454.アベル君と家族の座
454.アベル君と家族の座
「それでアベル、もう逃げられないわね。」
「そうだね、姉さん。」
「いいのね?」
「これで姉さんとオスカーの結婚が無くなったんだから、喜んでよ。」
「誰もアベルを人身御供にして喜ばないわよ!」
「そう、嬉しいね。」
「嬉しそうでもないけれどね。」
「気は重いからね。とりあえず王家が早馬出して、ヴァレンティアにも知らせを届けると思うけど、爺ちゃんも父さんたちにご報告お願いします。」
「よかろう。しかし、アベルが一筆したためた方がよろしかろうな。」
「そりゃもう。こうなった経緯から、全部書かなきゃ父さんはともかく母さんがねぇ。」
「怒り心頭だろうな。」
「あなた!今度は何やらかしたの!!ってね。」
俺がそう言うと、爺ちゃんは目を細め深く頷く。
「報告の方は承った。他に何かないのか?」
「えーと、まだ時期等は決まっていないので何とも。いずれヴァレンティアに連れて行かないといけないので。」
「そうだな。アベルの嫁だからな。気楽な隠居暮らしではなくなるのう。」
「で、どうしてこんなに話が早くなったの?」
「姉さんたちの好きな本の所為だよ。」
「なによ、好きな本って。」
「学校で回し読みされている本の事だよ。」
「えっ!なんで?」
「明らかに僕とオスカーが元になって書かれた本が有ったでしょ。」
その時リビングの扉が開き、二人の人影が入って来た。
その人影は俺たちの話を興味深げに聞いていた。
「あ、うん。」
「あれの作者が、オリビィだったんだ。」
「「「えっーーー!」」」
俺の言を聞いて驚いたのはロッティーだけではなかった。
話している途中でリビングに入って来た者たち。
アンネローゼとカミラも叫んでいた。
「でも、それがどうしてアベルとの結婚につながるの?」
「とりあえず、僕は普通に結婚出来るよってことになるだろ?そして、僕とオスカーそういう仲ではないと一応は知らしめることになる。信じるかどうかは別として。」
「そうよ、信じるかどうかよ。誰も信じないわよ。」
こう言ったのはカミラ。
「だから次の手は考えているさ。」
俺がそう言うと、すかさずアンネが
「どんな手ですか?」
と聞いてくる。
「さてね。それは出てからのお楽しみかな。」
「「「えーーーーーー!!!!」」」
女三人寄れば姦しいとは言うが、まさに。
いや、一人、一柱だった。
「って、文句が出るのは分かっていたから、概要くらいは話してあげるよ。」
「初めから言えばいいのよ。」
トレ、いや、カミラは容赦ない。
「何、簡単なことだよ。本の中を現実に合わせればいいんだ。」
「どういうことです?」
アンネが目を輝かせながら聞いてくる。
「だからさ。本の中の僕とオリビィが結婚するんだよ。」
「「「???」」」
あまりピンと来ないか。
「オリビィに新たなストーリーを描いてもらうのさ。オリビィがただれた恋に溺れさせているオスカーから、俺を奪うってね。」
「「「きゃぁぁぁ!!」」」
今度は分かったようだ。
「それいい!アベル!いいわよそれ!読みたい!すぐ読みたい!アベル、お城に行って王女殿下連れて来なさいな。」
カミラが貴族の息女としてあり得ないことを平気で言った。
「でも、それでは王太子殿下の疑いは晴れないのではなくて?」
ロッティーが盛り上がっていた腐女子脳から急に冷めた。
「流石!我が姉上、重要なところにすぐに気が付くねぇ。」
俺はちょっとだけ煽ててやる。
「こ、これくらいは気が付くのよ?ホントよ?」
ロッティーはちょっと上ずった声で反応した。
その後ろでは爺ちゃんがカトリーヌに酒の用意をしろと注文を付けている。
どうやら見ているだけで面白いらしい。
「そだね。でね、僕とオリビィは結ばれたら物語から出なくなる。で主人公はオスカーのみ。僕を奪われたオスカーは学業と仕事に邁進するが、心にはぽっかり穴が開き、空虚な生活を送る。」
「「「うん、うん。」」」
三人共前のめりで俺の話を聞いている。
「そこに、二つの隣国から、二人の姫が留学のため騎士学校へやってくる。それは王が差し向けた留学という名の見合いであった。」
「なるほど、その二人どちらかとの鞘当てになるんですね?」
アンネが楽しそうに聞いてくる。
「そうだよ。そしてまだ王族しか知らない話をしてやろう。他国と繋がりある貴族なら知っているはずだから構わないと思う。その留学に来る他国の二人の王女の話は、本当の事なんだ。」
「「「えーーーーーー!!!!」」」




