455.アベル君と別邸の食卓。
455.アベル君と別邸の食卓。
「皆様、お食事の準備が出来ました。」
別邸付きになっているミーが俺たちを呼びに来た。
すっかり、にゃにゅにょ口調も消え失せ、ベテランメイドとして働いている。
その旦那であるフレイは、俺が学校にいる間、従士として付き従うわけにはいかないので、別邸付き騎士として、家や姉さんたちの警護をしてもらっていたりする。
爺ちゃん達と帰っていいよとは言ったんだけどね。
こっちじゃ子供を作れないからさ。
だけど、俺と帰りたいんだってさ。泣かせるね。
で、ちょっと腑に落ちないことがある。
「カミラさんも食べていくの?」
俺がそう言うと、ロッティーが口を開く。
「ああ、いいのよ。終わってから魔法の勉強をするの。カミラさんが面白い魔法の使い方を思いついてね。アンネちゃんも含めて三人で集まるの。それよりローズ。」
ロッティーは俺の質問を簡単に切り上げ、ローズに近づきハグをした。
「私の前では気を張ることは無いのよ。ローズ。我慢していたのでしょう?」
幼少の頃より主従を超えた親友である二人は、そのまま話をしている。
邪魔は無粋だからね。
先に食堂へ行こうか。
「アベル様、ご婚約おめでとうございます。」
アンネが廊下に出た俺を待って話し掛けてきた。
「ああ、ありがとうアンネ。」
「アベル様は、どんどん高みにお上りで、私なんかとても手の届かないお人になってしまわれました。」
「立場上だけはね。中身はアンネの乳兄弟のアベルで変わんないよ。」
「そうですか。」
「そうですよ。」
アンネの問いに俺が答えた途端、
「ほら、二人とも行くわよ。」
と、カミラが急かした。
「アンネ、あんた何湿っぽくなってんのよ。アベルと王女の結婚なんて既定事項だったじゃないの。」
カミラがアンネの横に並び、不敬もかまわず話し始める。
ま、こいつに不敬も何も無いんだが。
カレッド伯爵が困るくらいか。
「でも…」
「でももへったくれもないでしょ。どうせ二人で割り込む腹なんだし。アベルの結婚式を挙げる前に、さっさと二人とも側室になっちゃいましょ。」
ん?
とても不穏なことが聞こえたが。
「ということだから、アベル、あんたちゃんと私たち二人分の席を用意しておくのよ。寝室とベッドもね。」
と、カミラが畳み掛けてきた。
「お前は何を言っているんだ?わけがわからんが。」
俺は即座に否定に掛かる。
「何言ってんのよ。私たちが側室に入るのも既定事項じゃないの。ねぇ、アンネ。」
「え?いえ、あ、うん、はい。アベル様、お願いします。」
なんと、アンネまで肯定的だと!
「はいじゃないってんだよ。馬鹿どもが。」
俺はそう言って食堂へ急いだ。
こいつらと話していると、馬鹿な頭がより馬鹿になる。
俺が食堂に入ると、別邸付きのメイドの殆どとアーサーが俺の方を向いて、
「アベル様、ご婚約おめでとうございます。」
と、祝いの言葉をくれた。
「おっと、ビックリした。」
俺は本気で驚き、声にしてしまった。
「皆、ありがとう。嬉しいよ。まだ先になると思うが、いろいろ苦労を掛けるかもしれない。よろしく頼むよ。」
俺はそう言って、皆に手を挙げた。
すると、全員で拍手をしてくれる。
よく見ると、テーブルに着いていた爺ちゃんまで笑って拍手をしている。
この人は。
俺がテーブルに着くと、使用人たちは散っていった。
「爺ちゃんの計らい?」
俺は既にグラスを持って飲んでいる爺ちゃんに聞いた。
「皆の希望だ。」
爺ちゃんはそう言ってからグラスに口をつけ、満足げに頷いた。
「さいですか。」
「今の音なんだったの?」
あとから入って来たロッティー達が俺に聞いてくる。
「僕の婚約を皆が祝ってくれたんだよ。よく出来た使用人たちで嬉しいね。」
「主人が愛されているのね。」
そう言ってロッティーはテーブルに着く。
「ありがたい話だよ。」
「私たちも愛しているわよ。アベル。」
落ち着いた食卓から、カミラのとんでもない発言が飛び出てくるのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。




