522.アベル君と王太子と姉。
522.アベル君と王太子と姉。
なだれ込んできた人たちの中に、国王の姿があった。
パートナー無しで。
どいうこと?
ツカツカと俺たちの方に近寄り、
「オリビア!ダンスが上手くなったな。余と踊ろう。」
そう言って右手を差し出した。
オリビィは一瞬驚いたように俺の顔を見たが、俺は微笑み返し、
「王女殿下をお返し致します。」
とだけ、国王に向き直り言った。
それを見届けたオリビィは、国王の差し出した手を取り、
「お父様、よろしくお願いいたします。」
そう言って、片手だけでカーテシーの姿を取った。
「うむ、ではな。」
国王は俺に言ってオリビィのもう一方の手を取り、一歩目のステップを踏んだ。
俺はその二人を見届けて、踊っている連中をすり抜けつつブースへと戻った。
「やれやれ、何人と踊った事やら。」
ついつい、独り言を言ってしまった。
「アベル、疲れたのか?」
ロッティー、カミラ、アンネを侍らせ酒に興じていたエドワード爺ちゃんが聞いてきた。
「流石にね。爺ちゃん踊らないの?」
「舞踏は得意でないのでな。」
そう言って杯を呷った。
その隣で、なぜかオスカーが小さくなっている。
「王太子殿下?如何なさったのです?」
俺は、さっきの噂話の距離感もあるので、オスカーには使いたくもない丁寧な物言いで聞いてみた。
「シャーロット殿と飲もうと思ったのだが、貴様のお爺様のそばから離れてくれないのでな。」
そんなことを言って、しょぼくれた顔をした。
「そうか、じゃ、僕がお相手しますよ。」
俺は、通りかかったウェイターから果実酒のグラスを二つ貰い、一つをオスカーに差し出した。
「貴様とか?」
オスカーは露骨に嫌そうな顔をした。
「失礼な顔すんなよ。」
つい俺の、普段の口調が現れた。
「ふん、取り繕ってもすぐボロが出るのだ。慣れない事は止めておくんだな。」
そう言ってオスカーはグラスを呷る。
「ははん、姉さんに取り次ごうと思ったが止めだ。」
「おい、それを先に言え!」
オスカーが慌てて言った。
「仕方ない、でもな。」
俺はそこまで言って、指でチョイチョイとオスカーにこっちへ来いと促した。
「なんだ、不躾な。」
そう言いながら顔を近づけるオスカー。
「いいか、取り次ぎを考えてやる。ただし、ちゃんと姉さんの機微を感じろ。感情の動きを掴め。絶対がっつくな。これができるなら取り次いでやろう。」
「私には難しくないか?」
「うん、オスカーは空気読まないからな。しかし今回読むと誓わなければ取り次がん。」
「うん、承知した。機微も感情も空気も読んでやろう。」
「初めからそれをやれば、ここまで嫌われないんだぞ?」
「あう。」
そう言ってオスカーは俯いた。
馬鹿野郎!そういうのはオリビィのような美少女がやるからいいんだ!
お前のような顔だけ野郎がやっていいモノじゃないんだぞ!
という、心の叫びはそっとしまい込み、
「では行くぞ、いいな。」
俺はそう言ってオスカーをその場に待機させ、ロッティーのそばに近付いた。
「嫌よ。」
早い!早いよ!
「姉さん、僕のお願い聞いてよ。」
「王太子殿下のお願いじゃないの?」
「包括的に言えばそうなるかな。でも僕のお願いには違いがない。」
「相変わらず難しい物言いで丸め込もうとする癖だけは直っていないわね。」
「そんなことは無いさ。願いは単純。僕の親友と一曲踊ってもらいたいだけ。それだけさ。」
「でも。」
ロッティーは少し顔をしかめた。
マジ嫌われてんじゃん。
まったく、何やってんだか。
「嫌われるようなこと、がっついたりしないってちゃんと言い含めたから。それでも何かしたら、絶対姉さんとは取り次がない。誓うよ。」
「わかったわ。一曲だけ、一曲だけよ。」
「うん、姉さんありがとう。またドレスをプレゼントするね。」
「駄目よ、大金貨五十枚もするドレスを何度も。あ。」
大声で値段言うなし。
あ、じゃねーし。
ブースの周りが一瞬でざわついたのだった。
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