「ええ、とっても。」
「まあ!私を目の前にその肯定の仕方はどうかしら。」
「これは失礼しました。他意は無いのです。ご無礼お許しください。」
「わかっているわよ。ここまで何人もの女性と踊って話をして疲れたんでしょ?しかも祖母、姉、妾、婚約者、あとは婚約者候補たちかしら?」
そうやって他人に整理されると、しんどさが身に染みる。
「まあ、皆さん個性的でいらっしゃるので。」
「まあ、モテる男の贖罪だと諦めなさい。」
「モテているつもりもないんですけどね。」
「生まれからして優良物件なのよねぇ。」
「それは否定できません。」
「そうね、一閃の剣とお転婆魔法使いの息子で、剣では無敵の孫。二十歳にして魔法大学校の教授になった女性の弟で、その実、辺境伯嫡男、魔法と剣を使いこなす唯一無二の存在。設定盛りすぎで、普通の女の子なら呆れて声も掛けないわ。」
「本当ですよねぇ。僕はそんなつもりで十五年間生きてきたわけではないんですけど。」
「アベルの両親が強すぎるのよね。二つ名付きの冒険者出身。しかもこの国では十人と居ないA級。これはまだいいとして、問題は次よ。二人とも上級貴族の子弟。なのに腕試しと称して、冒険者になった変わり者。」
ここで、ルミナ夫人は一息ついた。
うん、これはまだ続くよね。
「その二人が運命に惹かれるがごとくパーティーになり恋仲になり、ベヒーモス討伐という偉業を成し遂げA級冒険者になった。さらに、辺境伯を父親から継いで、結果も出して裕福に暮らしている。もうね、ありえないわよ。」
「そうですね。ありえませんよね。息子の僕ですらそう思いますもん。」
「その娘と息子がまたありえないのよね。」
んぐ、なにそれ?
いや、言われなくてもわかってる。
ルミナ夫人、さっき言ったでしょ。
「娘は三歳以前から書物を読み漁り、ほぼすべてを記憶し諳んじることが出来る天才。母の血も引き継ぎ、魔法では並ぶものが弟しか居ないと言われる傑物」
生きる百科事典だもん、仕方ないじゃんね。
便利だよ、一家に一人ロッティーが居れば。
「息子の概要はさっき言ったけれど。」
「仰いましたね。」
「これが政治的にも恐ろしい子なのよね。」
「はあ。」
やばい、気が滅入る。
「アベル、あなたは三歳で父親に官僚制を進言したそうね。」
「しましたね。」
「三歳で領地経営とは何か、官僚制とは何かを理解できないとそんなことは出来ないわよね。」
「ええ、そうですね。自分でも突飛な事を言ったしやったなとは思いますけど。ただあのままだと父さんが仕事で潰れそうだったので、早いうちに手を打っておく必要性に駆られたんですよね。」
「まあ、普通のヒューマンの三歳児はそんなこと考えもしないけどね。」
「まったくその通りで。」
「アベル、何者?」
そう言って、ルミナ夫人は俺の顔を覗き込むのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。




