523.アベル君とご婦人方。
523.アベル君とご婦人方。
「あら、もう一人の至宝に贈ったミスリルのドレスってやっぱり相当だったのね。」
ざわつくブース内から声が上がった。
ルミナ夫人だった。
その隣にいた王妃も、興味深げに俺を見ていた。
「姉さん、早く行きな。オスカー頼んだぞ。」
「任せておれ。」
「ごめんねアベル。」
そう言って、バツの悪そうな顔のロッティーと、頬を赤らめたオスカーがフロアに向かった。
「けど、大金貨五十枚ものドレスを何枚もお姉様に送ったの?」
そう聞いて来たのはバルドさんの奥さん、カテリーナさんだ。
「いえ、ドレスを一枚買ったところで、社交界では持たないでしょう?だから、もう一枚もっと安いドレスを購入しました。」
俺は、もう隠しても仕方ないので正直に話す。
「それはシャーロットも嬉しかったでしょうね。」
いつの間にか俺の前に居たクリス婆ちゃんが言った。
げげっ!名だたるご婦人方に囲まれている!
「先生の二枚目のドレスって、蒼穹蝶のドレスでしょ?空の模様が色々変わる。アベル、あれは幾らだったの?」
今度は爺ちゃんの所に居たはずのカミラが聞きに来た。
「ああ、聞いたことがあるわ。あれも見事なドレスって話ですね。」
カテリーナさんも興味津々だね。
「で、御幾らだったの?アベル。」
こう言って来たのは王妃。
こっちは完全に俺を揶揄っている。
ここまで来てしまってはもうどうしようもない。
隠し事してはならぬ人から聞かれたんだ、別に隠す事でもないしね。
「大金貨二十八枚でした。」
ええ~!
ご婦人方一同が驚く。
「ミスリルのドレスより、大分安いでしょ。」
俺は、別に意に介さぬって顔で周りのご婦人方に言った。
「アベル、知っている?ここの貴婦人たちのドレスは、大金貨一枚でまだ高いという評価なのよ。」
クリス婆ちゃんが、俺を諭すように言ってくる。
「知っていますよ、あのローズのドレスも買いに行きましたから。」
俺はすぐそばで俺たちを見守っていたローズを指さし言った。
「まあ、一緒に買いに行ったの?」
「ええ、デートの途中で。」
「いいわねぇ。お爺様なんて、なかなかデートして下さらないのよ。」
すぐそこで、カレッド伯爵たちと談笑中のウィリアム爺ちゃんが微妙な顔をした。
そこへ、
「アベル、まだ私たちデートしていないわね。」
などとカミラが言ってきた。
うっさいわ!黙っとけ!この人たちを捌くだけで手いっぱいなんだわ!
『知ってる。ワラ。』
俺の頭の中で、カミラ=トレーサが話しかけてきた。
「あら、このお嬢様はアベル君のお手付き?」
カテリーナさんが大真面目な顔で言い始める。
やばい、超やばい。
これは話が広がり過ぎて収まりがつかなくなる予感しかしない。
「お手付きなんてとんでもない。こちらは、カミラ・カレッド伯爵令嬢です。あそこにいる僕の乳兄弟の同級生で、親友なので、僕とも気軽に話をしているだけです。」
「あら、そうだったの。ゴメンなさいね。お似合いだったからつい。」
「お似合いに見えますか?お似合いだって、アベル。ほら、早く、プロポーズしなさいよ。」
カミラが調子に乗ってとんでもないことを言った。
「「「まあ!」」」
ちょ!!
奥様方は色めき立ち、俺の精神はガリガリ削れて行く。
もう止めてくれ。
踊り疲れるは、精神的には疲れるは、散々なんだからな。
『ごめん、自重する。』
どうやらカミラ=トレーサもわかってくれたようだ。
「父があそこで睨んでおりますので、冗談はここまでということで。」
カミラはガウェインさんたちと談笑中だったカレッド伯爵を指さし、言った。
そのカレッド伯爵をご婦人方が一斉に凝視。
俺を睨んでいたカレッド伯爵は一瞬たじろぎ、また談笑中だったおっさん連中の中に埋没した。
「さあ、お喋りはここまででいいかしら?アベル、踊りに行きましょう。」
そう言ってルミナ夫人は俺に手を差し出すのだった。
結局、休めなかったよ。
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本作は長編となっています。
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