519.アベル君と乳兄弟。
519.アベル君と乳兄弟。
俺とカミラは踊り終わると、俺のエスコートも待たずに自ら俺たちがいたブースのほうへ向かい、アンネを連れてきた。
俺はアンネにも丁寧にダンスのお誘いをすると、アンネは泣きそうな顔で、
「はい。」
とだけ言い、俺の右手を取った。
「どうした?」
俺は先ほどの表情が気になり、アンネに聞いてみる。
「ううん。何でもないです。ちょっと嬉しくなって。」
「泣きたくなるほど!?」
「そうですよ。ずっと私は日陰者でしたからね。」
え~~~?
そんな風に思っていたの?
「んなこともなかったじゃん。いつも僕のケツに付いていただろ?」
「そりゃそうです。それしかできませんでしたから。シャーロット様のように博識でもない、ローズちゃんのように献身的でもない。トレーサ様のように積極的になれない私ができるのは、アベル様の後ろをついていくことだけでしたから。」
なるほどねぇ。
確かに自分を売り込むようなことはしてこなかった。
身分差もあり、各自の能力的差異も感じて俺に積極的アピールが出来なかったと。
え?アンネの気持ち?
気が付いていたよ。
だけど、俺はハーレム不要論者を貫いてきたからね。
でも、リラとローズを妾に持っている時点で、それは崩れてんだよな。
わかっている、わかっているって。
こんな悩みは、ローズの時に散々やったんだから。
アンネとカミラを貰うしかないってのは確定事項に近い。
俺の中ではね。
カレッド伯爵の説得は後にして、ま、オリビィが魔法か騎士、どちらかの学校を卒業して俺の正室になってからの話だがな。
妾のローズやリラは別にして、側室はきっちり箱を作った後の方が望ましいと思っているんだ。
俺の考えでしかないけどね。
「こんな綺麗なお嬢さんを泣かすまで待たせる奴がいるとはね。顔が見てみたいものだよ。」
「鏡をご覧になればよいのです。」
「僕、手鏡持たない派の人間なんだよね。」
「知りません。」
アンネは踊りながら、俺から顔をそむけた。
「あと四年待て。すべては王女殿下との婚姻の後だ。そうしたら、アンネとカミラ、同時に迎え入れるさ。」
「ホントですか!?」
「ああ、ホント。側室だが、そこは我慢してくれよ。」
「はい。アベル様が私を見てくれただけでうれしいですから。」
大体、人の要求は叶った後に肥大していくもんなんだが、アンネはどうかな?
俺も人が悪い。
根っこでは人を信じてないとかな。
何もかも前世の所為にはできない。
俺を全肯定してくれる家族の中で育ったのだ。
その結果がまだこの俺である。
嫁が結婚後に変わる、旦那も変わる。
よくある話だ。
そう、そういうものは、また一つずつ潰せばいいんだ。
めんどいが。
この世界の舞踏にチークタイムのようなものはない。
しかし今のアンネは、うっとりした顔をしながら俺の胸に顔をうずめていた。
幸せそうだね。
悪いとは思っていたし、思っているんだ。
だから、今くらいは何も言わずこのままにしてあげよう。
俺は、アンネの背を手で押さえつつ、ダンスを踊り切った。
俺はアンネをエスコートしながらブースに戻る。
待っていたのは、ニマニマとした面々の顔だった。
数人を除いて。
俺はそれらを無視し、椅子に座って液体の入ったグラスをもてあそぶ能面女の前に行った。
「ローズ、お待たせ。踊ろう。」
「私と踊ってくださるんですか?王女殿下がお待ちじゃないんですか?」
「待ってるよ。順番に。」
「何考えていらっしゃるんですか。妾など気にもせず、王女殿下と踊ったら如何です?」
「いや、気にする。ローズは身内だから。」
「身内?いずれ王女殿下も身内じゃないですか。彼方はそのおつもりでアベル様を旦那様とお呼びなんでしょう?」
「そうだろうな。でも今は違う。圧倒的にローズのほうが大事だ。」
俺の声を聞いたローズは、何とも言えない顔で斜め上の方を見上げ、それから顔を俺の方に向け、俺の目をしっかり見つめ返してから、
「承知いたしました。私のご主人様。」
そう言って差し出していた俺の右手を取るのだった。
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