456.アベル君と彼を囲む女性たち。
456.アベル君と彼を囲む女性たち。
側室ねぇ。
まあ、こっちに来てからその話をし続けてきてたから、別に不思議ではない。
正室も決まったわけだし。
でも油断してはならない。
いつちゃぶ台をひっくり返されるかわからんのだから。
邪魔をしたい連中が一定数居ることには変わりがない。
そしてそいつらはヴァレンタイン家が力を持つのが疎ましい。
オスカーも狙われている。
仮にオスカーがどうにかなったら、間違いなく次はオリビィと俺だ。
オスカーが仮にテロリストたちに殺されたとすれば、順番で言えば間違いなくオリビィが王太子だ。
そして彼女が女王になれば、俺は王配。
またオリビィにもしものことがあれば、次は俺が王という事になる。
えっと、オリビィを手に掛けたとか疑われるんだろうな。
いやいやいやい、考えが先に行きすぎ。
オスカーをガッチリ守る。
まずはそこからでしょ。
それにはまた狙っている奴らの特定か…
「アベル!何ボーっとしているの?また余計なことを考えていたのでしょう?」
人を諫める声と顔が、ますます母さんに似てきたな。
怖い顔ばかりしていると、どんどん婚期を逃しますよ、姉上。
なんて、声に出して言わないがね。
「カミラさんが変なことを言うんでね、ちょっと考えを巡らせていたのさ。ああ、ごめん、待たせたね。いただきましょう。」
俺はそう言ってカトラリーを取った。
厳密にいただきますの様な挨拶はこの世界に存在しない。
家長が食べるアクションを取る、それが合図だ。
反感?何に?
いただきますに?
え?家長制に?
なんで?
古い制度?
そう?
でもこの国の貴族制度の中では家長制は回っている。
良くも悪くもなくだ。
それを無理に変える必要もないさ。
理由を見つけるのも面倒だしね。
「アベル様?変なことってなんですの?」
カミラが淑女口調で話し掛けてきた。
「あなたが言った愛しているという言葉ですよ。ここに居る全員、使用人たちも含め、あなた以外僕の家族ですから、僕は愛していますが。」
「あら嫌だわ。アベル様、愛情はそちら側から向けるものだけではないのですよ。」
「ええ、存じ上げておりますよ。」
「ならば、私の愛情を受け取って頂いても。」
「お断りします。」
めんどくさいし。
神は神同士でやってくれよ。
そんなことを思っていると、カミラの隣で食事中だったアンネが赤い顔をして頬を抑えていた。
「アベル様が私を愛しているとおっしゃった。」
などと呟いている。
言った、言った。
言ってやったから、もうそんな顔をするな。
めんどくさい。
そう思ったら、すぐ隣の血の繋がった淑女までが顔を赤らめていた。
なにやってんねん!
思わずエセ関西弁で突っ込みたくなる。
「即答なんて失礼よ!少しは逡巡しなさいよ!」
赤面する淑女二人を差し置いて、カミラが俺に絡んでくる。
「じゃ、迷っていいの?」
「嫌よ!」
「なんなんだよ。我がままだな。カレッド伯爵に言いつけるぞ。」
「良いわよ、父様は私にメロメロだもの。経済的には手堅く、勉強は出来、友人たちにも恵まれ、何よりもこの美貌。もうね。何を言わんやよ。」
「己でひけらかす事ではないけどね。もっと淑女然としなければ、行き遅れますよ。」
「あなたが貰えば解決ではなくて?」
「何が解決するというのです?」
「すべてよ。いろいろな力が手に入るわ。誰かが危機に落ち入ろうとも。」
そう言ってカミラは不敵な笑みを浮かべた。
俺のさっきの思考を読んでいたのかもしれない。
オスカー達の命。
その保護にこれほど役に立つ者はいない。
神であるカミラとその聖女アンネ。
二人がいれば簡単にそんな保険が手に入る。
「やっぱ嫌だよ。」
「どうしてよ。」
「内務大臣閣下が義理の父とか。ちょっと考えられない。息がつまりそうだよ。ただでさえ見張られているのに。」
「え?そうなの?」
「そうだよ。僕はカミラさんの御父上には危険人物だと思われている。しかもカミラさんが懸想をしてると思っているから、風当たりが強くてね。」
「私が説得するわ。」
「だから、いらないって。」
「なんでよーーーー!」
カミラの声が食堂に響くのだった。
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本作は長編となっています。
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