515.アベル君とあることないこと。
515.アベル君とあることないこと。
「貴族でもない女を妻だと言ってはばからない放蕩息子。それを甘やかして、しかも人前でその妾をハグして見せる宰相夫婦、だそうよ。」
「うん、合っている。」
「アベル!!」
ロッティーが即座に俺を怒鳴った。
「はい、はい、落ち着いて。そんなことで怒るだけ損だよ。姉さんは貴婦人然としていた方が僕は好きだな。」
「まあ、アベルったら、こんなところで好きだなんて…じゃないわ!アベルだけじゃない、お爺様たち、ローズも馬鹿にされたのよ!」
「そうだね。けどそれは僕もローズも納得ずくだよ。放蕩だなんだと言われても、僕は覆すつもりはない。言いたい奴が出るのは計算ずくさ。そのうち言えなくなる。それだけだろ?」
「なんで言えなくなるの?」
「シャーロットも魔法だけじゃなく政治も覚えなきゃね。王女殿下と結婚すれば王配候補になるじゃない。そうなれば、噂を立てただけで不敬だわ。」
婆ちゃんが俺の考えの補完をしてくれた。
まあ、そこまであからさまに考えていたわけじゃないけど。
ローズを妾に迎えた頃は、オリビィとの結婚のケの字も出てない頃だったからね。
今より慎ましい生活をするはずだった。
オリビィのお蔭で、大手を振って妾と出かけられる。
オリビィにとっては皮肉な話かもしれんが、逆張りして今と逆の生活をしていてもケツの座りが悪いしね。
使えるものは使わせてもらうさ。
「王女殿下は大丈夫なの?」
いささか焦り気味でロッティーが聞いてきた。
「彼女も計算高いからね。僕が何をしているかくらいは知っていると思うよ。じゃなきゃ、僕との結婚なんて選ばない。王女はそういう女性ですよ、姉上。そういう意味ではあなたより上だ。」
俺はそう言って皮肉気に口角をあげて笑った。
「だから私が行き遅れているといいたいのね!!」
皆まで言わすなよ。
「ププ!」
俺の隣で婆ちゃんが盛大に吹いた。
「お婆様!?」
「あら、嫌だ。ごめんなさいね。シャーロット。でも、あなた方の口喧嘩は聞いていて楽しいわね。ウィットがあって。主にアベルだけど。」
「婆ちゃん、その評価は間違っているよ。姉さんの天然がなければ、僕の軽口なんてただの空回りなんだから。」
俺がそういうと、ロッティーは目を剝くが、
「そうね。今の話は確かにシャーロットじゃないと面白くないでしょうね。ププ!」
そういって婆ちゃんはまた吹き出した。
「もう!お婆様!!」
ロッティーがまた婆ちゃんに声をあげるが、婆ちゃんは意に介さず笑っていた。
うん、ちょっとは回復したかな。
若いといっても一曲通しで踊るとちょっと疲れるからね。
さっきメイドから果実酒も貰って飲んだし。
よし!
俺はまだやりあっているロッティーの前にさっきと同じように膝をつき、
「お嬢様、一曲お相手願いませんか?」
そう言って手を差し出した。
顔を上気させながら婆ちゃんに何か言っていたロッティーは、蝋人形のようにピタッと止まり
「あ、え、うん。よろしくてよ。」
と言って俺の手を取った。
そこへ、
「アベル!シャーロット!」
と、声をかけられた。
エドワード爺ちゃんが、両腕にカミラとアンネを侍らせてやってきたのだ。
「あら、エドワード様、ごきげんよう。いいですわね、奇麗なお花を両手に。」
そう婆ちゃんが笑顔をエドワード爺ちゃんに向けて言った。
「アベルがモテますでな。ご相伴にあずかっとるだけです。」
と、とてもひどい物言いをエドワード爺ちゃんはした。
俺が言い訳の一つでもと考えていたら、グイっと腕を引っ張られた。
そこにはさっさとこの場から踊りに行こうと必死のロッティーがいた。
まあ、しゃーなし。
「爺ちゃん、姉さんと踊ってくるから。」
そう言って俺は空いている手をあげた。
「おう、行っておいで。」
エドワード爺ちゃんがそう言うと、その腕の中から、
「アベル!次私ね!」
「アベル様!私も!」
という、女の子たちの声が聞こえた。
「あいよ!」
そう返事を一つし、俺はロッティーをエスコートしてフロア中央まで来たのだった。
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本作は長編となっています。
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