516.アベル君と姉とのダンス。
516.アベル君と姉とのダンス。
すでに曲は始まっている。
俺とロッティーはホール中央で姿勢よく立って、俺が右手を上げる。
すると、その手を握りにロッティーが歩いてきて、ロッティーが差し出してきた手を握り、俺はロッティー自身を迎え入れた。
そして、流れてきたリズムに合わせて、足を出す。
なぜだかホールの周りから、「わー!」と、歓声が上がった。
なんかあったかな?
とか鈍感主人公じゃないから言わない。
多分俺たちは十分目立っているはずだ。
さっき婆ちゃんと踊ったときも十分目立っていたしね。
婆ちゃん自体が目立つんだから仕方ない。
宰相夫人が目立たないはずがないんだから。
今回は何といってもロッティーだ。
ミスリルのドレスで武装した、熾天使が目立たないはずがない。
まあ、俺はおまけだよ。
知っている奴は知っているだろうけどね。
「ダンスは久しぶりね。」
ロッティーが俺にささやく。
「そうだね。姉さんが十二歳でセイナリアに来てからだから、八年ぶりくらいだね。」
「もう、そんなに。でもそうよね。私が学生から教授、アベルが騎士学校の生徒ですもの。背も越されそうね。」
「そう?まだまだだと思うけど、父さんたちには追い付きたいね。」
もうそろそろ伸びても良いんじゃないかと思っている、俺は百五十センチを超した程度。
対するロッティーは百七十センチ弱、百六十八センチと言ったところか。
誰だ?俺のことをひっく!と思った奴は。
前世も俺は高い方じゃなかったけれど、何よりこっちとそっちじゃ栄養が違うからな。
周りの話だと、こちらの世界の男性は十七歳あたりから伸び始めるという話だ。
アホか!ローズとやり過ぎとかじゃない!!
きっと…うん。
まあそんなわけで、俺の頭のてっぺんはロッティーの肩程度。
顔は胸にある。
立派にお育ちになられた。
さすが母さんの遺伝子を継いでいるだけの事はある。
まだまだ勝てないけれどね。
しかし、そんな俺のリードで、ロッティーは幸せそうに踊っていた。
「姉さん、さっきはありがとう。」
「何?何のこと?」
俺の感謝の言葉に、ロッティーは驚いて俺の顔を覗き込む。
「ローズのことを怒ってくれて。」
「ああ、そんなこと。アベル。私はあの子とあなたより付き合いが長いのよ。初めてできた同い年の親友なの。頭に来るのは当たり前じゃない。」
「知っているよ。二人の仲はね。だけど、彼女の伴侶として感謝しているよ。姉さん。」
「うん、いいのよ。アベルも納得ずくだって言っていたじゃない。もうこの話は無しにしましょう。」
「うん、でもありがとう。」
「うん。」
そして、音楽は静かに止まり、我々二人の足も停まるのだった。
「いったん戻ろうか。」
「そうね。喉が渇いたわ。」
ふと、先ほどまで俺たちが居たブースはゴチャッと人が溜まっている。
「なに?あの人だかり。」
俺が言うと、
「エドワードお爺様の周りに人がたくさん来ているわね。主賓なんだから当たり前だけど。」
しかし、その溜まっている人間たちが濃すぎてちょっと近寄りたくない。
まず、国王だ。
わざわざ玉座をダンスホール迄据え付けたなら、玉座に座って見とけよ。
ウィリアム爺ちゃん夫婦とカミラ、アンネ、ローズはいるのが当然として、なぜかカレッド伯爵が立っていた。
カミラの保護者という立場だから、まあ分かるが。
そして、ガウェイン近衛騎士団長とアレクさん。
団長と副団長が二人してホールに居ていいの?
グラスも持っているし。
グラスと言えば、勿論バルドさんもいた。
首都防衛の重鎮たちが、酒の入ったグラスを持ってダンスホールでたむろっているってどういうこと?
首都防衛ねぇ。
と、いえばバルドさんと並んで大柄でドラ声が一人いた。
うちのガッコの校長であり軍務大臣のグスタフさんだ。
となれば、ニコイチで合法ロリが居るはずと思ったら、ルミナさんは婆ちゃんと談笑中だ。
「戻りたくないね。」
俺がそう言うと、
「気持ちはわかるけれど、主賓の家族として、挨拶をしなければならない面々が集まっているのだから、ヴァレンタイン家嫡男は行かなくてはならないわ。」
まあ、それもそうか。
そう思って、俺が近づいて行くと
「旦那様!!」
そう、叫びながらオリビィが俺に抱き着くのだった。
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